2011 Fiscal Year Research-status Report
連続加熱条件下における食品タンパク質付着凝集挙動の速度論的解明
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23580160
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
崎山 高明 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (70170628)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 食品タンパク質 / 熱凝集 / 付着 / 連続加熱装置 / ホエイ / β-ラクトグロブリン |
Research Abstract |
本研究では、ホエイと卵白を対象として小型連続加熱装置による連続加熱試験を行うとともに、変性・凝集の程度の異なるホエイと卵白及びこれらを構成するタンパク質の溶液を試料として付着挙動の解析を行い、これらを総合して食品タンパク質の付着機構を解明することを目的としている。初年度はホエイおよびその構成タンパク質を中心に実験を進めた。 ホエイおよびホエイタンパク質濃縮物(WPC)を水に溶解した試料について、小型連続加熱装置を用いて一定流速条件下で加熱処理を行い、加熱管出入口の圧力差によって加熱管内付着量の増加過程を評価した結果、WPCの方が明らかに付着量が少ないことが示された。WPCの方がタンパク質濃度が高く、熱凝集性が高いことから、水溶液中でタンパク質が熱凝集体を形成すると器壁への付着量が低下することが示唆された。そこで、タンパク質の加熱凝集状態と付着性との関係を調べた。加熱温度および時間を変化させたβ-ラクトグロブリン試料を調製し、ステンレス鋼表面に対する付着実験を行った結果、加熱温度が70℃を越えるとβ-ラクトグロブリンが付着し難くなることが示された。また、加熱β-ラクトグロブリン試料の凝集状態を非還元SDSポリアクリルアミド電気泳動法により確認するとともに、エルマン試薬を用いたSH基の定量を行った結果、加熱しても総SH基量には大きな変化が無く、凝集に起因する立体障害が付着量の減少をもたらすことが明らかになった。 β-ラクトグロブリンのステンレス鋼表面に対する付着挙動については、水晶振動子マイクロバランスを用いた常温での付着量についても解析を行った。付着量測定前に水晶振動子センサーのステンレス表面の洗浄を行うが、その洗浄条件によって付着量の差異が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホエイやホエイタンパク質濃縮物の連続加熱実験を行って組成による付着特性の差異を明らかにするとともに、加熱凝集タンパク質試料の凝集構造が付着特性に及ぼす影響を明らかにした。本研究では卵白も対象としているが、本年度はホエイおよびホエイタンパク質に関する解析を卵白よりも優先することによって、研究を深めることができた。また、水晶振動子マイクロバランス法による解析もほぼ計画に従って進めた。以上の点から、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
小型連続加熱装置を用いた検討については、ホエイの付着特性に関する解析を進めるとともに、卵白についても検討を行う。水晶振動子マイクロバランスを用いた解析については、凝集構造と付着量の影響についてさらに詳細な解析を進める。また、加熱管内の付着に対する速度論的数理モデルの構築にも着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費にはわずかな次年度使用額が生じたが、これは実験操作を工夫し、当初予定に比べて実験規模を少しずつ縮小できたことによる。平成24年度はこの次年度使用額と併せて、研究費のほとんどを実験試料と実験器具に宛てる。成果発表のための旅費としても一部を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)