2013 Fiscal Year Annual Research Report
タマネギ乾腐病菌が生産するファイトトキシン様タンパク質
Project/Area Number |
23580063
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
伊藤 真一 山口大学, 農学部, 教授 (30243629)
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Keywords | Fusarium oxysporum / タンパク質 / タマネギ |
Research Abstract |
タマネギ乾腐病菌 (FOC)は、タマネギ根の抗菌成分に反応して、ファイトトキシン様のタンパク質(NIP8)を分泌する。24年度の研究により、NIP8はII型ハイドロフォビンタンパク質のプロセシング産物で、FOCには5つのハイドロフォビン遺伝子(hyd1、hyd3、hyd4、hyd5、hyd-like)がいずれも単コピーで存在することが明らかになった。25年度は、これらの遺伝子のノックアウト(シングルノックアウト、ダブルノックアウト、およびトリプルノックアウト)変異株(14種類)の病原性を調べた。また、NIP8に類似したファイトトキシン様タンパク質(NIP8-S)の遺伝子をクローン化し、遺伝子ノックアウト変異体を作製してそれらの病原性を調べた。さらに、酵母で生産した組換えNIP8-Sタンパク質を用いてタマネギに対する生物活性を調べた。研究の結果は以下のとおりである。 1)FOCの各ハイドロフォビン遺伝子のノックアウト変異株(14種類)は、いずれも有意な病原性の低下を示さなかった。 2)NIP8-Sは、データベースのタンパク質FOXB_07839(機能は不明)とほぼ100%一致した。NIP8-SはNIP8と同様、N末端側がプロセシングによって除去されていた。NIP8-Sの成熟タンパク質の推定pIは9.39、推定分子量は 6088.10Daであった。アミノ酸組成には偏りがあり、ヒスチジン(9残基)、リジン(13残基)など、塩基性アミノ酸が多く含まれていた。また、NIP8と同様、システインが多く含まれ、ジスルフィド結合が3か所存在すると推定された。タンパク質の2次構造予測では、へリックス構造が3か所、シート構造が1ヶ所存在した。 3)FOCのNIP8-S遺伝子は、感染根組織で発現しており、NIP8-S遺伝子ノックアウト変異株はタマネギ幼苗に対して病原性が低下した。また、組換えNIP8-Sタンパク質はタマネギ苗に萎ちょうを引きおこした。これらのことから、NIP8-SはFOCの病原性に関与するタンパク質と考えられた。
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