2011 Fiscal Year Research-status Report
連鎖球菌における宿主細胞外マトリックス(グリコサミノグリカン)の代謝機構
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23580112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 渉 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30273519)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 連鎖球菌 / グリコサミノグリカン / 代謝酵素 |
Research Abstract |
グリコサミノグリカンの分解に関わるUGL遺伝子クラスターは、連鎖球菌のみならず他の病原性細菌(腸球菌、ウェルシュ菌など)や常在菌(乳酸菌など)にも見出される。連鎖球菌のUGL遺伝子クラスターは、ヒアルロン酸存在下で誘導発現する。そこで、他の細菌として乳酸菌に焦点を当て、ヒアルロン酸存在及び非存在下でのUGL遺伝子クラスターの発現レベルをDNAマイクロアレイ解析で決定した。その結果、ヒアルロン酸による顕著な誘導発現は認められなかったが、UGL遺伝子クラスターの発現レベルは全遺伝子の平均発現レベルより高いことが分かった。そのため、乳酸菌ではUGL遺伝子クラスターが恒常的に高発現しており、連鎖球菌とは異なる発現制御機構が存在することが示唆された。 UGL遺伝子クラスターにコードされている連鎖球菌Streptococcus agalactiae由来機能不明タンパク質Gbs1891とGbs1892の機能を解析した。大腸菌発現系と精製系を構築し、当該タンパク質の酵素活性を調べた。その結果、Gbs1892が不飽和グルクロン酸(4-デオキシ-L-スレオ-5-ヘキソ-スウロース-ウロン酸)に作用するイソメラーゼとして機能し、Gbs1891がGbs1892反応により生じた3-デオキシ-D-グリセロ-2,5-ジヘキソウロソン酸に作用する還元酵素であることが分かった。以上のことから、不飽和グルクロン酸はGbs1892とGbs1891の逐次反応により2-ケト-3-デオキシ-D-グルコン酸に代謝されることが明らかになった。 Gbs1892とGbs1891の構造と機能との相関を明らかにするため、それらのX線結晶構造解析を進めた。両酵素の結晶を調製し、X線回折実験により結晶の基礎的データを収集した。データをプロセスし、分子置換法によりGbs1892とGbs1891の初期モデル構造を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書に記載した3つの項目(UGL遺伝子クラスターの発現制御、グリコサミノグリカンの代謝機構、代謝系酵素の高次構造)について、研究実績の概要に記載した通り、新たな研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
高次構造を決定したグリコサミノグリカン代謝系酵素Gbs1892とGbs1891について、各種リガンドとの複合体の構造を決定することにより、触媒反応や基質認識に関わるアミノ酸残基を同定する。当該アミノ酸残基に部位特異的変異を導入し、変異体を作製する。変異体の活性を測定し、活性部位におけるアミノ酸残基の役割を同定することにより、両酵素の構造と機能との相関を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
グリコサミノグリカン代謝系酵素の変異体作製のため遺伝子工学とタンパク質工学試薬を、変異体の精製のためゲル担体を、構造解析のため結晶化試薬を、各々消耗品として購入する。X線回折データの取得と学会での成果発表のため、出張旅費を計上する。結晶化では多検体スクリーニングを行う必要があるため、非常勤職員を雇用し謝金を支払う。
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