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2011 Fiscal Year Research-status Report

ヒ酸還元能を持つジオバクター属細菌による水田土壌からのヒ素溶出

Research Project

Project/Area Number 23580103
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

天知 誠吾  千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80323393)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywordsヒ素 / 微生物 / 溶出 / ヒ酸還元 / 水田 / Geobacter / 鉄還元 / ヒ素汚染
Research Abstract

1.Geobacter sp. OR-1株の生理生化学的解析:OR-1株は電子供与体として酢酸、乳酸、ギ酸を、電子受容体としてヒ酸、キレート鉄(III)、フェリハイドライト、硝酸、亜硝酸、マンガン(IV)、セレン酸、フマル酸を利用可能であった。OR-1株をヒ酸を唯一の電子受容体として生育させたところ、ヒ酸の還元に伴った生育が確認された。また、このときのヒ酸消費量、亜ヒ酸生成量、酢酸消費量の比がおおむね4:4:1であること、さらにヒ酸の還元が種々の呼吸阻害剤で阻害されたことから、OR-1株のヒ酸還元は呼吸反応であることが明らかになった。2.水田土壌からのヒ酸還元細菌の新規分離:灰色低地土などから、新たにSHIMR-1株とPSR-1株の分離に成功した。16S rRNA遺伝子に基づく系統解析の結果、前者はDesulfitobacterium metallireducensに、後者はAnaeromyxobacter dehalogenansに近縁であることがわかった。いずれの細菌もヒ酸を唯一の電子受容体として生育可能で、ヒ酸消費量、亜ヒ酸生成量、酢酸消費量の比はおおむね4:4:1であった。さらにヒ酸以外にキレート鉄(III)、硝酸、セレン酸などを電子受容体として利用可能であった。3.滅菌土壌への接種実験:水素ガスの曝気により、γ線滅菌土壌を安定的に低Eh条件で維持する方法を確立した。滅菌した灰色低地土に電子供与体である酢酸と、OR-1、SHIMR-1、PSR-1株を接種したところ、酢酸のみでは6 ppbしか溶出しなかった亜ヒ酸が、60~135 ppbと顕著に溶出することがわかった。亜ヒ酸と鉄の溶出量には有意な正の相関が見られた(R2=0.975)。またXANES解析により、ヒ酸の溶出量が高い時には固相のヒ酸の割合も高い(40%以上)こともわかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初、ヒ素溶出再現実験においてヒ酸・鉄還元反応に必須の低Eh条件(100 mV以下が望ましい)を長期間維持するのが困難であることが危惧されていた。しかしながら、γ線滅菌後に水素ガスを注射針で無菌的に曝気する方法を考案し、これにより1週間程度のインキュベート期間でも-250 mVの低いEhを維持することが可能になった。今後接種する細菌の種類を様々に変化させることでさらに研究が進捗することが期待できる。一方、ヒ酸とフェリハイドライトを混合してモデル堆積物を調製する実験は、当初の計画よりも遅れている。これは混合物作成後の透析過程が不十分で、モデル堆積物に可溶性のAs(V)が混入していたためである。今後調製方法に改良を加えることで解決していく予定である。

Strategy for Future Research Activity

1.ヒ素の溶出に必須の細菌の特定:滅菌土壌に鉄還元能のみを持つ細菌(Geobacter metallireducens、Shewanella oneidensisなど)およびヒ酸と鉄還元能を共に有する細菌(OR-1、SHIMR-1、PSR-1株)を接種し、いずれの場合によりヒ素が溶出するか確認する。また固相のヒ素の化学形態をXANESで、鉄の溶出量をICP発光で分析する。これにより土壌からのヒ素溶出に必要な表現型を特定する。ヒ素の溶出に必須の細菌が特定できたら、それら細菌に共通する性質を明らかにする。具体的にはヒ酸を吸着させたフェリハイドライトやゲーサイト(モデル堆積物)を調製し、これを純粋菌株の培養系へ添加し、ヒ素の溶出、鉄の溶出が見られるか確認する。2.ヒ酸還元能とヒ酸還元酵素に関する生化学的検討:これまでに得られたヒ酸還元細菌(OR-1、SHIMR-1、PSR-1株)は、ヒ酸存在下での生育はそれほど旺盛ではないが、フマル酸や硝酸存在下では比較的旺盛に生育する。この性質を用いて、菌の大量培養を行い、得られた菌体から洗浄菌体を調製する。ヒ素の存在・非存在下で培養した静止菌体にヒ酸を添加し、その還元速度を定量することより、これら菌株においてヒ酸還元能が誘導的あるいは構成的に発現していることを確認する。また無細胞抽出液を調製しヒ酸還元酵素(ArrA)活性を測定する系を確立し、ArrAの局在性を明らかにする。最終的にはarrAをターゲットとしたRT-PCRなどによりヒ酸還元能の発現に影響を与える環境因子(酸素、ヒ酸、亜ヒ酸、他の電子受容体など)について明らかにする。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

以下の配分で使用する予定である。物品費:100万円旅費:15万円人件費、謝金:0円その他:25万円

  • Research Products

    (4 results)

All 2011

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Arsenic release from flooded paddy soils is influenced by speciation, Eh, pH, and iron dissolution2011

    • Author(s)
      N. Yamaguchi, T. Nakamura, D. Dong, Y. Takahashi, S. Amachi and T. Makino
    • Journal Title

      Chemosphere

      Volume: 83 Pages: 925-932

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Microbial influences on arsenic release from Japanese paddy soils2011

    • Author(s)
      S. Amachi, S. Nakamura, T. Ohtsuka, K. Kimura, K. Sakurai, K. Kudo, T. Makino and N. Yamaguchi
    • Organizer
      IUMS2011 Sapporo
    • Place of Presentation
      札幌国際会議場
    • Year and Date
      2011年9月10日
  • [Presentation] 国内水田土壌からのヒ素の溶出に及ぼす微生物の影響2011

    • Author(s)
      天知誠吾、中村崇志、大塚俊彦、櫻井和宏、木村建太、工藤桂太郎、牧野知之、山口紀子
    • Organizer
      第17回ヒ素シンポジウム
    • Place of Presentation
      つくば国際会議場
    • Year and Date
      2011-11-19
  • [Presentation] 国内水田土壌からの異化的ヒ酸還元細菌の分離2011

    • Author(s)
      工藤桂太郎、天知誠吾、本間瑛理
    • Organizer
      第27回日本微生物生態学会大会
    • Place of Presentation
      京都大学
    • Year and Date
      2011-10-08

URL: 

Published: 2013-07-10  

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