2011 Fiscal Year Research-status Report
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23580133
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山篠 貴史 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (00314005)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 概日リズム / 光情報伝達 / 進化 / 多様性 |
Research Abstract |
高等植物シロイヌナズナの概日時計機構に深く関わると考えられる遺伝子のホモログをLycophyte(ヒカゲノカズラ)、Bryophyte(ヒメツリガネゴケ)、緑藻へと遡り検索したところ、すべての種に共通する遺伝子としてCCA1/LHY(単一Myb型転写因子をコード)、PRRファミリー(疑似レスポンスレギュレーターをコード)、LUX/PCL1-ELF3-ELF4(Evening Complexと名付けられたGARP転写因子を含むタンパク質複合体)が同定された。ヒメツリガネゴケとシロイヌナズナでこれらの遺伝子発現を観察したところ、CCA1/LHY因子が朝に、PRR因子群が昼に、EC因子群が夕方にmRNA発現量がピークを迎えることが明らかとなった。変異体を用いた遺伝学的な解析から、PRR因子群はCCA1/LHY因子の発現を抑制し、EC因子群はPRR因子群の発現を抑制し、CCA1/LHY因子はEC複合体因子の発現を抑制するという三竦みの関係が示唆された。 短日条件特異的な応答としては胚軸などの細胞の伸張成長が挙げられるが、その分子機構は、光によって不活性化され暗期で活性が高いbHLH型転写因子をコードするフィトクロム相互作用因子をコードするPIF4/5遺伝子が概日時計の直接の支配下にあり、その発現位相が短日条件でのみ暗期に発現するように調節されていることによることを明らかにした。 陸上基部植物ヒメツリガネゴケのPRR因子の発現制御機構を明らかにし、その機能をシロイヌナズナに導入することで機能的にも保存されていることを明らかにした。また、青色光情報伝達に関わるHY5とBBX因子のヒメツリガネゴケのホモログを同定し、機能解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は進化と多様性の観点から、概日時計に普遍的な要素の同定と種に特有の多様性要素の同定ができたと考えている。モデル植物であるシロイヌナズナに加えて、陸上基部植物ヒメツリガネゴケや有用マメ科植物ミヤコグサを研究対象として導入し、その形質転換体を作製することができるようになってきた。本年度の成果を基盤に、今後、植物時計の進化と多様性を明らかにしていくことで、植物の生存や環境適応に果たす役割を理解し、グリーンイノベーションを視野に入れた応用研究へと発展させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
被子植物と共通する進化的なコア回路とコケ固有のサブ回路が徐々に浮き彫りとなってきた。生物種に共通なコア回路に関しては、PRR因子群が制御する遺伝子を同定する。また、コア回路の構造と分子動態の測定結果を用いて、逐次的フィッティングを伴う計算機シミュレーションを行い、概日時計の基本機構モデルを検証/修正する。生物種に特異的なサブ回路に関しては、コケ時計特有のリン酸転移システム(LOVHK1a/1b →(Hpt )→ PRR2/PRR4)について、時計の光シグナル入力における生理機能を明らかにする。ミヤコグサの光周性花成制御機構は概日時計からの主要な出力経路(GI-CO-FT)がシロイヌナズナと同じかどうか不明である。日長に応答してFTを誘導する機構に関して知見を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子発現の概日リズムを測定するために、mRNA抽出、リアルタイムPCR反応キットや、シロイヌナズナ、ミヤコグサ、ヒメツリガネゴケに時計遺伝子や概日時計からの出力因子をコードする遺伝子を導入した形質転換体を作製するために、組換えDNA実験に必要な酵素、培地など消耗品を中心に研究費を使用する。消耗品の支出に関して、できるだけ節約に努め、可能ならば、レポーター遺伝子の発現を定量するための化学発光定量装置や、蛍光で観察するための蛍光顕微鏡を導入したい。
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