2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580056
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
永田 雅靖 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所・野菜病害虫・品質研究領域, 上席研究員 (60370574)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鮮度評価 / 青果物 / 遺伝子発現 / マルチプレクスRT-PCR |
Research Abstract |
野菜の「鮮度」は、主に外観で評価され、物性、内容成分の変化も補助的に用いられるが、栽培時期によって、収穫時の物性や内容成分の傾向は異なっているため、これらの数値のみで野菜の鮮度を客観的に評価することは困難であった。そこで、特に鮮度低下の激しい葉菜類を対象に、野菜の収穫後に起きる生理変化と、その原因となる遺伝子の発現に着目して、鮮度低下に伴って発現する遺伝子群を特定し、それらの簡易な検出法を新たに開発することを目的とする。これにより、従来は困難であった野菜の客観的鮮度評価が可能となり、流通過程の具体的な改善を通じて、生産者と消費者に利益をもたらす。平成23年度は、ホウレンソウを10℃で貯蔵し、貯蔵開始時と、葉が黄化した貯蔵4日目の試料を用いて発現量に差のある遺伝子を濃縮したライブラリーを作り、177個の遺伝子の塩基配列を決定した。Blast検索により、ホウレンソウの黄化に伴って発現量が増加する遺伝子として、タンパク質分解酵素、糖加水分解酵素、傷害誘導タンパク、germin様タンパク質等を特定した。一方,クロロフィル結合タンパク質は、貯蔵に伴って発現量が減少した。他にも機能未知の遺伝子ホモログ(71個)や未報告(48個)の遺伝子が得られた。既知遺伝子と類似性を示す27個のクローンについてノーザンブロット分析を行い、貯蔵に伴う発現パターンによってグループ分けした。これらのうち,クロロフィル結合タンパク質は509 bp,ポリガラクチュロナーゼ前駆体は403 bp,システインプロテアーゼ様タンパク質は309 bp,塩誘導疎水性タンパク質は170 bpのフラグメントが増幅されるようにPCRプライマー(25 mer)を設計して、混合比を最適化した結果、マルチプレクスRT-PCRによって、外観では判断が難しい葉の鮮度低下の兆候を貯蔵2日目の段階から検出可能な鮮度評価法を開発できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホウレンソウを用いて、貯蔵開始時と、葉が黄化した貯蔵4日目の試料を用いて発現量に差のある遺伝子をサブトラクション法で濃縮したライブラリーを作り、177個の遺伝子の塩基配列を決定した。Blast検索により、ホウレンソウの黄化に伴って発現量が増加あるいは減少する遺伝子と、既知の遺伝子の対応を明らかにした。既知遺伝子と類似性を示す27個のクローンについてノーザンブロット分析を行い、貯蔵に伴う発現パターンの変化を明らかにして、グループ分けした。これらの中から、クロロフィル結合タンパク質、ポリガラクチュロナーゼ前駆体、システインプロテアーゼ様タンパク質、塩誘導疎水性タンパク質に対応したPCRプライマーを設計して、混合比を最適化した結果、マルチプレクスRT-PCRによって、外観では判断が難しい葉の鮮度低下の兆候を貯蔵2日目の段階から検出可能な鮮度評価法を開発でき、23年度の研究実施計画にある研究目標をすべて達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と同様の試験を、ブロッコリーやレタスでも行い、各品目で鮮度評価に使用できる遺伝子の特定を進めるとともに、検出のためのプライマーを設計し、実際のサンプルにおいても評価に用いる。 さらに、葉菜類の貯蔵に伴う遺伝子発現のデータを総合して、葉菜類に共通して鮮度評価に用いることができる遺伝子を特定して、それらを検出可能なプライマーを設計する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費・人件費に使用する。なお、次年度使用額152,531円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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