2011 Fiscal Year Research-status Report
チャの硝酸吸収同化関連遺伝子のクローニングとその発現制御機構の解明
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23580088
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
森田 明雄 静岡大学, 農学部, 教授 (20324337)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 助教 (90580647)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | チャ / 硝酸還元酵素 / 硝酸トランスポーター / 硝酸同化 |
Research Abstract |
平成23年度は、チャの硝酸還元酵素 (NR) と硝酸トランスポーター遺伝子 (NRT) の単離・同定と、品種間差異または窒素栄養条件と両遺伝子の転写量との関連性から発現特性を明らかすることを目的に実施した。6植物種のNRまたはNRTの塩基配列より設計した各プライマーによるdegenerate PCR,3’および5’RACEを行い,チャの根、葉および培養細胞から1種類のNR相同遺伝子と1種類の高親和性NRT相同遺伝子の完全長塩基配列を明らかにした。同時に、亜硝酸還元酵素遺伝子 (NiR) についても同様に単離し、1種類の完全長塩基配列を明らかにした。現在、NRとNRTについてはさらなる相同遺伝子の単離を遂行している。次に、上記3遺伝子について転写量における品種間差異を検討するため、チャ11品種の成葉と細根を同じ栽培管理下で栽培されている研究圃場から採取し、各相同遺伝子特異的プライマーを用いて半定量的RT-PCRによりそれぞれの転写量を比較した。その結果、NR、NiR並びにNRTの転写量とも、成葉では品種間差異が認めらなかったが、細根では‘やぶきた’のみが他の品種より低いことが明らかとなった。また、水耕栽培した1年生チャ挿し木苗を、硝酸態窒素とアンモニア態窒素濃度比を変えた水耕液に移植して処理し、同様に半定量RT-PCRにより葉と根のNR、NiR並びにNRTの転写量を測定した。その結果、根のNRとNiRの転写量は硝酸態窒素欠如下で大きく低下したが、硝酸態窒素濃度による大きな違いは見られなかった。また若葉のNR、NiRの転写量では、硝酸態窒素濃度の上昇に伴い増加する傾向が見られた。一方、NRTの転写量は、根、葉ともに硝酸態窒素欠如下で増加したほか、硝酸/アンモニア態窒素比の低下とともに減少し、NRTの発現がアンモニアにより抑制されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、チャのNRとNRTの単離と、両遺伝子の発現特性を品種間差異と窒素栄養との関連性の解明に焦点を当て研究を行った。チャから、目的とするNRとNRT (高親和性) 相同遺伝子の完全長塩基配列をそれぞれ1つずつ単離することができた。さらに、研究実施計画になかったが、NiR様遺伝子についても1つ単離することができた。これら3種の単離した相同遺伝子を用いて転写量を調査したところ、いずれの転写量とも特に‘やぶきた’の根で低く、根での転写量には品種間に違いのある可能性が示唆された。また、NRとNiRの転写量は、根では培地中の硝酸態窒素の有無に左右され、硝酸態窒素濃度による影響は小さいが、葉では硝酸態窒素濃度に比例する傾向が見られ、部位により発現特性が異なることが示唆された。一方、NRTの転写量は、根、葉ともに硝酸態窒素欠如により増加し、アンモニア態窒素により抑制されることが明らかとなった。以上のように、NRとNRTに加え、NiRについても計画通り発現特性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度にほぼ計画どおりの成果を上げることができたので、今後の研究推進については申請書の計画とおりで行う。平成24年度の研究推進計画は大きく分けて以下の3つである。1. チャのNRとNRTの単離と同定を引き続き行う。具体的には、平成23年度に得られたNR、NiRおよびNRTの全長相同遺伝子をシロイヌナズナのそれぞれの遺伝子破壊株へ導入し、遺伝子組換え体を作製する。T2またはT3まで世代促進させた個体を用いて、表現型による機能評価解析を行う。2.光条件がNR、NiR並びにNRTの転写量に及ぼす影響を調査する。具体的には、光強度と光質が転写量に及ぼす影響を明にするため、水耕栽培しておいた1年生チャ挿し木苗を黒寒冷紗での被覆またはLED (赤色または青色) を用いた特定波長光を照射し、定量的RT-PCRにより上記3遺伝子の転写量を測定する。同時に、水耕培養液中の窒素を重窒素(15N)ラベルしたものを用いて栽培し、光処理後の全窒素、硝酸含量とそれぞれの15N含量を測定する。3.NR、NiR並びにNRTの発現制御機構を解明するために、タンパク質の構造解析を行う。平成23年度に得られたチャのNRとNRTタンパク質のアミノ酸配列とホウレンソウなどの既知のNRとNRTタンパク質のアミノ酸配列を用いて,分子シミュレーション法, ホモロジー法などを用いてコンピュータによるシミュレーションを行い,NRとNRTタンパク質の反応中心や基質親和性などに関わる立体構造を植物種間で比較解析し,チャの遅い硝酸吸収同化速度がNRとNRTの構造特性によるのか検討する。また、転写因子の推定についても次の通り行う。NR、NiRおよびNRTの転写因子については、チャのgDNAから各遺伝子の上流と下流領域の塩基配列から転写因子候補配列を推定する。これは、インバースPCR法により行い、未知領域の塩基配列を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は引き続きNRとNRTの単離、遺伝子の発現解析が中心となる。また、クローニングから塩基配列解読までの解析を多量に行う必要がある。そこで、一連の解析に必要な分子生物学関連の試薬類を計上する。また、タンパク質レベルでの発現解析を行うための抗体作製を予定しているため、この費用についても計上する。さらに、窒素吸収特性を明らかにするための15Nラベルした15NH415NO3を購入するほか、研究に最低限必要なガラス器具やプラスチック類などの消耗品を計上する。このほかにも、学会での研究発表を行うための国内旅費、実験補助やデータ整理のための謝金を計上する。
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Research Products
(3 results)