甘味物質の満足感に寄与するエネルギー情報の口腔内受容に関する研究

2014 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 23580165
• Research Institution: Ryukoku University
• Principal Investigator: 山崎 英恵 龍谷大学, 法学部, 准教授 (70447895)
• Project Period (FY): 2011-04-28 – 2015-03-31
• Keywords: 甘味 / 嗜好性 / リック試験 / ショ糖 / 糖尿病

Outline of Annual Research Achievements

食べ物を口に入れた際の満足感や充足感は味覚だけでなく、食物の栄養価値や安全性などの種々の要因が総合的に脳で判断されることにより生じる。本研究では、甘味物質が持つ味質とエネルギー情報に着目し、それらの口腔内での受容が脳における情報判断や満足感の発生にどう関わっているのかを解明することを目的とした。ラット甘味受容体T1R3は、T1R2との共発現によりスクロースとサッカリンを受容すること、また両者の受容体結合後の二次情報伝達物質は異なることが報告されており、ショ糖による満足感形成は口腔内の甘味受容体結合だけではなく、エネルギー情報を独立的あるいは甘味受容体との相互作用により認識するシステムの存在があると予想される。そこで、甘味物質として絶対的なおいしさを持つショ糖と低カロリー甘味料の摂取時の満足感の差異に寄与する要因について、実験動物を用い中枢と末梢の両側面から詳細な検討を行った。
最終年度は、動物の嗜好性を測定するリック試験におけるこれまでの結果の再現性を確認するとともに、甘味溶液を暴露した舌の上皮細胞における糖の取り込みについて、SGLT1～3やGLUT1およびGLUT2の発現をリアルタイムPCR法、タンパク量をウェスタンブロット法により検討した。実験の結果、マウスやラットはショ糖と同様に低カロリー甘味料を好んで摂取するが、糖尿病の発症により低カロリー甘味料に対する口腔内での甘味反応性がショ糖とは異なる傾向を示すこと、甘味提示時の脳内ドーパミン遊離のタイミングが糖尿病発症前後でずれることなど、仮説を実証するためのデータ再現性が確認された。しかしながら、舌での糖取り込み実験については、甘味溶液暴露に対する明らかな違いは検出されなかった。理由として、舌組織（味蕾）を用いた実験手技に加えて、舌上でのサンプル暴露における技術的問題があり、今後引き続き検討すべき課題としたい。