2012 Fiscal Year Research-status Report
酵素法-化学合成を組み合わせた生産系の効率向上をめざす基質分子の設計と合成
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23580152
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須貝 威 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60171120)
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Keywords | 酵素合成 / 糖質化学 |
Research Abstract |
4-O-メチル-ManNAc (1)は抗インフルエンザ薬、ラニナミビル(2)の酵素合成前駆体となる重要なアミノ糖である。シアル酸誘導の際に阻害剤となるグルコ型を含まない、純粋なマンノ型のみを供給可能な合成ルートが求められている。従来合成法では高価なManNAcが原料で、そこから多段階の変換を要したり、別の合成では鍵段階である窒素官能基の立体選択的導入に高価なロジウム錯体を経由している。本年度の研究では、トリアセチルD-グルカールに対するフェリエ反応生成物(3a)から出発、TBSエーテル(3b)が有する4-位の遊離ヒドロキシ基を利用し、立体選択的にエポキシ化した後、ヒドロキシ基をメチル化した。求核置換反応で3-位に優先的にアジド基を導入した。ついでアジドアルコール(4)の2-位ヒドロキシ基を脱離基に変え、アジド基を還元、立体選択的に環化し、N-アセチル化を経て、重要中間体であるN-アセチルアジリジン(5)を調製した。アジドアルコール(4)の位置異性体も同一化合物に収束した。アジリジン(5)に対し、ヨウ化物イオン存在下、位置選択的に開環-再閉環し、目的のマンノサミン骨格を有する2-メチルオキサゾリン(6)を得た。開環、脱保護によって目的物(1)とし、各種中間体も含め酵素的アルドール反応を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度のフコース誘導体に関する研究とともに、天然に豊富な糖質の骨格と立体化学を活用し、目的とする位置への官能基導入に成功した。次年度はL-グルコースの合成に展開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
具体的には、24年度に得られた化合物から出発し、酵素-化学的手法を相補的に用いる保護基導入を鍵段階として、L-グルコースの合成を試みる。また、当初24年度実施を予定していた、ニトロソウレア誘導体のクライゼン転位を活用する化学-酵素合成について検討する。カルバミル化合物の類縁体である、さまざまなウレア誘導体を合成する。このものをN-ニトロソ化し、不安定生成物をそのままクライゼン転位させ新規カルバミルアミノ化合物を得る。それらの生成物に対し酵素を作用させ、新規な光学活性オキサゾリジノン類を合成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は108万円の残額が生じたが、これは複数掲げた研究テーマのうち一方に重点を置いたこと、また、研究消耗品費が当初の計画に比べ安価に処理できたことによる。次年度その残額は、当該年度実施予定の研究計画に基づき、試薬・溶媒や器具などの消耗品費を重点的に充当する。残りは当初の計画通り、主として試薬・溶媒や器具などの消耗品費、および学会発表などの旅費として使用する。
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