2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580073
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山中 明 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20274152)
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Keywords | チョウ / 蛹体色 / 昆虫ホルモン |
Research Abstract |
チョウ目昆虫は様々な環境(季節)に適応し, 体色や体の形を著しく変える能力を身に付けている。申請者は, チョウの蛹体色変化に着目し、この体色変化を誘導する内分泌調節因子の一次構造決定および発現・代謝調節機構の解析を行い、チョウ目昆虫の環境(季節)変化にともなう表現型可塑性の仕組みを明らかにするとともに、特に、本年はチョウ類の蛹体色の多様性を明らかにすることを試みた。まず、タテハチョウ科のキタテハの蛹体色発現に関与する環境要因を詳細に検討したところ、キタテハの蛹は体色多型を持ち、温度および日長条件の違いにより、淡黄色型と褐色型が生じることが明らかとなった。ヒメアカタテハの蛹は温度条件によりその色彩多型が調節されていることから、タテハチョウ科でも環境要因は種によって多様であることが示唆された。さらに、キアゲハの非休眠および休眠蛹の蛹体色調節機構について検討した。キアゲハ休眠蛹の体色は、周囲の環境要因によらず、ほとんどが褐色型に向かうこと、また、その内分泌調節には2種類のホルモンが関与し、中・後胸―腹部神経節に局在する褐色化誘導因子は、ナミアゲハ休眠蛹の結紮腹部をオレンジ色化させた。つまり、キアゲハにおいても、ナミアゲハ同様の蛹表皮褐色化ホルモン(PCMH)およびオレンジ色蛹誘導因子(OPIF)の2種類が存在するが、キアゲハでは2種類のホルモンともに、表皮を褐色化させることが分かった。したがって、これらホルモンは蛹表皮細胞の色素合成開始を誘導させる作用を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チョウ類の蛹体色の多様性に関する研究は、キタテハ・キアゲハの体色多型の発現調節機構を詳細に検討し、環境要因の特定、ホルモン調節機構にPCMHとOPIFが深く関わっていることが明らかとなり、十分に目的を達成できている。一方、PCMHおよびOPIFの単離・精製に関しては、春季の山口県域の低温異常の影響によりナミアゲハを採集することができず、24年度の通年を通じてナミアゲハの個体数が回復せず、研究材料の確保は十分に確保ができない状況であった。そこで、ヒメアカタテハ幼虫の脳神経節を集めホルモン精製の準備進めている段階にある。研究はおおむね順調に進んでる。
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Strategy for Future Research Activity |
蛹表皮褐色化ホルモン(PCMH)およびオレンジ色蛹誘導化因子(OPIF)の遺伝子発現調節調節機構を調べることにより、外部環境要因がどのようにこれら遺伝子の発現調節機構に関与しているのかというブラックボックスの解明につながることが期待できる。また、チョウ目昆虫のチョウ類とガ類の蛹体色という観点からの進化の相違を明らかにしていきたい。チョウの内分泌調節機構の推進には、チョウ幼虫の安定的な通年飼育が必要であり、人工飼料による飼育法の確立も合わせて推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
春の低温異常により、ナミアゲハ由来のホルモン単離および構造解析を実施することができなかったため、ペプチド・遺伝子構造解析費分の研究費が生じた。翌年度研究費と合わせ、複数回の構造解析、あるいはHPLC関連機器・カラム・試薬に使用予定である。
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