2011 Fiscal Year Research-status Report
網膜視細胞特異的に発現するタンパク質アルギニン脱イミノ酵素の機能解明
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23580128
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
高原 英成 茨城大学, 農学部, 教授 (30122063)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質アルギニン脱イミノ酵素 / ニワトリ網膜 / グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ |
Research Abstract |
先に我々は、ニワトリのタンパク質アルギニン脱イミノ酵素(PAD)のアイソザイムの一つPAD3が眼球網膜視細胞に局在していることを発見した。本研究は、網膜組織に局在するPADの機能を明らかにすることを目的としている。本年度は網膜内においてPADの標的蛋白質を明らかにするため、ニワトリ眼球網膜を剥離し、蛋白質抽出液を調製後、二次元電気泳動、PVDF膜への転写、抗修飾シトルリン抗体によるウエスタンブロット法によりシトルリン化タンパク質の検出行った。その結果、抗修飾シトルリン抗体に反応する複数のスポット群を検出することに成功した。これらのスポットは等電点は異なるものの分子量が同じの連続したスポットであった。これはPADによる脱イミノ化で受ける標的蛋白質の挙動変変化と一致する。そこで、これらのうち顕著に抗修飾シトルリン抗体と反応した3つのスポットを切り出し、MALDI-TOF LC/MS/MSによる部分アミノ酸配列の決定及びニワトリゲノムデータベース(BLAST等のの利用による)との照合して結果、2つのスポットがグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)と一致した。GAPDHは解糖系の酵素であり全ての細胞の代謝系で不可欠な酵素であるが、このような酵素がPADの標的となっていることは極めて予想外である。さらに、抗ニワトリGAPDHを用い同様な手法で二次元電気泳動を行い、同抗体で陽性反応を示すスポットと上記の抗修飾シトルリン抗体の陽性スポットとを比較してところ両者が一致していることから、網膜内GAPDHがPADの標的蛋白質である可能性が高いと思われる。解糖系の酵素が生体内でPADの標的となっていることはこれまで全く報告がなく、脱イミノ化を受けることによりどのような機能変換を受けるのか大変興味深い研究成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究では当初の計画通り進んでいると判断している。先の研究によりニワトリ眼球網膜組織にはPADが局在しており、また抗修飾シトルリン抗体を用いた免疫組織化学によりPADによる反応を受けた脱イミノ化蛋白質(標的蛋白質)も同組織内には存在していることが明らかになっていることから、本年度の研究によりその標的蛋白質の候補となるものの一つが具体的になったことは大変意義深い。今回の研究で標的蛋白質の一つがグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)とされたが,GAPDHは解糖系において無酸素条件においてATP産生を司る大変重要な酵素であり、古くから解糖系を中心にGAPDHに関する研究は数多くなされてきた。しかし、近年GAPDHが細胞情報伝達や遺伝子発現制御に関わっているとの報告もあり、今回の研究はGAPDHの更に多様な機能を果たしている可能性を秘めていると推測される。次年度以降の研究によりGAPDHの脱イミノ化の生理学的な意義付けができれば大変高い評価を受けることができるものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ニワトリGAPDHの脱イミノ化について、詳しく検討を行う。具体的には、ニワトリ組織からGAPDHを抽出、精製し均一な蛋白質標品を得て、ニワトリPADによる脱イミノ化を試験管内において再現し、GAPDHのどの部位が脱イミノ化を受けるのか、またそれによりGAPDHがどのような機能変換を受けるかについて、酵素化学、蛋白質化学などの視点から検討を行う。ニワトリ網膜内には上述のPAD3以外にPAD1も発現していることが最近の研究から判ったことから、PAD1についても組換え型酵素の発現系を構築してPAD3による作用と平行して研究を進める予定である。標的とされるGAPDHの脱イミノ化による機能変換は全く未知な領域の研究分野であることから、状況に応じ外部の研究者の協力を得ながら研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と同様に研究費の殆どは物品費として使用する予定である。また、情報収集や学会報告などのために一部旅費として利用する。
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Research Products
(1 results)