2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒ酸還元能を持つジオバクター属細菌による水田土壌からのヒ素溶出
Project/Area Number |
23580103
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天知 誠吾 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80323393)
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Keywords | ヒ素 / Geobacter / ヒ酸還元 / 鉄還元 / XAFS / 水田 |
Research Abstract |
水田土壌より分離した新規異化的ヒ酸還元細菌Geobacter sp. OR-1株の諸性質を明らかにした。OR-1は電子供与体として酢酸、乳酸、ギ酸を、電子受容体としてヒ酸、可溶性鉄、フェリハイドライト、硝酸、亜硝酸、マンガン(IV)、セレン酸、フマル酸を利用可能であった。また、灰色低地土などから新たにヒ酸還元細菌を分離し、諸性質を明らかにした。Anaeromyxobacter sp. PSR-1株はヒ酸の他に可溶性鉄、フェリハイドライト、硝酸、酸素、フマル酸などを電子受容体として利用できた。OR-1、PSR-1株のヒ酸還元能はヒ素の存在下で生育した時に誘導されることが明らかになった。 これら細菌をγ線滅菌土壌に電子供与体である酢酸と共に接種したところ、亜ヒ酸が顕著に溶出した。亜ヒ酸と鉄の溶出量には有意な正の相関が見られた。またXAFS解析により、ヒ酸の溶出量が高い時には固相のヒ酸の割合も高いこともわかった。これら細菌はフェリハイドライトに吸着させたヒ素も溶出できた。一方、ヒ酸還元能を持たない鉄還元細菌G. metallireducensやS. oneidensisでは鉄の溶出はあったものの、亜ヒ酸の溶出は認められなかった。以上のことから、土壌からのヒ素の溶出には鉄還元能とヒ酸還元能の両方が必要と考えられた。 Geobacter sp. OR-1株のドラフトゲノム解析を行った。予測される総塩基長は5.5 Mb、CDSは4,309個見出された。また、異化的ヒ酸還元酵素遺伝子(arrABDEなど)、ヒ素耐性遺伝子(arsACDR、acr3など)を中心としたヒ素代謝遺伝子群(arsenic island)がゲノム上に独立して2つ存在した。さらに、電子の授受に関与するc型シトクロームが84個存在し、全ゲノムの2%を占めた。以上の結果より、OR-1株には他のGeobacter属と比較して特にヒ素耐性遺伝子のコピー数が多いことがわかり、これが本菌の異化的ヒ酸還元を可能にしている可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)