2011 Fiscal Year Research-status Report
ハクサイ根こぶ病抵抗性遺伝子群の特性の解明とレース判定系統の作出
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23580057
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松元 哲 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜茶業研究所 野菜育種・ゲノム研究領域, 上席研究員 (00355629)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 根こぶ病 / DNAマーカー / ハクサイ |
Research Abstract |
異なる根こぶ病抵抗性遺伝子(CRb,CRk, CRkまたはCrr3)を有するハクサイ(Brassica rapa)F1品種や系統を用いて4種類のPathotype(以下P)1、2、3、4の根こぶ病菌を接種した結果、CRbを有する「CR新黄」はP1とP2には罹病し、P3とP4に対して抵抗性を示した。またCRb遺伝子座に既存のマーカーよりも近傍でかつ選抜しやすい共優性のマーカーセットを開発した(Kato et al,2012in press)。CRkを有するKiE75は、P1には罹病性、P2に対しては部分的な抵抗性を、P3とP4には抵抗性を示した。CRkはP3にも部分的な抵抗性を付与することから、CRbとは機能的な違いが認められた。またCrr3またはCRkをヘテロに有すると推定されているハクサイF1品種「SCRひろ黄」はP1とP3には罹病性であり、P2とP4に抵抗性であった。「SCRひろ黄」の抵抗性はP2に強い抵抗性、P3には全く抵抗性を付与しないことから、KiE75が有するCRkとは異なった。以上のようにCRb 、CRkまたはCrr3の抵抗性の機能はPathotypeによってそれぞれ異なることが明らかになった。CRb、CRk、Crr3の各遺伝子の効果を詳細に明らかにするには、抵抗性遺伝子座領域以外を同じゲノム構造にする必要がある。そこで、抵抗性遺伝子を有しない「はくさい中間母本農7号」(PL7)を戻し親に用いた準同質遺伝子系統(NIL)の作成に着手し、これらの遺伝子を有する系統にPL7を戻し交雑を行い、BC1F1世代を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの根こぶ病抵抗性遺伝子(座)、CRb、CRk、Crr3について、その根こぶ病菌のpathotypeとの対応関係について調査した。CRbはP3とP4にのみ抵抗性を付与することを明らかにした。またCRkについては3つのPathotypeについて抵抗性を付与し、pathotypeの異なる根こぶ病に対応できることが明らかとなった。詳細解析に必要なNILの作成については、今年度までにBC1F1世代まで進んだ。今後、特にCRkとCrr3についてはNIL等を活用した解析が必要である。今回調べた中では、P1に抵抗性を示す遺伝子は見いだせなかった。ほぼ予定どおりに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
根こぶ病抵抗性遺伝子CRbを有する「CR新黄」のF2約2000個体を用いて、CRbを挟み込むマーカー間で組換えを起こした個体を選抜し、詳細連鎖地図を作成する。またハクサイのゲノム情報を用いて当該領域に新規のマーカーを開発するとともに候補遺伝子を推定する。開発したマーカーとCRbが特異的に抵抗性を発揮するPathotype3の菌株を用いて、F1実用品種群にどの程度の割合でCRbが含まれているかを明らかにする。CRkに関しては分離集団を育成するため、KiE75につぼみ受粉により自殖種子を得る。CRkもしくはCrr3を有していると推定される「SCRひろ黄」の自殖種子を用いて根こぶ病抵抗性検定により、その分離を調べる。CRkとCrr3の連鎖マーカーによりどの遺伝子座に近いかを明らかにする。CRbの準同質遺伝子系統(NIL)の作出に当たっては、マーカーによりCRbを有する個体を選抜し、その個体に「はくさい中間母本農7号」(PL7) を交配する。CRk、Crr3に関しては、マーカー選抜と根こぶ病抵抗性検定を併用して行い、根こぶ病抵抗性遺伝子を有すると判断された株にPL7を交配する。これらを年2回行い、BC3F1世代を育成することを目標にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費・人件費に使用する。
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