2012 Fiscal Year Research-status Report
甘味物質の満足感に寄与するエネルギー情報の口腔内受容に関する研究
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23580165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山崎 英恵 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (70447895)
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Keywords | 甘味 / 嗜好性 / リック試験 / ショ糖 / 糖尿病 |
Research Abstract |
甘味受容体が同定され、その機能解析が進められている一方で、甘味の感受性や選択性と身体のエネルギー代謝とがどのように相互リンクしているのかについては未だ解明されていない点が多い。本研究では嗜好性検出に適したリック試験による甘味選択性と甘味強度の評価について、健常あるいは糖尿病モデル動物を用いた実験を行ってきた。その結果、動物はショ糖と同様に低カロリー甘味料を好んで摂取するが、糖尿病の発症により低カロリー甘味料に対する口腔内での甘味反応性がショ糖とは異なる傾向を示すこと、甘味提示時の脳内ドーパミン遊離のタイミングが糖尿病発症前後でずれることが明らかになった。これらのことより、甘味物質を摂取した直後の口腔内では、甘いという味の情報とは別にエネルギーの存在を瞬時に感知する情報伝達系が存在する可能性があると考え、口腔内(舌上皮、味細胞におけ)グルコース輸送担体ならびにエネルギー代謝関連遺伝子の発現について、解析を試みた。麻酔したマウスの舌から酵素処理により舌上皮を剥離し、有郭乳頭の味細胞を単離し、リアルタイムPCR法による遺伝子発現解析ならびにウェスタンブロット法によるタンパク質の発現解析の系を構築した。さらに、マウス口腔内にショ糖、サッカリンなどリック試験とドーパミン測定で用いた様々な甘味溶液を摘下し、溶液の濃度、ならびに暴露時間などの条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的である、口腔内での味質以外のエネルギー情報信号の探索とその伝達系の解析については、口腔内からの舌上皮の剥離と味細胞の単離の系構築作業に予想以上の時間を要し、PCR法やウェスタンブロット法に用いるサンプル作成までの時期が当初予定していたよりも遅れたが、リック試験やドーパミン測定の再現性試験などを含めると、研究全体としてはほぼ順調に進められたと考える。口腔内でのスクラーゼ活性測定に関しては、唾液採取にテクニカルな問題が生じたため、実験プロトコルの見直しが必要となり、予定していた実験スケジュールの延長を余儀なくされた。しかしながら、総じて研究は順調に進んでおり、今後の展開も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に行った遺伝子解析などの結果を確定するとともに、24年度に行う予定であった舌上での糖の取り込みについて検討する。エネルギー情報の信号となるには、おそらく細胞内への糖取り込みがあると予想される。単糖類の吸収には輸送担体を介するものと単純な受動拡散によるものがある。上皮細胞のアピカル側で細胞内へのグルコース輸送を担うSGLT1-3の発現、さらに基底膜側において血液中への輸送を担うGLUT1-2の発現を検討していく。口腔内でのスクラーゼ活性についてはプロトコルを改善し、スクロースからグルコースへの分解が口腔内であるかどうかの確認、ならびにあるとすればその程度を測定する。さらに、最終年度の研究予定としている末梢から中枢へのエネルギー状態の情報伝達信号とエネルギー基質選択について検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は主にマウス、ラットを用いるため、実験動物購入費用と、遺伝子発現の解析に用いるリアルタイムPCR用のプローブと試薬類などの消耗品が主な用途となる予定である。また、代表者の異動に伴い、これまで他の研究室より使用時に貸借していたウェスタンブロット用の実験機器や消耗品をあらたに購入する必要がある。限られた期間内に最大の成果を得るため、研究効率化のためのRNA抽出キット類の使用も必要と予想され、それに伴う消耗品を中心とした経費利用を計画している。また、9月には国際学会での本研究成果報告を予定している。
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