2011 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサデータを活用した新規好塩性細菌利用基盤技術の開発
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23580117
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松井 徹 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90372812)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 好塩性細菌 |
Research Abstract |
1.遺伝子破壊株ライブラリーの構築:上記実施に先立ち、チュニジア環境試料より分離した好塩性細菌21aの各種性質評価を実施した。本菌株は16SrRNA配列よりHalomonas aquamarinaの近縁種と同定され、NaCl 0.17~2.5Mの濃度範囲(最適濃度0.5M)で生育する中度好塩性細菌であった。プロテオバクテリア用トランスポゾンベクターとトランスポゾン複合型ベクターを用いて検討したところ、遺伝子破壊株ライブラリー作成用のベクターとしては後者が有効であり、ランダム挿入、一カ所のみの挿入が起こっていることが確認できた。2.次世代シーケンサによるドラフトゲノム遺伝子解析:パイロシーケンス解析型次世代シーケンサ454GSJrを用いて21a株等新規分離株のゲノム解析を実施した。いずれも期待通りの情報出力が得られた。現在、オープンソースのデータベース解析エンジンが停止中であるが、再開次第、アノテーションを実施する予定。3.好塩性細菌の新規スクリーニング:これまで、乾燥試料、高塩低栄養地域からの好塩性細菌を得ることができなかったため、分離条件を変更して同一試料からの好塩性細菌スクリーニングを実施した。(試料には、チュニジア国内の緑地帯、砂漠、塩湖など7カ所から採取したものを用いた)NaCl 10または15%を含む0.1×LB培地により分離した結果、生育が認められた試料は緑地帯(Chebika)由来のものだけであったが、硫酸マグネシウム濃度を高くした場合に砂漠(Sahara)、塩湖(Chott El Jerid)から分離菌が得られた。16SrRNA塩基配列による分類の結果、Halobacillus等のFirmicutesおよびChromohalobacter, Halomonas 等のγ-proteobacteriaに属していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センターで購入したパイロシーケンス型次世代シーケンサ454GSJrの運転が順調に進むかどうかが、不確定要素であったが、順調に立ち上げることができ、期待通りの出力が得られた。オープンソース(DDBJ)のアノテーション機能が一時停止しており、一部ペンディングとなっている。保有菌株の遺伝子解析に関しては、取得済みの遺伝子破壊株を用いた塩基配列解析等を実施し、期待通りの結果が得られている。今後は形質転換効率と再現性が課題と考えられ、現在検討中である。 以上のことから、初年度計画事項に関しては概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は対象好塩性細菌の基本的性質に関する知見を得ることができたため、今後は、具体的な遺伝子機能解析と当該菌株を宿主とした育種の基盤構築を進めていく。1.好塩性細菌育種の基盤構築:形質転換効率条件の最適化を継続して実施し、遺伝子破壊株ライブラリーを作成する。また、プラスミドベクターの構築と性質検討を目的として、好塩性細菌由来の内在性プラスミドを用いてシャトルベクターを構築し、宿主内安定性などを実施する。2.ドラフトゲノムデータ取得:次世代シーケンサ解析を再度行い、十分量のゲノムデータを取得後、アッセンブルを行う。目標コンティグ数50以下とし、コンプリートデータの構築を目指すと共に、アノテーションを実施し、遺伝子情報の基盤を構築する。さらに耐塩性機能に重要な適合溶質生合成関連遺伝子などについて他の好塩性細菌との比較を行う。3.好塩性石油分解菌を構築するために石油系化合物分解遺伝子(群)の収集と解析を進める。具体的には、アルカン等の脂肪族炭化水素、多環芳香族、複素環化合物などの分解を対象とし、研究室保存株に加えて必要であれば、新規スクリーニングも実施する。4.上記1,2の技術、情報を組み合わせて好塩性細菌に特徴的な遺伝子の解析を進める。また、好塩性細菌内で上記4で得られた分解遺伝子(群)の発現を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・好塩性細菌育種の基盤構築のために、遺伝子工学実験用の試薬および器具(制限酵素類、DNA抽出キット類、オリゴDNA、PCR用試薬、マイクロチューブ等)、キャピラリシーケンサ用遺伝子解析試薬等を使用する。・ドラフトゲノムデータ取得のために、次世代シーケンサ用試薬及び器具を使用する。効率的な大量ゲノム情報解析が必要となった場合は、専用情報処理用ソフト、PCの購入についても検討する。・石油分解菌解析研究では、石油分解反応分析のために、ガスクロマトグラフィー用カラムおよび消耗品、高速液体クロマトグラフ用カラムおよび消耗品を使用すると共に、分解菌の遺伝子、酵素解析用試薬を使用する。菌学的性質の比較、遺伝子取得を目的として寄託機関からの微生物購入を実施する。・成果公表のために国内、国外学会発表のための旅費、参加費を使用する。・その他、実験の効率化のために委託分析等を適宜実施する。
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Research Products
(2 results)