2011 Fiscal Year Research-status Report
生物防除微生物による単子葉作物の病害抵抗性誘導機構
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23580059
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
長谷 修 山形大学, 農学部, 准教授 (10261497)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Pythium oligandrum / 抵抗性誘導 / イネもみ枯細菌病 |
Research Abstract |
生物防除微生物のPythium oligandrum(PO)は根圏に生息して植物の防御反応を活性化し病害抵抗性反応を誘導することが双子葉植物で明らかにされている。本課題研究では、POが単子葉植物で抵抗性を誘導できる可能性が考えられることから、主に遺伝子の転写レベルでPO菌によるイネの抵抗性誘導機構を解析し、その誘導機構の特徴と双子葉植物における特徴との関連性について明らかにすることを目的とした。加えて、農学上重要なイネ病害に対する抵抗性誘導の可能性について接種試験により明らかにすることを目的とした。 本年度は、イネもみ枯細菌病菌によって引き起こされる苗腐敗症に対するPO処理の効果と、PO処理によるイネの防御応答について解析した。その結果、本病の発病は、POを浸種時に処理することで抑制された。また、POを浸種処理した催芽種子の幼芽では、防御関連遺伝子であるOsPR10a/PBZ1の発現量が増加した。一方、イネ苗の根にPO卵胞子懸濁液を浸漬処理した場合でも、根でOsPR10a/PBZ1の発現誘導が確認された。また、同じくPO処理したイネ苗の根では、ジャスモン酸(JA)応答性のOsPR10bやOsPR6遺伝子の発現も誘導されていた。さらに、イネ苗の根における網羅的な遺伝子発現変動解析から、JA応答性の防御関連遺伝子や、JAの生合成に作用するアレンオキシド合成酵素やリポキシゲナーゼ遺伝子などの発現量の増加が認められた。以上の結果は、POがイネにおいてもJAシグナル伝達系を介した防御反応機構を活性化するとともに、イネもみ枯細菌病菌に対する抵抗性を誘導する可能性を示唆している。 以上から、POは単子葉植物においても抵抗性誘導機構を活性化する可能性が考えられ、単子葉と双子葉植物における誘導機構の詳細を比較解析できると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,以下の3つの課題を設定した.それぞれの課題の核心は得られたことから,その研究成果をまとめ,平成23年度日本植物病理学会東北部会で発表し,さらに論文を1報投稿中である.課題1.PO処理イネにおける防御関連遺伝子の発現変動課題2.PO処理イネにおける網羅的な遺伝子発現解析課題3.POを処理したイネ重要病害の病原に対する抵抗性誘導の検討
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に設定した下記1から3の課題については、その核心部分は達成したが、さらに詳細に検討することで、裏付けとなるデータを増やすことを推進方策の一つとする。 1、PO処理イネにおける防御関連遺伝子の発現変動・・・・とくに、発病抑制効果との関連性を見出すために、後述の接種実験系と併せて検討する。 2、PO処理イネにおける網羅的な遺伝子発現解析・・・・平成23年度に実施したPO菌の細胞壁に含まれるエリシター(CWP)での結果に加え、POの生菌における網羅的な発現解析を実施する。また、解析遺伝子数を44000に増やすことで、新規の関連遺伝子を見出す。 3、POを処理したイネ重要病害の病原に対する抵抗性誘導の検討・・・・イネいもち病菌とイネ苗立枯細菌病菌に対する発病抑制効果を接種試験により検討する。また、もみ枯細菌病菌については、発病抑制効果を高める実験条件の検討に取りかかる。さらに、CWPエリシターを処理した上記試験も行うことで抵抗性誘導を実証する。 4、PO処理イネで活性化する情報伝達系の推定・・・・ジャスモン酸の情報伝達系が活性化されることが推定されたが、その推定を明確にするため、この情報伝達系に関わる遺伝子の詳細な解析を進めることにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、遺伝子発現解析を勢力的に実施するため、その解析に関連する物品、消耗品、ならびに受託解析費(アレイ解析など)などのその他の品目に研究費を割り当てる。
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Research Products
(1 results)