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2011 Fiscal Year Research-status Report

食物繊維に対する消化管細胞応答の解明

Research Project

Project/Area Number 23580163
Research InstitutionGifu University

Principal Investigator

矢部 富雄  岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (70356260)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords食物繊維 / ペクチン / フィブロネクチン / Caco-2細胞 / 表面プラズモン共鳴
Research Abstract

今年度は,食物繊維を認識する腸管上皮細胞局在タンパク質の候補となるフィブロネクチンが,ペクチンと生理的条件下で相互作用するかを検討した。 まず,ヒト小腸由来cDNAライブラリーを導入したファージディスプレイ法によって,プルーン由来ペクチンと相互作用することが明らかになったペプチドとの相同性にしたがい,フィブロネクチン・フラグメントIII領域を候補タンパク質とし,ペクチンとの相互作用を表面プラズモン共鳴法により解析した。タンパク質をセンサーチップに固定し,プルーン由来ペクチン,レモン由来ペクチン,ポリガラクツロン酸をそれぞれアナライトとして実験を行った。その結果,プルーン由来ペクチンとフィブロネクチンの解離定数は0.0006 mMと非常に強い相互作用を示すことが分かった。一方,レモン由来ペクチンとの解離定数は2 mM,ポリガラクツロン酸との解離定数は38 mMと非常に弱いものであり,フィブロネクチンはプルーン由来ペクチンが有する特異的な構造に選択的に結合することが推察された。 次に,フィブロネクチンどうしが結合することを利用し,固定されたフィブロネクチンに対して,ペクチンとフィブロネクチンを同時に添加することによる競合阻害実験を行った。その結果,プルーン由来ペクチンが最も強くフィブロネクチンどうしの結合を阻害し,レモン由来ペクチンやポリガラクツロン酸は高濃度でのみ阻害作用をすることが分かった。これにより,フィブロネクチンがプルーン由来ペクチンが特徴的に有する化学構造を認識していることが確認された。 さらに,小腸上皮様モデル細胞のCaco-2細胞を用いて,フィブロネクチンの局在を調べたところ,基底膜側の主要な存在部以外にタイトジャンクションに一部局在しており,腸管に到達したペクチンは,タイトジャンクションに存在するフィブロネクチンと相互作用する可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は,健康食品素材として注目されている「食物繊維」が示す生理機能のうち,腸管上皮細胞への直接的な作用の結果もたらされる生体への影響を明らかにし,高齢化社会を脅かすさまざまな現代病から健康を守るための食材として,食物繊維が有効であるかを検証する科学的基盤の確立を目指している。 本年度は,食物繊維(ペクチン)を認識する腸管上皮細胞局在タンパク質を同定するために,ヒト小腸由来cDNAライブラリーを導入したファージディスプレイ法によって同定されたペプチドに相同性のあるフィブロネクチンを候補タンパク質として,表面プラズモン共鳴法を利用し,まず食物繊維と相互作用するタンパク質の存在の検証を行った。その結果,生理的な条件下で,フィブロネクチンとプルーン由来ペクチンが相互作用する可能性が示唆されたこと,由来の異なるペクチンによってフィブロネクチンとの結合力が異なることから,細胞外マトリクスに存在するフィブロネクチンは,腸管内に摂取されたペクチンと構造特異的に相互作用する可能性が強く示された。これは,本年度の当初の目標を十分に達成する結果が得られたと考えている。

Strategy for Future Research Activity

平成23年度において,フィブロネクチンがペクチンを認識する腸管上皮細胞局在タンパク質であること,さらにフィブロネクチンは食物繊維の化学構造を識別して特異的に結合していることを明らかにした。この結果を基にして,今後は食物繊維が誘導する細胞内シグナル伝達経路を解明するために,腸管上皮細胞様モデル細胞としてCaco-2細胞を用い,ペクチンに対するCaco-2細胞応答の解析,ならびに細胞内シグナル伝達経路の解明を目標とする。 これまでに,Caco-2細胞にペクチンを与えた際の細胞内代謝産物の変化をメタボローム解析によって調べたところ,細胞内のポリアミン量が減少していることが分かった。そこで,ペクチンに誘導されるポリアミン代謝関連遺伝子の変化をリアルタイムRT-PCRを用いて解析する。 また,ペクチン刺激によってCaco-2細胞のポリアミン代謝量が変化することを参考として,ポリアミン代謝に関与するシグナル伝達物質に注目し,ペクチンによる細胞応答のメカニズムを解明する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

直接経費130万円のうち,90万円を物品費とする。その内訳は,細胞培養に関わる試薬や器具に40万円,リアルタイムRT-PCRなどの解析に必要な消耗品として50万円を計上している。また,本課題の研究協力者として参加する大学院生(修士課程)2名を含む,学会発表における旅費として25万円を計上する。さらに,その他として実験機器使用料(リアルタイムRT-PCRを行う装置一式は大学共通利用機器であるため)と,論文投稿用の経費として合計15万円を計上している。

  • Research Products

    (6 results)

All 2012 2011

All Presentation (6 results)

  • [Presentation] ペクチンを認識するヒト小腸由来タンパク質の同定2012

    • Author(s)
      本田明里
    • Organizer
      日本農芸化学大会2012年度大会
    • Place of Presentation
      京都
    • Year and Date
      2012年3月23日
  • [Presentation] ペクチンを構造特異的に認識するヒト小腸由来タンパク質2012

    • Author(s)
      矢部富雄
    • Organizer
      第60回日本応用糖質科学会中部支部講演会(招待講演)
    • Place of Presentation
      名古屋
    • Year and Date
      2012年1月27日
  • [Presentation] ペクチンを認識するヒト小腸由来タンパク質の同定2011

    • Author(s)
      本田明里
    • Organizer
      日本応用糖質科学会平成23年度大会
    • Place of Presentation
      札幌
    • Year and Date
      2011年9月28日
  • [Presentation] 食物繊維を構造特異的に認識するヒト小腸由来タンパク質2011

    • Author(s)
      矢部富雄
    • Organizer
      第17回Hindgut Club Japanシンポジウム(招待講演)
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      2011年12月17日
  • [Presentation] ヒト小腸上皮細胞によるペクチン分子内特定多糖構造の認識2011

    • Author(s)
      矢部富雄
    • Organizer
      第16回日本食物繊維学会学術集会
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      2011年11月26日
  • [Presentation] ペクチンを認識するヒト小腸由来タンパク質の同定2011

    • Author(s)
      本田明里
    • Organizer
      糖鎖科学名古屋拠点第9回若手の力フォーラム
    • Place of Presentation
      名古屋
    • Year and Date
      2011年10月22日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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