2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580047
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
橋本 文雄 鹿児島大学, 農学部, 教授 (70244142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 真義 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 花き研究所, チーム長 (40237475)
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Keywords | チューリップ / アントシアニン / 化学分類 / 遺伝生化学 / 遺伝育種 |
Research Abstract |
チューリップ属品種および園芸品種について、系統学的あるいは遺伝学的な根拠から分類することは不可能とされ、人為分類に留まっている。本研究は、花弁の色素分布と品種成立の情報から系統的位置関係を把握し、また、交配雑種後代の色素生合成遺伝の情報を踏まえ、色素化学的な分類によるチューリップ属品種の成立を明らかにする。そのため、化学分類の指標として重要な主要アントシアニン色素14種類の化学構造を決定する必要がある。また、国内で販売されている約200 系統の園芸品種に加えて、富山県と新潟県で育成・保存されている品種並びに原種について、高速液体クロマトグラフ法により定性・定量分析を行う。クラスター分析の結果から樹形図を作成し、チューリップの系統的位置関係を解析する。最終的にチューリップ品種の成立を明らかにし、それらの系統的分類法の構築を試みる。 1. 園芸品種と原種のアントシアニン色素の分析:アントシアニンの分析法は、Li, J.-B., 他. Phytochemistry, 69,3166-3171, 2008の方法で行った。チューリップ花弁の重量を秤量し、抽出溶媒(酢酸-メタノールの1:1 混液)で浸積後、抽出溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定性・定量分析した。 2. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:チューリップ品種を栽培し、相当量の花被を材料として確保した。 3. 未知色素を含む14 種類のアントシアニンの抽出・単離と化学構造の決定:花被材料を用いてアントシアニンを単離するための分画を調整した。 4. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:Li, J.-H., 他. Phytochemistry, 71, 1342-1349,2010に記載のSAS 統計ソフトを用いたクラスター分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 園芸品種と原種のアントシアニン色素の分析:園芸品種14種および7種類の原種(プルケラ属)の花被に含まれるアントシアニンを分析した。分析した既知色素は、標品と直接比較することにより、①ペラルゴニジン3-ルチノシド (以下Pg3R)、②ペラルゴニジン3-ルチノシド-2”-アセテート、③シアニジン3-ルチノシド、④シアニジン3-ルチノシド-2”-アセテート、⑤デルフィニジン3-ルチノシド (以下Dp3R)、⑥デルフィニジン3-ルチノシド-2”-アセテート (以下Dp2"A)、⑦デルフィニジン3-ルチノシド-3”-アセテートと同定した。また、未知色素a~fについても、それらの含量を測定した。 2. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:平成24年3月に開花したバルバトス、コンプリメント、ムスカデットのチューリップ花弁を採取した。これらは、未知色素分析のための材料として確保し、酢酸-メタノール(1:1)の溶液で色素を抽出後、減圧下溶媒を留去し、エキスを冷凍庫内で保存した。 3. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:共同研究者である中山真義氏が分析したチューリップ約200系統の花被のアントシアニン色素についてクラスター分析を行った。現在、データを整理し樹形図を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:平成25 年度も引き続き、多数球のチューリップを栽培し、花弁を試験に提供する。 2. 未知色素類のアントシアニンの抽出・単離と化学構造の決定:7種の未知アントシアニン色素(a~g)を単離するため、赤色品種‘バルバトス’および桃色品種‘コンプリメント’の花被より得た抽出エキスをオープンカラムクロマトグラフィーの方法により精製を行う。単離されたアントシアニンは、核磁気共鳴スペクトル法、質量分析法などのスペクトル法を用いてその化学構造を決定する。 3. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:昨年度分析したプルケラ属(8系統)と14品種のデータに平成23年度に分析した78個体(系統)のデータを加え、クラスター分析を行う。その結果から、原種との関係を考察する。加えて、中山氏のチューリップ約200系統のデータも加え、総合的に系統的位置関係を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品は、アントシアニンの単離・精製のための溶媒類または固定相ゲルを主とし、また、チューリップの栽培用球根を花弁の材料として調達する。SAS の統計ソフトについて、当該研究室が平成18年度に導入し、毎年、研究室独自に契約更新・保守しているものを本年度も再契約し、引き続き使用する。 国内旅費は、共同研究者との研究打合せ(鹿児島~つくば)、研究協力者との討議(鹿児島~富山及び鹿児島~新潟)、並びに園芸学会等での成果発表(鹿児島~東京)に使用する。 外国旅費について、平成25年9月に開催予定の第7回アントシアニンに関する国際会議(ポルトガル・ポルト大学)に共同研究者の中山氏と出席し、その成果を発表する予定である。 謝金として、平成25年度は、専門知識を有する大学院生を実験補助者(1 名)、チューリップの資料収集・整理(1 名)、チューリップのデータ解析(SAS 統計処理等)のための研究補助者(1名)等の雇用を計画している。
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