2012 Fiscal Year Research-status Report
サイクリンAーCDK活性の亢進による染色体恒常性破綻の分子機構
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23580140
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
千葉櫻 拓 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (30227334)
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Keywords | サイクリンA / サイクリン依存性キナーゼ / Mcm7 / Mps1 / S期移行 / 中心体複製 / 染色体倍数化 |
Research Abstract |
哺乳動物細胞におけるサイクリンA(CycA)-CDK複合体の活性亢進が、S期移行促進・中心体過剰複製・染色体倍数化を介して、染色体恒常性を破綻させる分子機構の解明を目的として、以下の解析を行った。 (1)CycA-Mcm7相互作用がS期移行を促進させる分子機構の解析 クロマチン免疫沈降(ChIP)-Seq解析の条件を確立し、ヒト培養細胞よりCycA抗体、Mcm7抗体、および複製開始起点結合タンパク質Orc2の抗体を用いたChIP-Seq解析およびChIP-qPCR解析を行い、CycA、Mcm7と複製開始領域との結合について検証した。その結果、CycA、Mcm7、Orc2の3者が共通して結合している染色体領域が複数同定され、CycA、Mcm7がin vivoで複製開始領域において相互作用していることが初めて示された。また、これらの領域は既報のヒト染色体複製開始領域と重複していた。 (2)CycA -CDKの活性亢進による中心体過剰複製・染色体倍数化の分子機構の解析 CycAによる中心体複製制御に関与すると報告されているMps1の阻害剤またはノックダウンにより、CycA-CDKの活性亢進に依存せずに中心体の過剰複製および染色体倍数化が誘導されることが示された。これらの結果より、Mps1が中心体過剰複製・染色体倍数化を抑制していること、さらにCycA-CDKの活性亢進がMps1を負に制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)内在性CycA欠損細胞を用いて外来性CycA誘導発現細胞株の樹立を試みたが、細胞が老化してしまう問題があり、CycA誘導発現系の安定導入が出来ていない。また、ChIP-Seq解析に多大な時間を費やし、CycAを含む複合体のプロテオーム解析に着手出来なかった。 (2)中心体複製制御に関与すると報告されているMps1, Orc1, Mcm5の中心体局在性について免疫染色法により解析すべく、昨年度に引き続き抗体の適性や染色条件について検討したが、いずれも明確な局在性が示されなかった。また、各因子のsiRNAによるノックダウン解析については、Mps1以外はノックダウン効率が悪く、解析出来ていない。さらに、種々の変異型CycAを作製し、CycA-CDKの活性亢進を引き起こすCKI三重欠損変異細胞へ導入したが、未だに倍数化誘導能欠損変異体が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)内在性CycA欠損細胞における外来性CycA誘導発現系の安定導入が難航しているので、G1期に同調した細胞に外来性野生型およびC1変異型CycAを一過性発現ベクターにより導入し、同調からのリリース後、経時的にクロマチン結合画分を分離し、複製ライセンス化因子・複製開始因子・複製フォーク因子等のクロマチンローディングに対する野生型および変異型CycAの影響を解析する。また、野生型およびC1変異型CycAを含む複合体のプロテオーム解析に向けて、抗CycA免疫沈降およびMS解析の条件検討に着手する。 (2)Mps1が中心体過剰複製・染色体倍数化を抑制し、CycA-CDKがMps1を負に制御している可能性を検証するため、CycAとともにMps1をCKI三重欠損細胞で過剰発現させ、CycA:Mps1の量比が中心体過剰複製・染色体倍数化に及ぼす影響を調べる。また、Mps1の局在性については、免疫染色法とともにGFP融合タンパク質も用いて、引き続き検証する。さらに、最近報告されたCycAの中心体局在シグナル配列に変異を導入し、染色体倍数化誘導能について検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費(500千円):必要品目(カッコ内は単価、単位千円)・積算根拠は以下の通りである。 <培養試薬・器具>年間25L必要であるので、Gibco社 DME液体培地(1.4)×50+ウシ胎仔血清(40)×5=270、培養用100mmディッシュ(13)×10=130、計400千円。 <汎用試薬>FACS用試薬等(50)+汎用試薬類(50)=100千円。 旅費(300千円):国内学会参加2回、国外学会参加1回を計画しているため、国内旅費として宿泊費(10)×7+交通費(40)×2=150、国外旅費として航空料金(100)+宿泊費(10)×5=150、計300千円。
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