2011 Fiscal Year Research-status Report
トランスポーター搭載の人工膜(プロテオリポソーム)による昆虫の排泄機能の解析
Project/Area Number |
23580071
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
東 政明 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20175871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 淳 山口大学, 農学部, 教授 (70242930)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アクアポリン / 原形質膜機能 / 排泄 / 浸透圧調節 |
Research Abstract |
生物の水やイオンのバランス維持は,細胞が有する必要不可欠な機能である。昆虫は変温動物であり,外界環境の影響をまともに受ける宿命にありながら,暑さ(→水分蒸発)や寒さ(→細胞凍結)など体の正常なしくみを混乱されることが多い陸上生活に適応している。それは水分調節維持を中心とした原形質膜に存在する運び手(トランスポーターやチャネル)の機能によることがわかってきた。本研究では人工膜(リポソーム)をトランスポーター搭載型(プロテオリポソーム)へ再構成し,水輸送を手始めにトランスポーターのバランス維持のはたらきをシンプルな系で設計し輸送特性を解析する。さらに昆虫個体へ投入(注入)させて,機能変調や発育不振を誘発させる試みが有効かどうか,モデル昆虫:カイコでの試験からチョウ目害虫への応用も指向する。平成23年度の概要は以下のとおりである。1.水のトランスポーターであるアクアポリン(AQP)は,カイコで3種クローニングが完了している。その中で後腸で強く発現している AQP-Bom1(DDBJ:AB178640)および AQP-Bom3(DDBJ:AB458833)について,それぞれの特異抗体を作製した。2.発現タンパク質を確認するために,まずは,カイコ幼虫の後腸から原形質膜を調製し,それぞれのアクアポリン抗体の特異性をウェスタンブロッティングで確認した。3.アクアポリンは,通常,細胞の原形質膜に分布するが,それを後腸上皮細胞でどのような分布を示すかを免疫組織化学で確認した。AQP-Bom1は後腸上皮細胞の腸管腔側のアクアポリンであり,AQP-Bom3は,基底部側(血液側)のアクアポリンであった。4.上記2種類のアクアポリンについてリポソームへ取り込ませるため,大量に発現させる条件の検討を開始したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J Insect Physiol 58, 2012年4月号に昆虫のトランスポーター特集号が公表された。その中で昆虫アクアポリンについて,我々が取り組み,明らかにしてきた内容を発表した。現在,昆虫アクアポリンの研究は,昆虫生理学の分野では能動輸送機構(V-ATPase)やトランスポーターと比べて遅れていたが,ここ数年国際雑誌で競争となっている。その中で,チョウ目幼虫では,申請者らのカイコ後腸の研究から,排泄系での水輸送の実像が初めて明らかとなり,細胞レベル並びに幼虫個体レベルでの水バランスのためのアクアポリンの存在意義を明確に示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.初年度で途中段階で終わった,カイコ幼虫で最も強く発現している後腸の二つのアクアポリン(AQP-Bom1 および Bom3)について,引き続き組替えウイルスを作製する。2.カイコではグリセロールや尿素も輸送するアクアグリセロポリン(DDBJ:AB245966, AQP-Bom2)がある(中腸やマルピーギ管で発現)。上記1.の実験で条件が確立したら,同様にAQPリポソームの作製を試みる。このプロテオリポソームの検定には14C-Glycerolまたは14C-Ureaを用いて,リポソーム内へ取り込まれた輸送活性が測れる。AQPリポソームについて,まずは一つでも成功させることを目指す。3.プロテオリポソームの作製と並行して,中腸特異的な AQP-Bom2のグリセロール・尿素トランスポーター機能の解析を行う。中腸組織よりAQP-Bom2 が存在する原形質膜画分を特定し,純度の高い膜小胞が得られれば,膜小胞輸送系で14C-glycerol および 14C-urea を用いたトレーサー実験で輸送機能を解析する。上記の2.といずれが実験系として有効か,確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.特異抗体を使用した免疫組織化学では,いくつかの蛍光試薬を使用する。安定した蛍光を発する試薬が少量高額であるので,消耗品の中で占める割合は高くなる予定である。2.プロテオリポソームあるいは原形質膜小胞を用いた実験では,14C-Glycerolまたは14C-Ureaを用いたトレーサー実験と膜標品の純度を確認するための電気泳動(ウェスタンブロッティング法)を行うので,一連の電気泳動機器・消耗品と免疫蛍光検出試薬を購入する予定である。3.現在,2編の報文を国際雑誌へ投稿を準備しているが,投稿掲載料およびカラー掲載にかかる経費などにかなり必要となる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Aquaporins for water balance in Lepidopteran larvae2011
Author(s)
Masaaki Azuma
Organizer
Molecular Physiology of Epithelial Transport in Insects - A tribute to William R Harvey - Society for Experimental Biology Annual Main Meeting, 2011(招待講演)
Place of Presentation
Scottish Exhibition & Conference Centre (SECC at Glasgow, UK)
Year and Date
2011年7月3日
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