2012 Fiscal Year Research-status Report
疑似菌体モデルによる乳酸菌夾膜多糖の免疫細胞活性化機構の解明
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23580124
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
鈴木 チセ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所畜産物研究領域, 上席研究員 (80343820)
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Keywords | 莢膜多糖 / ルテニウムレッド / RNA |
Research Abstract |
本課題は乳酸菌Lactococcus lactisが有する莢膜について、免疫担当細胞における認識機構や免疫応答への影響を明らかにすることを目的としている。これまで莢膜を有するL. lactis菌株の中でC59株のみがカチオン性色素ルテニウムレッド(RR)含有寒天培地上で赤色コロニーを示し、莢膜成分がRRと結合することを報告している。本年度は菌体の0.1 M炭酸ナトリウム(SC)処理によって得られる抽出画分(以下SC画分)にRRと結合する物質があることを明らかにした。この物質は 1)0.1 M SC処理(弱アルカリ)で菌体から遊離、2)0.1 M CaCl2存在下で沈殿、3)0.1 M EDTA存在下で可溶化、4)排除限界50 Kの限外濾過膜で濃縮可能、という特徴を有していた。このRR結合物質をアガロースゲルで電気泳動し、RRで染色した結果、16S, 23SリボソームRNAの分子量付近に2本のバンドが検出された。これらのバンドは臭化エチジウム染色で蛍光染色され、その後にRR染色すると赤く染まった。またサンプルをRNase処理すると2本のバンドは消失し、RRでも染色されなくなった。以上のことから、SC画分に存在するRR結合物質は主にリボソームRNAであると結論した。SC処理は細胞表層に非共有結合で相互作用するタンパク質の抽出に用いられる方法で、SC抽出後の菌体は抽出前と同様の濁度(A620)を保っており、SC画分のRNAが溶菌によるものとは考えにくい。数種のL. lactis菌株のSC画分からRNA精製を行った結果、C59株において最も多くのRNAが抽出された。 トランスポゾン挿入によりRR感受性の変化した変異株については、トランスポゾン挿入部位をシーケンスし、挿入遺伝子としてN-アセチルムラミダーゼ遺伝子、rRNA メチルトランスフェラーゼ遺伝子などが得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度以降の計画のうち、7.CPS変異株の解析については、得られた変異株のサザン解析を行った結果、本来高温処理で消失するはずのトランスポゾン挿入に用いたプラスミドが菌体内に残留している可能性が示唆されたため、変異株の解析のためにはこのプラスミドを完全に除く必要がある。また、CPS生産株の形質転換効率が非常に悪いという問題があり、トランスポゾン挿入変異の作出が難航している結果として、CPS非生産株の作出ができていない。一方、莢膜に含まれるCPS以外の菌株特異的な成分が菌株特異的な免疫応答に重要である可能性が示唆されたため、本年度は莢膜成分に含まれる成分としてRR結合物質の解析に重点を置いた。その結果、驚くべきことにC59株の細胞表層にのRR結合物質はRNAであり、すなわちRNAが細胞表層に存在することが明らかになった。今後は細胞外RNAの安定性やCPSとの相互作用等を検討した上で、培養細胞の応答にRNAが及ぼす影響を添加試験によって解析する必要がある。 RR感受性は菌株により異なりC59株は感受性であるが、DRC2株は耐性である。またCaCl2添加によりRRの作用が緩和されることから、カルシウムが関与する過程に関与することが予想される。今後はRR感受性変異株を用いて、その作用メカニズムや莢膜成分への寄与を解析する。
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Strategy for Future Research Activity |
L. lactisが有する莢膜について、免疫担当細胞における認識機構や免疫応答への影響を明らかにするため、最終年度は莢膜成分のうち、CPSとRNAの添加が、免疫担当細胞に及ぼす影響を明らかにする。1)細胞外RNAが分解されずに安定に抽出できることをふまえ、CPSとの相互作用や安定性への寄与を解析する。CaCl2添加培地では細胞外RNAが得られないことから、RNAが細胞外に出るメカニズムについても検討する。2)細胞表層に存在するRNAが免疫担当細胞に及ぼす効果を明らかにするため、RNase処理したC59株、あるいはSC抽出後のC59株を用いて、マクロファージ等に添加し、その効果を被貪食能やサイトカイン産生能を指標に解析する。3)これまでに構築したCPS修飾ビーズと細胞外RNAを、マクロファージ様細胞株や腹腔マクロファージおよびマウス脾臓細胞に添加し、その効果を被貪食能やサイトカイン産生能を指標に解析する。糖組成の異なるCPSとC59株由来の細胞外RNAの組み合わせ添加により、効果を検証する。4)RR感受性が変化した変異株について、細胞外RNAの量およびCPSの糖組成について親株と比較を行い、3)の結果と合わせて考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり、物品費・旅費・謝金等に使用する。次年度使用額248,749円は、本年度、高額なELISA等のキットの購入を伴うマウスを用いた投与実験を見合わせたため発生した残額である。この金額はELISAキットなど試薬の購入と、本課題の成果発表のため、平成25年度札幌で行われる日本乳酸菌学会参加への旅費に使用する。
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[Presentation] 古くて新しい乳酸菌2012
Author(s)
鈴木チセ
Organizer
平成24年度関東畜産学会第67回大会
Place of Presentation
茨城大学農学部 (茨城県)
Year and Date
20121110-20121110
Invited