2012 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナのフェノール性異物配糖体の輸送機構の解析
Project/Area Number |
23580132
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田口 悟朗 信州大学, 繊維学部, 准教授 (70252070)
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Keywords | 植物の異物代謝 / 配糖化酵素 / マロニル化酵素 / 物質輸送 / 蓄積機構 / 配糖体放出 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続きAtPMaT2の多様な基質に対する酵素学的な解析を行い、異物代謝に寄与しうること示した。さらに、昨年度作出したAtMaT2遺伝子発現抑制株の解析を行った。しかし、それらの抑制株では目的の遺伝子抑制が起きていなかったため、再度、作出し直すとともに、AtPMaT1破壊株に対するAtPMaT2強発現株、および遺伝子発現抑制株の作出を行った。その結果、すべての組換え体を得ることができた。AtPMaT1破壊株に対するAtPMaT2強発現株にナフトール投与したところ、マロニル化物の蓄積が回復したことから、AtPMaT1の異物代謝機能をAtPMaT2が相補可能であること、すなわち、AtPMaT2も異物代謝に関与しうることが明らかとなった。興味深いことに、AtPMaT1破壊株を親株としてAtPMaT2遺伝子の発現を改変した植物では、発芽直後の生育に異常が認められた。 シロイヌナズナの根由来の膜ベシクルを調整し、配糖体輸送活性の調査を試みたが、輸送活性が得られなかった。また、根特異的に発現するABC輸送体遺伝子の破壊株13種の解析を行った結果、ナフトール配糖体の放出に関与するものが得られなかったため、阻害剤実験による輸送体機能の検討を進めた。その結果、バナジン酸による配糖体の細胞外輸送に対する阻害が認められた一方で、ABC輸送体の特異的阻害剤では顕著な抑制効果を示すものは見いだされなかった。その結果から、別の輸送体の関与が示唆されたため、それらのうち根で発現するものを選抜し、遺伝子破壊株の種子を入手して、遺伝子破壊状況の確認を行った。現在、これら破壊株におけるナフトール代謝物の輸送活性の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物の異物代謝における修飾反応と代謝物の輸送機構の関係性について明らかにする上で重要なマロニル化酵素について、反応性の解析を行うとともに、種々の組換え株の作出を終了した。その結果、AtMaT2はAtMaT1の異物代謝能を相補可能であることが示された。さらに、それらマロニル化酵素遺伝子の2重変異株では、葉の形状に異常が認められたものが存在し、マロニル化酵素が異物代謝のみならず形態形成へも影響する可能性が示唆された。輸送系の解析では、膜ベシクルによる輸送実験系がまだ機能していないため、阻害剤実験および輸送体の遺伝子破壊株の解析を進めている。以上のように、異物代謝機能に関わる酵素の本来の機能を示唆する興味深い結果が得られており、おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね予定通りに研究を推進する。 まずは、阻害剤投与実験と、輸送体遺伝子破壊株における異物(ナフトール)代謝活性の解析を引き続き行い、詳細な輸送機能の解析を行う。あわせて、引き続きシロイヌナズナの根由来の膜ベシクルによる輸送系の確立に取り組むが、うまくいかない場合には、上記の破壊株の解析を中心とする。また、本研究の鍵であるマロニル化酵素遺伝子の二重変異株において、興味深い表現型を示したので、その代謝物の解析により、マロニル化酵素の生体内での役割を追究し、異物代謝の機能との違いを検討する。 マロニルグルコシド形成以外のナフトール代謝が認められた植物について、その酵素遺伝子の取得を試みる。さらに、異物配糖体排出機構を利用した物質生産の可能性について、栽培規模を大きくして検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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