2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質過酸化二次反応の制御に対するビタミンEの作用機構
Project/Area Number |
23580162
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山内 亮 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (50126760)
|
Keywords | ビタミンE / トコフェロール / 抗酸化剤 / 脂質過酸化 / ミセル溶液 / フリーラジカル |
Research Abstract |
ビタミンE (E) の脂質過酸化二次反応における役割を明らかにするため、ヘミン触媒によるリン脂質ヒドロペルオキシドの分解に対するEの作用をミセル溶液で検討した。 1-パルミトイル-2-リノレオイルホスファチジルコリン (PLPC) から調製したPLPC 13-ヒドロペルオキシド (PLPCOOH、0.5mM)とE (0.1mM) に、5mMデオキシコール酸ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液 (pH 7.4) を加えてミセル溶液とした。調製したミセル溶液はヘミン(10μM)を添加して37℃で反応させた。PLPCOOHの分解で生ずるアルデヒドは、ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体としてHPLC分析した。また、PLPCOOHとEとの反応生成物はHPLCで分取して構造解析した。 PLPCOOHミセルにヘミンを作用させると、PLPCOOHは急激に分解して二次生成物であるヘキサナールが増加した。このミセル溶液にEを添加してもPLPCOOHの分解は抑制されなかったが、ヘキサナールの生成はほぼ完全に抑制された。このことから、EはPLPCOOHから生じたフリーラジカル種を捕捉することによってアルデヒド生成を抑制したものと推定した。そこで、E存在下でPLPCOOHミセルにヘミンを作用させ、反応生成物をHPLCで分取して構造解析した。その結果、主要反応生成物としてPLPCOOHから生じたアルコキシルラジカルに由来するepoxyPLPCラジカルとEとの付加体(E-epoxyPLPC)を得た。さらに本反応を経時的に調べると、E-epoxyPLPC以外にペルオキシルラジカルとの付加体も認められた。 以上の結果より、Eは脂質過酸化二次反応において、脂質ヒドロペルオキシドのレドックス分解で生じたフリーラジカル種と付加体を形成することによって、アルデヒドの生成を抑制できることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度十分に達成できなかったビタミンEとリン脂質アルコキシルラジカルとの付加体の構造について、ミセル溶液を用いた反応系を確立することによって多量の反応生成物を分離することができ、そのために容易にNMR等で構造解析することができた。また、脂質過酸化二次反応系におけるビタミンE反応生成物解析法の確立については、HPLC分析における化合物の高感度検出が問題となった。すなわち、ビタミンEとリン脂質アルコキシルラジカルとの付加体は蛍光検出器による高感度分析が不可能であったので、UV検出器を使用して検出することとしたところ、検出感度はやや低いものの反応生成物の分析法をほぼ確立することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本年度の成果をもとにして(4)リン脂質リポソーム膜あるいは生体試料を用いて種々の条件下で脂質過酸化反応を行い、脂質過酸化二次反応におけるビタミンEの役割を解析する。すなわち、PLPCリポソームの過酸化二次反応では、微量のPLPCOOHを添加して過酸化反応を行い、残存あるいは生成するPLPCOOH、ビタミンE、PLPCOOHから生ずるアルデヒド、及びビタミンE反応生成物について網羅的に検討する。ビタミンE添加によってアルデヒドの生成が抑えられ、ビタミンE-PLPC付加体が反応生成物として検出されれば、ビタミンEが脂質過酸化二次反応の初発段階で生成した脂質アルコキシルラジカルを効果的に捕捉している証拠となる。さらに、リポソームを用いた研究で得られた結果を基に、生体試料を用いて脂質過酸化を行い、ビタミンE-脂質フリーラジカル付加体の生成をHPLCで定量化する。また、生成物の化学構造は、LC-MS分析から得られたマススペクトルを標品と比較することによって同定する。 以上の研究成果を得ることによって、最終的に脂質過酸化二次反応におけるビタミンEのフリーラジカル捕捉反応機構を確定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、微量のPLPCOOHを添加した反応系で過酸化二次反応反応を検討して、残存あるいは生成するPLPCOOH、ビタミンE、PLPCOOHから生ずるアルデヒド及びビタミンE反応生成物を網羅的に解析する予定である。そのためには、標品として一部の市販されていない化合物を作成するしなければならず、種々の試薬類を必要とする。なお、標品の分離・精製には、初年度に購入した分取HPLC装置を利用しする。反応生成物の同定や定量には現有の設備を使用し、そのために種々のクロマトグラフ用機材(HPLCカラム等)と多量の溶出溶媒が必要である。
|