2012 Fiscal Year Research-status Report
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23580075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
飯山 和弘 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70325489)
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Keywords | 昆虫病原性細菌 / セラチア / 病原力因子 |
Research Abstract |
当研究室において分離したSerratia liquefaciens Kuo1-1の主要な病原力因子を同定し,その発現および活性を抑制することで,本菌による発病を制御することが可能であると考えられた。本菌が培養ろ液中に分泌するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が殺虫活性を有していたため,まずこれらの遺伝子のクローニングを行い,塩基配列を決定した。研究実施過程で本菌は2種のプロテアーゼを産生することが明らかとなったため,以降はこれら2種のプロテアーゼを対象に研究を進めた。 まずこれら遺伝子のノックアウト株を作製し,カイコに対する病原性試験を行った。その結果,親株と同程度の病原力を保持していた。 次に組換えプロテアーゼを大腸菌を用いて大量発現・精製を試みた。異なる発現系を試し,最も発現量の多い手法を確立した。得られた2種の組換えプロテアーゼは高いプロテアーゼ活性を有し,類似した酵素学的性質を示した。これら組換えプロテアーゼをカイコに接種したところ,顕著な殺虫活性は認められなかった。次に組換えプロテアーゼの体液タンパク質分解活性について検討したところ,特定のタンパク質が分解されていることが示された。さらに培養細胞への毒性を検討したところ,生細胞数の減少が認められた。 以上のことから,本菌のプロテアーゼは殺虫活性への直接的な寄与は少ないものの,宿主の体液性免疫,細胞性免疫に悪影響を及ぼすことが推察された。さらに本菌は主要な別の病原力因子を有していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Serratia liquefaciensの病原力因子の探索にあたり,他のほ乳類宿主で重要といわれているプロテアーゼについて,ノックアウト株の作出および組換えタンパク質を利用した病原力因子としての役割について詳細に検討してきた。その結果,プロテアーゼの病原力因子としての役割は低いという知見を得ることができた。 また得られた結果は,他の因子が病原力因子として機能していることを強く示唆していた。これは本課題を遂行するにあたり,研究の方向性を決定する上で極めて重要なものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果から,本菌には未知の病原力因子が存在し,昆虫宿主において致死を誘導するということが示唆された。次の段階では,この結果を踏まえ,未知の病原力因子の探索を行う。 具体的には,Serratia liquefaciensにランダムに変異を引き起こす,トランスポゾン変異株ライブラリーを作出する。このライブラリーをカイコに接種し,病原力の減少した変異株をスクリーニングする。用いるトランスポゾンはプラスミド複製開始点を含むものを使用するため,DNA断片を環状化することでプラスミドとして複製される。このプラスミドの塩基配列を決定することにより,挿入箇所の隣接領域の塩基配列を決定する。 次に本菌のドラフトゲノム解析を行い,病原力が減少した変異株ゲノム中のトランスポゾン挿入箇所を特定し,影響を及ぼすであろうタンパク質の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
接種試験に用いるカイコの蚕種購入,本菌のドラフトゲノム解析,シーケンス解析,およびこれら研究に必要とされる器具,試薬類の購入に使用する。 また得られた結果を広く公表するために,学会発表および論文発表を行う予定であり,これらに関連する支出に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)