2011 Fiscal Year Research-status Report
短時間温度処理による青果物の品質保持効果と抗酸化機構活性化に関する研究
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23580048
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
今堀 義洋 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40254437)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アスコルビン酸-グルタチオンサイクル / 還元型アスコルビン酸 / マロンジアルデヒド / アスコルビン酸ペルオキシダーゼ / 酸化型アスコルビン酸還元酵素 / モノデヒドロアスコルビン還元酵素 / グルタチオン還元酵素 / ジャガイモ |
Research Abstract |
ジャガイモ‘男爵’を有孔ポリエチレンフィルム袋(厚さ0.03mm,孔数8個、孔径6mm)に入れ、袋の口を輪ゴムでとめて、5℃(対照区)および-0.5℃(処理区)にそれぞれ6週間貯蔵した。経時的に外観観察し、切断面での内部褐変程度を調べた結果、処理区は対照区に比べて内部褐変が抑制された。フェノール物質含量は貯蔵中いずれの区も減少する傾向であったが、対照区が処理区に比べ、約1.1~2倍の高い値で推移した。貯蔵中の還元型アスコルビン酸含量は、処理区で増加し、対照区の約1.7倍になったのに対して、酸化型アスコルビン酸は、対照区が処理区よりも約1.5倍の高い値を示した。還元型/酸化型比において処理区は対照区よりも高い値を示した。過酸化脂質量を示すマロンジアルデヒド含量は、両区とも貯蔵中増加したが、処理区でその増加程度は緩やかであった。アスコルビン酸ペルオキシダーゼ活性は、両区とも貯蔵中緩やかに減少した後増加したが、その程度は処理区で大きかった。酸化型アスコルビン酸還元酵素活性は、両区とも貯蔵中急増してその後漸減したが、処理区では対照区より増加程度は大きく、漸減程度は小さかった。モノデヒドロアスコルビン還元酵素活性は、両区とも貯蔵中増加し、その程度に差はなかった。グルタチオン還元酵素活性は、対照区で貯蔵中増加し、その後一定レベルを維持したが、処理区で一定レベルを維持した後増加した。スーパーオキシドジスムターゼ活性は、両区とも貯蔵中ほぼ同一レベルで推移した。 以上の結果から、低温処理によりジャガイモのアスコルビン酸-グルタチオンサイクルが活性化されることによって、低温で生じる酸化ストレスが抑制され、低温障害発生を防ぎ、品質保持されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
短時間温度処理を活用した品質保持技術の確立を目的に、短時間低温処理の適切な低温処理温度と処理時間を外観、内容成分の品質評価から調べ、処理に伴う抗酸化酵素の活性変化と抗酸化物質の質的および量的変化を明らかにした。しかし、短時間低温処理後の20℃下で一定期間貯蔵した場合の短時間低温処理に伴う抗酸化酵素の活性変化と抗酸化物質の質的および量的変化の検討とこれら温度ストレスの抗酸化機構活性化とストレス耐性付与解明のために酵素活性の制御、遺伝子発現およびタンパク質合成の調査までは達成することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
短時間温度処理を活用した品質保持技術の確立を積極的に目指していく。基礎的データを得ているピーマン果実をモデルに、短時間温度処理の適切な処理温度と処理時間を外観、内容成分の品質評価から明らかにする。短時間温度処理に伴う抗酸化酵素の活性変化と抗酸化物質の質的および量的変化を調べ、前年度達成できなかったこれら温度ストレスの抗酸化機構活性化とストレス耐性付与解明のための酵素活性の制御、遺伝子発現、タンパク質合成を調査する。さらに、実験計画が未達で生じた研究費と翌年度請求する研究費を有効活用して、温度ストレスによるシグナル分子とそれら抗酸化機構活性化の作用について解析し、得られた結果から総合的に考察して、実用面も考慮し、品質保持効果のメカニズムを明らかにしていくことを積極的に推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
恒温装置を用いて前年度に引き続いて短時間低温処理を行った後、20℃下で一定期間貯蔵する。短時間低温処理は処理温度、処理時間を変えて実験を行う。処理後の品質を外観、腐敗の有無、内容成分に基づき、品質評価する。得られたデータより適切な短時間低温処理の処理条件の抽出を行う。得られた処理条件に基づいて短時間低温処理した後、20℃下で一定期間貯蔵し、(1)スーパーオキシドラジカルおよび過酸化水素の含量変化、(2)アスコルビン酸およびグルタチオンの含量変化、(3)スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼの活性変化、(4)スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼのアイソザイムの様相および遺伝子発現量をそれぞれ調査検討する。 さらに、恒温装置を用いて同様に短時間ヒート処理を行った後、20℃下で一定期間貯蔵する。短時間ヒート処理は処理温度、処理時間を変えて実験を行う。処理後の品質を外観、腐敗の有無、内容成分に基づき、品質評価する。得られた処理条件に基づいて短時間ヒート処理した後、20℃下で一定期間貯蔵し、(1)スーパーオキシドラジカルおよび過酸化水素の含量変化、(2)アスコルビン酸およびグルタチオンの含量変化、(3)スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼの活性変化、(4)スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼのアイソザイムの様相および遺伝子発現量をそれぞれ調査検討する。
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