2012 Fiscal Year Research-status Report
炭酸固定反応を触媒する脱炭酸酵素の機能発現解析とその応用
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23580108
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉田 豊和 岐阜大学, 工学部, 教授 (90220657)
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Keywords | 脱炭酸酵素 / 酵素変換 / 炭酸固定 |
Research Abstract |
種々のヒドロキシ安息香酸の脱炭酸反応を触媒する酵素がこれまでに発見され、酵素サブユニット構成は基質特異性にもとづいて2つのグループに大別してきた。2,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は水酸基の位置にもどついて考えると、いずれのグループに属するかは不明である。2,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素を持つ微生物が存在することが示唆されているが、微生物を分離した報告はなかった。そこで、集積培養法を用いて本酵素活性を持つ微生物の分離を進めた。前年度には分離に至らなかった。その原因は環開裂を優先する微生物群が目的の微生物より生育が早いためと考え、集積培養後の培養液を希釈して分離を試みた結果、目的活性を持つ微生物を10株得た。培養条件を検討して活性を向上させ、基質特異性を検討した。 没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)の脱炭酸酵素は腸内細菌の1種で諸性質を報告しているが、そのN末端アミノ酸配列とデータベース上で相同性を示すタンパク質は存在しない。反応機構上では上述の2つのグループに属すると考えられる。応用面でもピロガロールの生産に適用できる酵素であることから、安定で活性の強い没食子酸脱炭酸酵素の探索も進めた。没食子酸が互いにエステル結合したタンニン酸を用いた集積培養で、本酵素活性を持つ細菌とカビを見いだした。カビでは本酵素活性を初めて見いだし、安定な酵素を持つと考えられ、特徴解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする新規の脱炭酸酵素活性を持つ微生物群を見いだすことができ、活性菌をライブラリー化することに成功した。2,4-ジヒドロキシ安息香酸脱炭酸酵素は諸性質の報告は全くなく、カビの没食子酸脱炭酸酵素も微生物分布が確認されておらず、新しい知見を蓄積することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく見いだした新規脱炭酸酵素の反応特性の解明と、酵素構造の解析、酵素遺伝子のクローニングを実施する。また、応用的側面として、脱炭酸反応の基質特異性のデータにもとづいて、逆反応である炭酸固定反応を活用したヒドロキシ安息香酸およびそのアナログの酵素合成法を検討する。 没食子酸脱炭酸酵素については、組換え大腸菌によるタンニン酸から没食子酸を経るピロガロールの酵素合成に活用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
酵素精製用の試薬、基質特異性を検討するための種々のヒドロキシ安息香酸およびそのアナログの購入が必要となる。また、酵素タンパク質情報を解析するための分析や遺伝子組換え実験の反応試薬に経費を要する。酵素スクリーニングを実施していた前年度よりも経費がかかるため、今年度の残額を次年度に充当する。
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