2012 Fiscal Year Research-status Report
短時間温度処理による青果物の品質保持効果と抗酸化機構活性化に関する研究
Project/Area Number |
23580048
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
今堀 義洋 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40254437)
|
Keywords | アスコルビン酸-グルタチオンサイクル / アスコルビン酸 / 温度ストレス / 抗酸化酵素 / コマツナ / ピーマン |
Research Abstract |
コマツナ‘ひとみ’を有孔ポリエチレンフィルム袋(厚さ0.03mm,孔数8個、孔径6mm)に入れ、袋の口を輪ゴムでとめ、5および 15℃にそれぞれ6日間貯蔵した。経時的に外観観察し、葉面色を調べた結果、5℃区は15℃区に比べて葉の黄化が抑制された。貯蔵中の還元型アスコルビン酸含量は、5℃区で貯蔵当初のレベルを維持したのに対し、15℃区は貯蔵4日まで減少した後、低レベルを維持した。酸化型アスコルビン酸は、両温度区とも貯蔵2日まで減少し、その後低レベルで推移した。アスコルビン酸ペルオキシダーゼの活性は、5℃区で貯蔵4日に、15℃区では貯蔵2日にそれぞれ一時増加したが、両温度区に差はなかった。酸化型アスコルビン酸還元酵素の活性は、両区とも貯蔵2日に一時増加したが、両温度区に差はなかった。モノデヒドロアスコルビン還元酵素の活性は、両区とも貯蔵中一定レベルで推移し、温度処理による差もなかった。グルタチオン還元酵素の活性は、5℃区で貯蔵4日に、15℃区では貯蔵6日にそれぞれ一時増加したが、両温度区には有意差はなかった。カタラーゼの活性は、5℃区で貯蔵当初のレベルを維持したのに対し、15℃区は貯蔵4日に増加して、その後高いレベルを維持した。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性は、全SOD活性で両温度区には差がなかった。しかし、Cu/Zn-SOD活性は、15℃区が貯蔵2日以降増加した後、その高いレベルを維持したのに対して、5℃区では貯蔵4日まで低下した後、その後活性が増加した。Fe-SOD+Mn-SOD活性は、15℃区が貯蔵中一定レベルを維持したのに対して、5℃区では貯蔵4日まで増加した後、その後活性が低下した。ピーマン果実に40、45および50℃の温湯浸漬による高温処理を行った。その結果、処理後温度による外観には差はなかったが、50℃では異臭が発生し、処理条件として適さなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
短時間温度処理を活用した品質保持技術の確立を目的に、前年度までに得られた研究成果を踏まえて、短時間低温処理の適切な低温処理温度と処理時間を外観、内容成分の品質評価から、同様に短時間高温処理の適切な高温処理温度と処理時間を外観、内容成分の品質評価から調べた。そのことから、温度処理に伴う抗酸化酵素の活性変化と抗酸化物質の質的および量的な変化を明らかにし、温度ストレスの影響について検討した。しかし、短時間低温処理および高温処理後の20℃下における一定期間貯蔵した場合の短時間処理によって得られた抗酸化酵素の活性変化について、また、抗酸化物質の質的および量的変化の調査についてはそれぞれ十分に達成できなかった。加えて、これらの温度ストレスによる抗酸化機構の活性化とストレス耐性付与の解明のための酵素活性の制御、遺伝子発現およびタンパク質合成の検討までは十分に至ることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
短時間温度処理を活用した品質保持技術の確立を積極的に目指していく。基礎的データを得ているピーマン果実をモデルに、短時間温度処理の適切な処理温度と処理時間を外観、内容成分の品質評価から明らかにする。短時間温度処理に伴う抗酸化酵素の活性変化と抗酸化物質の質的および量的変化を調べ、前年度達成できなかったこれら温度ストレスの抗酸化機構活性化とストレス耐性付与解明のための酵素活性の制御、遺伝子発現、タンパク質合成を調査する。さらに、実験計画が未達で生じた研究費と翌年度請求する研究費を有効活用して、温度ストレスによるシグナル分子とそれら抗酸化機構活性化の作用について解析し、得られた結果から総合的に考察し、実用面も考慮して、品質保持効果のメカニズムを明らかにしていくことを積極的に推進していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
恒温装置を用いて前年度に引き続いて短時間低温処理を行った後、20℃下で一定期間貯蔵する。短時間低温処理は処理温度、処理時間を変えて実験を行う。処理後の品質を外観、腐敗の有無、内容成分に基づき、品質評価する。得られたデータより適切な短時間低温処理の処理条件の抽出を行う。得られた処理条件に基づいて短時間低温処理した後、20℃下で一定期間貯蔵し、①スーパーオキシドラジカルおよび過酸化水素の含量変化、②アスコルビン酸およびグルタチオンの含量変化、③スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼの活性変化、④スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼのアイソザイムの様相および遺伝子発現量をそれぞれ調査検討する。 さらに、恒温装置を用いて同様に短時間ヒート処理を行った後、20℃下で一定期間貯蔵する。短時間ヒート処理は処理温度、処理時間を変えて実験を行う。処理後の品質を外観、腐敗の有無、内容成分に基づき、品質評価する。得られた処理条件に基づいて短時間ヒート処理した後、20℃下で一定期間貯蔵し、①スーパーオキシドラジカルおよび過酸化水素の含量変化、②アスコルビン酸およびグルタチオンの含量変化、③スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼの活性変化、④スーパーオキシドジスムターゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、グアヤコールペルオキシダーゼおよびカタラーゼのアイソザイムの様相および遺伝子発現量をそれぞれ調査検討する。
|