2012 Fiscal Year Research-status Report
宿主昆虫‐共生細菌間相互作用の分子機構の解明とその利用基盤技術の開発
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23580084
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安佛 尚志 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (30392583)
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Keywords | 共生細菌 / 生殖操作 / キイロショウジョウバエ / スピロプラズマ / ファージ / 雄殺し |
Research Abstract |
1.3系統のスピロプラズマ(Drosophila nebulosa由来の雄殺しスピロプラズマNSRO系統、NSRO系統の突然変異体で雄を殺さないNSRO-A系統、キイロショウジョウバエ由来の雄殺しスピロプラズマMSRO系統)のファージのゲノム解析を進めた。ショットガンデータのアセンブルの結果、NSROおよびMSROから1種類、NSRO-Aから2種類のファージゲノムが得られ、それぞれ、SpV-N、SpV-M、SpV-NA1、SpV-NA2と名づけた。4つのファージゲノムの全体的な塩基配列の相同性は81%であった。ORFの並びもよく保存されていた。各ファージゲノム上に推定された遺伝子(ORF)の数はSpV-Nが23個、SpV-Mが22個、SpV-NA1およびNA2が21個であった。SpV-MではORF10、SpV-NAではORF10およびORF2が失われていた。次に、ファージ間のORFの相同性を塩基配列およびアミノ酸配列について調べたところ、ORF8 (hypothetical protein gene)、ORF18 (hypothetical lipoprotein transmembrane gene)、ORF19 (p123)、ORF23 (新規)は、オス殺し系統と非オス殺し系統の間の相同性が低く、これらの遺伝子はオス殺しに関与している可能性がある。次に、ORF22(p58)の塩基配列およびORF7(RecT)のアミノ酸配列を用いて分子系統解析をおこなったところ、4種のファージは極めて近縁なファージファミリーに属することが示された。 2. 次世代シークエンサーを用いたRNA-seqと定量RT-PCRにより、スピロプラズマ感染により発現が変動する宿主遺伝子の解析をおこなった。スピロプラズマ感染により発現が抑制される遺伝子の候補としてsnailが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カスリショウジョウバエのスピロプラズマのキイロショウジョウバエへの移植が難航したことから、実験を中断した。また、24年度から新たにRNA-seqに取り組んだことなどにより、当初予定していた計画に関してはやや遅延する結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
スピロプラズマのファージについては、ゲノム解析を完了するとともに、電子顕微鏡によるファージの観察、定量PCRによるファージの動態解析、定量RT-PCRによるファージ遺伝子の発現解析等をおこない、論文としてまとめる。また、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析(RNA-seq)のデータも積極的に活用し、スピロプラズマ系統間での発現変動遺伝子の解析から、雄殺しの原因遺伝子の推定をめざす。候補が得られれば、ショウジョウバエに導入し、発現させることにより、雄殺し表現型の再現を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画の遅れにより、24年度に予定していた実験が次年度にずれ込むことになったため、繰り越しをおこなった。次年度においては、ファージの定量PCRに加え、次世代シーケンサーによる解析や、抗体やハエ系統の作製の外注、論文投稿等に助成金を使用する予定である。
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