2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580073
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山中 明 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274152)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 蛹体色 / ホルモン / チョウ |
Research Abstract |
チョウ目昆虫の持つ環境(季節)適応調節機構のなかで, 外部刺激(日長や温度)に応じて, 蛹や翅の体色変化(表現型可塑性)を誘導する神経内分泌調節因子に着目している。ナミアゲハ休眠蛹に特有なオレンジ色の体色は, 終令幼虫の中・後胸神経節-腹部神経節連合体に存在するオレンジ色蛹誘導化因子(Orange-Pupa-Inducing-Factor : OPIF)の分泌により発現する。一方, 非休眠蛹の体色には, 2つの型(緑色・褐色型)があり, 脳-食道下神経節-前胸神経節連合体に存在する蛹表皮褐色化ホルモン(Pupal-Cuticle-Melanizing Hormone: PCMH)の分泌により褐色の蛹体色が発現する。また, ヒメアカタテハの蛹には褐色型と淡色型があり, 脳-胸部神経節-腹部神経節連合体に存在する淡色化因子の分泌により, 淡色型の蛹が生じる。本年は,まず, ナミアゲハ幼虫の脳神経系からOPIF・PCMHならびにヒメアカタテハ幼虫の脳神経系から淡色化因子を単離精製するために,ナミアゲハ幼虫・ヒメアカタテハ幼虫を長日条件下で飼育し, 5齢幼虫の脳神経節連合体を集めている状況である。別に、ジャコウアゲハの蛹体色調節機構の基礎研究として, ジャコウアゲハ幼虫を長日条件下で大量に飼育し, 5齢幼虫を実体顕微鏡下で解剖し, 2,000個以上の脳神経節連合体を集め, ジャコウアゲハの脳神経系抽出物を調製し、ジャコウアゲハの蛹体色因子の生物検定方法を確立し, 因子の特徴づけを行なった。また, 黄色型と褐色型蛹の表面構造解析を走査型電子顕微鏡による解析が進行中である。特に, ジャコウアゲハ休眠蛹体色に体色多型が存在し、湿度・温度により休眠黄色型および休眠褐色型の発現が調節されていることを初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナミアゲハ幼虫の脳神経系からOPIF・PCMHならびにヒメアカタテハ幼虫の脳神経系から淡色化因子の単離精製には,両種の5齢幼虫の脳神経節連合体のストックが必要不可欠である。神経節確保量は当初目標を下回っているが、その間、ヒメアカタテハ淡色化因子の特徴づけが進むとともに、ジャコウアゲハ休眠蛹の蛹体色多型現象の環境要因を世界で時初めて明らかにすることができ、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ナミアゲハならびにヒメアカタテハ 5齢幼虫の脳神経節連合体を精力的に集め、OPIF, PCMHおよび淡色化因子の本格精製に向けた準備を本年度継続していく予定である。アゲハチョウ科幼虫の飼育は、天候に左右される面が大きいので、ヒメアカタテハ幼虫の飼育を昨年度以上に行い、脳神経節連合体のストックに力を注ぎ、本種の持つ淡色化因子の特徴づけを行う。また、人工飼料飼育の確立をめざし、通年大量飼育の安定化を図る。また、OPIF・PCMH・淡色化因子の種特異性に関する研究を詰めていき、これらホルモンの生化学的性質の関係を明確にしてゆきたい。ジャコウアゲハ・カラスアゲハ・キタテハの蛹体色調節の基礎的研究に取り組むことで、アゲハチョウ科・タテハチョウ科の蛹体色調節機構の系統的な相違を明らかにしてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品費として、サンプル調製用の低温トラップおよび解剖用の実体顕微鏡を購入する。消耗品費として、試薬・プラスチック器具・分注器等、また、論文別刷代に使用予定。旅費等として、学会発表・論文校閲・危機修理費等に使用予定である。
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