2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサデータを活用した新規好塩性細菌利用基盤技術の開発
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23580117
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松井 徹 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90372812)
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Keywords | 好塩性細菌 / 次世代シーケンサー |
Research Abstract |
1.発現ベクターの構築と性質検討 プラスミド保有の報告がある好塩性細菌Halomonas sp.から内在性プラスミドを抽出分離し、その塩基配列解析結果から複製に関係する領域を増幅してE.coli用のプラスミドベクターにサブクローニングすることによりHalomonas-E.coliシャトルベクターのプロトタイプを作成した。当該ベクターは21a株および一部のHalomonas sp.に電気パルス法で形質転換可能であった。好塩性細菌への電気パルス法による形質転換はこれまでに報告がない。さらに得られた形質転換体の産業利用の可能性を検証するために非抗生物質添加条件でのプラスミド安定性を検討した。その結果、培養時の塩濃度とプラスミド安定性に相関があることが明らかとなった。これまでの成果について投稿準備中である。 2.高塩濃度条件下での芳香族化合物に対する分解活性評価 沖縄土壌より分離したPseudomonas putida HKT554は、ナフタレン、ナフトチオフェン、ベンゾチアゾール等の各種芳香族化合物を分解し、ナフタレンジオキシゲナーゼ系(NDO)が関与していることを明らかにしてきた。当該菌株のNDO遺伝子群(nahAa,Ab,Ac,Ad約4kb)をE.coli用の発現ベクターpKK223-3にクローニングし、栄養培地で青いコロニーを形成し、NDOの発現を確認した。好塩性細菌での発現ベクター構築と並行して塩濃度とNDO活性の関連について評価する必要がある。 3.次世代シーケンサによるドラフトゲノム遺伝子解析 パイロシーケンスによるドラフトゲノム解析を行い、アセンブル、アノテーションを実施した。コンティグ数314、0.1-10kb、推定ゲノム長3.4Mbaseとほぼ期待通りの結果が得られた。塩耐性に関わる適合溶質エクトイン、グリシンベタイン生合成遺伝子が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)構築したシャトルベクターが好塩性細菌内で機能したこと、2)これまで接合法でしか報告のなかった好塩性細菌の形質転換が簡便な電気パルス法で可能となったこと、さらに、3)得られた形質転換体のプラスミド安定性と培養条件に関する新しい知見が得られたこと、等から、前年度の菌学的性質の結果とあわせて研究成果を投稿する段階まで来た。好塩濃度環境下での石油類分解に使用する酵素遺伝子NDOのクローニングとE.coliでの発現が確認できたことにより、NDOの各種条件下での活性評価が可能となった。さらに、Halomonas sp. 21a株のドラフトゲノムが明らかになったことで、本課題により達成される好塩性細菌の遺伝子組み換え基盤技術を活用した各種有用生理活性物質(エクトイン、グリシンベタインなど)の生産などへの展開が期待できるようになった。 以上のことから、当該年度計画事項に関しては概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は対象好塩性細菌の形質転換株を得ることができたため、今後は、具体的な遺伝子機能解析と発現、より新規な(できれば特許性のある)遺伝子ツールの開発も考慮した基盤構築を進めていく。 1.好塩性細菌育種の基盤構築 ・形質転換効率条件の最適化を継続して実施し、遺伝子破壊株ライブラリーを作成すると共に、各種機能解析を進める。また、プラスミドベクターの宿主内安定性の向上、新規シャトルベクターの構築を目的とした検討を進めていく。 2.好塩性石油分解菌を構築するために石油系化合物分解遺伝子(群)の収集と解析を進める。具体的には、アルカン等の脂肪族炭化水素、多環芳香族、複素環化合物などの分解を対象とし、研究室保存株に加えて必要であれば、新規スクリーニングも実施する。 3.上記1,2の技術、情報を組み合わせて好塩性細菌に特徴的な遺伝子の解析を進める。また、好塩性細菌内で上記4で得られた分解遺伝子(群)の発現を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・好塩性細菌育種の基盤構築のために、遺伝子工学実験用の試薬および器具(制限酵素類、DNA抽出キット類、オリゴDNA、PCR用試薬、マイクロチューブ等)、キャピラリシーケンサ用遺伝子解析試薬等を使用する。 ・石油分解菌解析研究では、石油分解反応分析のために、ガスクロマトグラフィー用カラムおよび消耗品、高速液体クロマトグラフ用カラムおよび消耗品を使用すると共に、分解菌の遺伝子、酵素解析用試薬を使用する。菌学的性質の比較、遺伝子取得を目的として寄託機関からの微生物購入を実施すると共に、ドラフトゲノムデータ取得のために下記消耗品類を使用する。 ・ドラフトゲノムデータ取得のために、次世代シーケンサ用試薬及び器具を使用する。効率的な大量ゲノム情報解析が必要となった場合は、専用情報処理用ソフト、PCの購入についても検討する。 ・研究効率化のため、研究補助、委託分析等を適宜実施する。 ・成果公表のために国内、国外学会発表のための旅費、参加費を使用する。
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