2011 Fiscal Year Research-status Report
イネいもち病菌感染時に誘導される宿主ジベレリン不活性化経路の生理的意義
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23580067
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
真籠 洋 独立行政法人理化学研究所, 促進制御研究チーム, 研究員 (70425643)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イネいもち病菌 / ジベレリン / イネ |
Research Abstract |
本研究は、イネいもち病菌感染時に見られた宿主ジベレリン不活性化酵素遺伝子GA2-oxidase3誘導の生理的な意義の解明を目的とする。これまでにいもち病菌接種葉5-6日目におけるGA2-oxidase3遺伝子の発現誘導をリアルタイム定量PCRにより確認し、さらに感染葉において活性型GA(GA1)量の低下と不活性型(GA8:2位が水酸化されたGA1)が増加することを明らかにしている。本年度は以下の結果を得た。1.イネいもち病菌感染時の活性型GAの低下の時間的・空間的範囲を明らかにするため、いもち病菌感染個体地上部全体の、接種後2日目-5日目のGAの経日的量的変化をLC/MS/MSを用いて分析した。その結果5日目の感染個体地上部において活性型GAが減少し、不活性型GAの増加が認められた。この結果から、いもち病菌感染によるイネGA内生量の低下は感染葉だけではなく、個体レベルで起こることが示唆された。2.近年、植物ホルモンの一つであるアブシジン酸をいもち病菌が産生し、これが植物の抵抗性を抑制している可能性が指摘されている。アブシジン酸はGAと拮抗的に作用することが知られることから、GA分析に用いた同質サンプルのアブシジン酸を分析した。その結果、いもち病菌感染によるアブシジン酸量の変動は見られなかった。3. イネいもち病菌がGAを産生するか否かを明らかにするため、高感度に調べた。人工培養したイネいもち病菌の分生子や菌糸、その培養後の培地ろ液から活性型GA(GA1,GA3,GA4)の検出を試みたが、検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、研究実績1で示したとおり、イネいもち病菌感染におけるGA減少は感染葉だけでなく個体レベルで起こることが示唆された。生育が旺盛なイネ幼苗では経日的にGA内生量が変化しており、その変化の上でいもち病菌の感染の影響を調べるには困難であったが、種々の条件検討の結果感染個体におけるGAの減少を確認できた。これにより本研究課題のベースとなる実験系が確立できたといえる。2、GA2-oxidase3遺伝子はGA誘導性遺伝子として知られる。いもち病菌感染時に見られたGA2-oxidase3誘導の生理的な意義の仮説のひとつとして、いもち病菌が活性型GAを産生していることが考えられた。研究実績3はその仮説を否定する一つの結論が得られた点で重要である。3、その他GA2-oxidase3遺伝子ノックダウン形質転換イネ作製の準備にも着手しており、進捗状況に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に申請時の研究計画に則って研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に申請時の研究計画に則って研究を進める。次年度に使用する予定の研究費が生じているが、これは予算計画の大半をしめる消耗品が研究室に備蓄してあり予定よりも購入が抑えられたためであり、研究進捗の停滞を示す物ではない。この発生した当該研究費については、研究を効率的に進める目的でイネの形質転換植物作製の外注に使用することを計画している。
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