2012 Fiscal Year Research-status Report
アブラムシによる寄主植物の栄養条件改善機構の解明:アミノ酸の選択的蓄積
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23580074
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
手林 慎一 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (70325405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
間世田 英明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (10372343)
及川 彰 山形大学, 農学部, 准教授 (50442934)
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Keywords | イネ / オカボノアカアブラムシ / メタボローム |
Research Abstract |
申請者はオアカボノアカアブラムシ(Rhopalosiphum rufiabdominalis)がイネの幼根に寄生すると植物体中に特定のアミノ酸が選択的に蓄積される現象を見出し、本研究ではこのアミノ酸の選択的蓄積機構を有機化学的、生化学的、分生物学的に解明することを目指している。 現在までにオアカボノアカアブラムシがイネ幼根に寄生した際に生じる遺伝子発現の変動をイネオリゴDNAマイクロアレイにより網羅的に解析することで特定のアミノ酸の生合成酵素をコードする遺伝子の転写量が増大することのみならず、さらにアミノ酸合成に係るより上流の生合成経路(解糖系やTCA回路などを含む)の諸酵素の遺伝子発現についても転写量が増大することを見出し、アミノ酸類は寄生部位で生合成され蓄積しているのであり、現在まで考えられていたように不要なアミノ酸が寄生部位に流転し蓄積するわけではないことを明らかにしてきた。 さらに、蓄積量の増大が観察されなかったトリプトファンについては、その生合成遺伝子の発現量は増大しているものの、トリプトファンからトリプタミンへ変換するトリプトファンデカルボキシラーゼ転写量が増大しているためであることを確認した。さらにこのトリプラミンがセロトニンへと変換され、セロトニンが蓄積していることを解明した。 今後は蓄積されたセロトニンの機能や、さらに下流に相当する代謝経路の解明、あるいはトリプトファン生合成を制御するフィードバック機構の解明を行うとともに、その他のアミノ酸とその関連遺伝子の発現、酵素活性の発現について経時的な変動解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度に実施したオカボノアカアブラムシがイネ幼根に寄生した際に生じる遺伝子発現変動のマイクロアレイによる網羅的測定結果を24年度には詳細に解析し、特定のアミノ酸の生合成酵素をコードする遺伝子が多量に発現していると同時に、アミノ酸合成に係るより上流の生合成経路(解糖系やTCA回路などを含む)の諸酵素の転写量も増大することを突き止めることができた。すなわち、アブラムシの寄生によりアミノ酸に関連する代謝系が全体的に活性化することを明らかにすることが出来た。 さらトリプトファンではアミノ酸自体は蓄積されないにもかかわらず生合成遺伝子の発現は増大していた。この矛盾の解明のためトリプトファンを代謝する酵素の遺伝子発現を詳細に解析したところ、トリプトファンからトリプタミンへ変換するトリプトファンデカルボキシラーゼの遺伝子転写量が増大し、さらにトリプラミンをセロトニンへと変換するトリプタミン-5-ハイドラーゼの遺伝子転写量も増大しており、その結果としてセロトニンが多量に蓄積することを見出した。 これらのことから次の仮説を立てるに至ったことから、本研究は予想以上に進展しているものと判断した。すなわち、全てのアミノ酸の生合成経路が上流から活性化している環境下で、アミノ酸の代謝系については一部のみが活性化することで、アミノ酸選択的蓄積が生じているものと仮定された。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、オカボノアカアブラムシがイネ幼根へ寄生することにより特定のアミノ酸が選択的に蓄積する機構は、寄生部におけるアミノ酸生合成の全体が活性化することにもかかわらず、アミノ酸代謝経路は一部のみしか活性化されていないために生じている可能性が推測された。今後はこの機構の検証を行うために次の研究を遂行する。① アブラムシ寄生によるアミノ酸および代謝関連物質の経時的変化の測定。 ②対象遺伝子の酵素活性の経時的変化の測定 ③アブラムシ寄生による発現遺伝子の経時的変化の測定。これらのなかで植物の栽培、アブラムシの飼育、試料の調整、酵素活性の測定は高知大学で行い、遺伝子発現解析は高知大学および徳島大学で、メタボローム解析は山形大学で行う。具体的な手法は以下の通りである。 植物試料調整方法(高知大学):播種4日後のイネ芽生え(品種:日本晴)にオカボノアカアブラムシの有翅虫を接種し、人工気象器内で栽培し、イネの根を化学分析・遺伝子解析の試料に供する。 アミノ酸分析方法(山形大学):極微量の試料からアミノ酸を検出するためにCE-TOFMS分析を行う。分析は既に最適化され以下の方法で行う。すなわち植物試料(30-150mg)をメタノール500μLで抽出し、水とヘキサンで液-液分配後、水層を濃縮し分析する。 酵素活性解析方法(高知大学):具体的な測定方法は試行錯誤的に選択されるが文献などを基に定法により測定を行う。試験は基本的に粗抽出酵素を用いるが必要に応じて部分精製も行う予定である。 遺伝子解析方法(徳島大学): 採取されたイネ幼根から、RNeasy Plant Mini Kit(キアゲン)を用いてTotalRNA を抽出し、cDNAを合成した後、qRT-PCRにて遺伝子発現量を定量する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、イネ根における遺伝子発現および酵素発現の経時的変動解析およびメタボローム解析を行った。イネ根のメタボローム解析に要した消耗品経費は平成24年度からの繰越金含めて600,000円は計画通り執行した。一方、遺伝子発現および酵素発現量を定量するためのRNA抽出・cDNA合成、および酵素活性測定にかかる消耗品費(474,865円)以外の約650,000円は主に別途確保した恒常的経費を用いて研究を遂行し、昆虫の飼育および植物育成に必要な経費、約100,000円も別途確保した恒常的経費を用いて研究を遂行したため457,217円の繰越金が発生するに至った。 本年度は次の3小課題を実施する。すなわち、① アブラムシ寄生によるアミノ酸および生合成関連物質の経時的変化の再測定。 ② 対象遺伝子の酵素活性の経時的変化の測定 ③ アブラムシ寄生による発現遺伝子の経時的変化の測定、である。これらの中で植物の栽培、アブラムシの飼育、試料の調整、酵素活性の測定は高知大学で行い、遺伝子発現解析は徳島大学で、メタボローム解析は山形大学で行う。 そのため高知大学では植物栽培・昆虫飼育経費(107,217円)、酵素活性測定試薬費(350,000円)・プラスチック器具費(100,000円)、および分子生物試薬費(200,000円)の合計757,217円を計上し、徳島大学で分子生物試薬費(150,000円)・プラスチック器具費(100,000円)の合計250,000円を計上し、山形大学ではメタボローム解析に必なCE-TOF-MS分析の消耗品費(150,000円)、およびプラスチック器具費(100,000円)の合計250,000円を計上した。 これらはいずれも本申請課題を遂行するために必要な経費である。また、経費が不足する場合は各員にて恒常的経費を用いて研究を遂行する予定である。
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Research Products
(3 results)