2011 Fiscal Year Research-status Report
マメ科植物の窒素固定共生の制御における植物・微生物間相互作用の解析
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23580095
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
梅原 洋佐 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物共生機構研究ユニット, 主任研究員 (00391558)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 窒素固定 / マメ科植物 / 根粒菌 / 細胞内共生 |
Research Abstract |
マメ科植物と根粒菌の共生による窒素固定の有効利用の道を探るため、共生窒素固定能の制御にかかわる宿主植物因子およびそれらによって成り立つ植物・微生物間相互作用の解明を目指す。本研究では、根粒を形成し根粒菌の細胞内共生も成立するが窒素固定活性に異常を示すミヤコグサFix-変異体Ljsym104の原因遺伝子として単離された根粒特異的なAspartic peptidaseが、根粒菌の細胞内共生体(バクテロイド)化、バクテロイドを含む共生特異的な細胞内小器官であるシンビオゾームの形成に果たす役割の分子生物学的解明、およびバクテロイドの窒素固定活性を支える根粒特異的なジカルボン酸トランスポーター遺伝子の機能解析を実施する。 LjSym104に関して、プロモーター::GUSを毛状根形質転換系によりミヤコグサ根に導入したところ、根粒の非感染細胞での発現が示された。LjSYM104タンパク質の根粒細胞内での局在部位解析のために、大腸菌で大量発現させたタンパク質と、C末端側の13アミノ酸よりなるペプチドを抗原としてポリクロナル抗体の作成を試みた。大腸菌中でLjSYM104タンパク質を発現させ、Aspartic peptidase活性を検証した。さらに、LjSYM104と高い類似性を有し耐病性に関与することが示されているシロイヌナズナのCDR1遺伝子により、Ljsym104変異体が相補されたことから、LjSYM104は細胞外に分泌されペプチダーゼとして機能している可能性が示唆された。 根粒特異的なジカルボン酸トランスポーター(候補)遺伝子DCT1については、発現様式を明らかにするとともに、RNAiによるノックアウト実験を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LjSym104に関しては、ペプチダーゼ活性検出が遅れているのは、大腸菌で生産させたタンパク質の可溶化条件の検討に時間を要したためである。また、プロテオーム解析に関しては、試みた抽出方法では変異体根粒から解析に供する十分量のタンパク質を抽出できなかったためで、サンプル調製方法の検討が必要である。局在解析については、GFP融合タンパクの根粒内での蛍光強度が弱く、明確な結論を得られなかった。そのため、SYM104タンパク質に対する特異抗体を作成するとともに、MYCタグ融合タンパクによる形質転換-局在解析を準備している。 DCT1は、その後の解析で気孔の開閉において重要な役割を果たすアニオン/有機酸トランスポーターのファミリーに属するタンパク質をコードすることがわかった。DCT1の発現は根粒非感染細胞に特異的で、当初の感染細胞内シンビオゾーム膜に局在するジカルボン酸トランスポーターとの予測は外れたが、非感染細胞が、バクテロイドに供給される光合成産物の異化において重要な役割を果たすという実験事実があり、DCT1が非感染細胞から感染細胞への有機酸の輸送に関与している可能性が考えられた。しかし、毛状根形質転換によるRNAi実験は、今のところ明らかな表現型を示しておらず、今後さらに検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
Ljsym104に関して、大腸菌を用いた組換えタンパク質によるプロテアーゼ活性の検出を引き続き試みる。野生型根粒、およびLjsym104変異体根粒について、植物細胞質画分(シンビオゾーム内部を含む)とバクテロイド画分に分離後、それぞれのプロテオーム解析を実施する。これにより、LjSYM104遺伝子の欠損が根粒内のタンパク質発現プロファイルに与える影響を解析し、その働きに関して手がかりを得られると期待される。初年度に作成した抗体を用いて組織切片レベルおよび細胞分画-ウェスタン分析を併用してLjSYM104タンパク質の細胞内局在を解析する。同時にGFPとの融合タンパクを作成し、毛状根に導入し、根粒内部での局在部位を明らかにする。さらに、光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて、根粒感染細胞の微細構造、とくにシンビオゾーム、バクテロイドの発達・維持に着目して詳しく観察し、Ljsym104変異体の特徴を明らかにする。それから、Ljsym104変異体根粒の窒素固定不全はTONOとMAF303099という2種のミヤコグサ根粒菌接種で異なった様相を示すことが示唆されている(MAFF菌では比較的高い窒素固定活性を示す)ことから、これら2種の根粒菌によるFix-変異体の応答の違いを正確に評価し、将来の新たな研究展開の手がかりを得たい。 DCT1に関しては、この遺伝子のエクソン部分にレトロトランスポゾンLORE1が挿入された変異体が見いだされたので、その変異体の種子を入手し、ホモ系統を確立したうえで、窒素固定活性など表現形質の解析を行う。リアルタイムPCRによる発現解析、MYC融合タンパクによる根粒(非感染)細胞内の局在解析を実施する。また、これとは別に、根粒で特異的に発現が誘導されるトランスポーター(候補)遺伝子のいくつかについて、毛状根RNAi実験による機能解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に予定していた出張を1件中止したため、旅費に残が発生したが、平成24年度では、旅費を計上しているところであり、繰り越し額については、物品費として使用する予定である。 Ljsym104に関しては、ペプチダーゼ活性の検出とプロテオームが遅れているものの、必要な試薬に関しては、平成23年度中に購入済みであることから、平成24年度においては、当初の予定通りの計画とする。すなわち、抗体及び蛍光蛋白との融合タンパクを用いた遺伝子産物の局在部位の解析、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた根粒感染細胞の微細構造解析及びLjsym104に感染して異なる窒素固定活性を示す2種類のミヤコグサ根粒菌の応答の違いの評価を行う。また、DCT1についても、研究費使用計画は当初の計画通りである。
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[Presentation] 根粒菌の菌株依存的にFix-形質を示すミヤコグサ変異体Ljsym104の解析
Author(s)
山谷紘子, 箱山雅生, 佐藤修正, Md Shakhawat Hossain, 柴田哲, 長谷純宏, 田中淳, 川口正代司, 田畑哲之, 林誠, 河内宏, 梅原洋佐
Organizer
植物微生物研究会第21回研究交流会
Place of Presentation
岡山大学
Year and Date
平成23年9月21日