2012 Fiscal Year Research-status Report
脳炎症時におけるトリプトファン代謝鍵酵素による神経毒制御機構の解明
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23580158
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
江頭 祐嘉合 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (80213528)
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Keywords | トリプトファン / ACMSD / IDO / キノリン酸 / SREBP / 炎症 / LPS / NAD |
Research Abstract |
トリプトファン・NAD代謝の鍵酵素であるアミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSD)、キノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)は、神経毒キノリン酸の生成に影響を与える。キノリン酸はトリプトファン・NAD転換経路の中間代謝産物でNADの生成にも必要なものであるが、中枢神経系に多量に存在すると神経細胞を変性させることが知られている。ACMSDは様々な環境要因(栄養成分、ホルモン)で活性が変動する。一方、IDOは炎症等ある種の疾病で発現が誘導される。しかしその調節機構は明らかではない。そこで本研究は、脳炎症時における食品成分によるトリプトファン代謝鍵酵素を介した神経毒制御機構を明らかにすることを目的とした。 本年度は、ACMSDとIDOのライフステージによる発現の変動と転写因子を探索することを目的とした。 正常なマウスのライフステージ(胎児期、成長期、青年期、老齢期)でACMSDとIDOのタンパク質発現をウエスタンブロット法で検討したところ、ACMSDは腎臓において胎児期から強く発現していたが、脳では発現が見られなかった。一方、IDOはどの時期にも発現が見られず、LPSで炎症を誘発することにより脳や他の組織で発現が誘導されることが示唆された。 初代培養細胞にコレステロール+25-ヒドロキシコレステロールを添加するとACMSDとSREBP-2のタンパク質発現は減少する傾向がみられ、スタチン系薬剤(コレステロールの合成を抑制)を添加すると、ACMSDとSREBP-2の発現は有意に上昇した。以上の結果から、ACMSDはコレステロールによる調節を受けることが示唆された。SREBPの関与に関しては、今後この遺伝子をノックダウンさせた細胞、あるいはSREBPの阻害剤を用いた検討を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度に向け、レポーターアッセイの技術、実験条件をおおむね確立することが出来た。初代培養細胞にコレステロール+25-ヒドロキシコレステロールを添加するとACMSDとSREBP-2のタンパク質発現は減少する傾向がみられ、スタチン系薬剤を添加すると、ACMSDとSREBP-2の発現は有意に上昇した。以上の結果から、ACMSDはコレステロールにより調節を受けることを明らかにした。また、SREBP-2によっても調節を受ける可能性があるが、今後、SREBP-2をノックダウンさせた細胞、あるいはSREBPの阻害剤を用いた検討も行う必要がある。以上の理由から、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
脳炎症時における食品成分によるトリプトファン代謝鍵酵素を介した神経毒制御機構を明らかにするため、今後トリプトファン・ナイアシン代謝の鍵酵素の核内転写因子、および神経毒生成あるいは抑制に関する情報伝達機構を詳細に調べていく予定である。そのため、まず、レポーターアッセイの系を構築をする。ラットのACMSD 5’上流域のゲノム配列からTFSEARCH(転写因子結合部位を予測するプログラム)で、転写因子結合部位の予測を行う。その結果から、ある転写因子に着目し、ACMSDプロモーターのレポーターアッセイ系の構築を試みる。そのため、まず数種のレポータープラスミドの作製を行う。そして、これらのレポータープラスミドを用いてレポーターアッセイを行いACMSDの転写因子結合部位の推定を行う。ゲルシフトアッセイの予備検討も行う。 細胞や動物を用いて、食品成分によるトリプトファン代謝鍵酵素の調節機構を明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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