2012 Fiscal Year Research-status Report
イネのジャスモン酸情報伝達を担う鍵転写因子の機能と発現制御機構の解明
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23580145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 憲典 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (20312241)
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Keywords | ジャスモン酸 / イネ / bHLH型転写因子 / 傷害ストレス / 病虫害応答性 |
Research Abstract |
本研究は、JAシグナル伝達経路の鍵転写因子であるMYC2やRERJ1によって直接発現制御を受ける標的遺伝子を同定し、これら転写因子の機能を明らかにすることで、JAシグナル伝達経路の全容解明を進めることを目的としている。24年度は、これら転写因子による直接的な標的遺伝子を同定するため、前年度に作製したRERJ1ペプチド抗体を用いてクロマチン免疫沈降実験のための予備実験を進めた。すなわち、傷害処理によりRERJ1の転写レベルでの発現を誘導したイネ植物体の葉身を用いて核抽出を行った後、RERJ1ペプチド抗体を用いたウエスタンブロット解析を行い、抗体の力価を評価した。 前年度のトランスクリプトーム解析から、RERJ1欠損変異株においてproteinase inhibitorの遺伝子やモノテルペン生合成に関与する遺伝子の傷害処理時の転写レベルでの発現誘導が低く抑えられることが明らかになったことから、24年度は実際にアワヨトウ幼虫による食害実験を行った。その結果、RERJ1欠損変異株ではその野生型親株と比較して食害面積が有意に大きく、また、アワヨトウ幼虫の体重変化についても変異体を与えた幼虫で終体重が重くなった。この結果は、イネが昆虫による食害を受けた際に、RERJ1がproteinase inhibitorなどの下流遺伝子の発現を誘導することで、イネに虫害抵抗性を付与していることを示している。 さらに、次年度で行う予定のOsMYC2の機能解析に向けて、韓国ポハン大学から購入した2系統のT-DNA挿入変異株の確認を進め、この2つのアレルが確かにOsMYC2遺伝子座にT-DNAの挿入を保持した変異株であることをゲノタイピングにより確認した。これによりOsMYC2変異体の解析準備も整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していたChIP解析については、RERJ1抗体の力価の評価を進めるため、実際にイネの核抽出物を用いたウエスタン解析を行ったが、クロマチン免疫沈降を開始するには至らなかった。これは、クロマチン免疫沈降を行うために必要なイネ植物体からの核抽出物の調製に時間を費やしたためである。現在は、核抽出物の効率的な調製が可能となったことから、来年度にChIP解析が行得るものと判断している。ChIPに関しては若干達成度の遅れがあるものの準備は着実に進んでいる。 一方、OsMYC2に関しては韓国ポハン大学で作製されたT-DNA挿入変異体を2系統入手し、T-DNAの挿入部位の確認を進めつつ次世代種子の収穫が終了した。また、ホモ変異体のPCRによるゲノタイピングも開始し、次年度に行う予定のOsMYC2変異体を用いた解析の準備が整いつつある。 さらに、RERJ1変異体の表現型の解析いについては、アワヨトウ幼虫による食害実験を進め、RERJ1が虫害抵抗性の発現に必要であることを示した。 このように、RERJ1のChIP解析など一部予定より遅れている項目もあるが、OsMYC2変異体の準備やRERJ1の表現型解析などは予定通り進んでおり、研究終了時に向けて研究計画は概ね順調に伸展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に確立したイネの傷害葉からの核抽出物の調製方法からさらにクロマチン調製に進み、ChiP解析に用いるクロマチンの準備を進める。同時に、これまでのトランスクリプトーム解析から明らかとなったRERJ1依存的な傷害応答性遺伝子について、それらのプロモーター領域を取得し、レポータージーンアッセいを行うことで、RERJ1による転写活性化を調べる。さらに、そのプロモーターのディレーション解析を進め、RERJ1が結合するシス配列領域の候補を選抜し、ChIP-PCRによりin vivoにおけるこれらのシス配列への結合を確認する。この確認がうまく出来たばあいには、ChIP-sequenceは次世代DNAシーケンサーを用いた網羅的なRERJ1結合領域の解析を進める。 さらに、イネのジャスモン酸シグナル伝達経路の解明の大きなヒントとなるOsMYC2変異体が使用できる状況になったことから、来年度はOsMYC2変異体の解析も進める。まずは、2系統存在するOsMYC2の変異体アレルにおける当該遺伝子のノックダウンの程度を確認する。その後、傷害処理時あるいはジャスモン酸処理時におけるトランスクリプトーム解析を進める。また、RERJ1とOsMYC2との関係性を調べるため、OsMYC2変異体におけるRERJ1の発現誘導を調べると共に、すでに構築済みのRERJ1プロモーターレポーターコンストラクトを用い、OsMYC2変異体バックグランドにおけるRERJ1の発現誘導を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度はクロマチン免疫沈降実験に必要な生化学・分子生物学実験試薬を中心に消耗品費として研究費を使用するほか、研究の進行に合わせて次世代シーケンサーによるシーケンス解析の外注費用あるいは試薬消耗品としても研究費の使用を予定している。研究成果報告として、25年 6月にギリシャで開催されるTERPNET2013会議、および25年10月に開催される植物化学調節学会、26年3月の日本農芸化学会への参加を予定しており、それらに必要な旅費も計上している。当初計画どおり一式50万円以上の機器の購入は特に予定していない。
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Research Products
(4 results)