2012 Fiscal Year Research-status Report
新規HPLC-ESR装置による食品成分の活性酸素消去活性のオンライン評価
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23580166
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
田嶋 邦彦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50163457)
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Keywords | 抗酸化活性 / スーパーオキシドラジカル |
Research Abstract |
昨年度は、HPLCーESRシステムを青果物に含まれるスーパーオキシドラジカル消去活性物質の探索と活性評価に応用した。HPLC分析にはフェノール性物質および複素間物質を親和性で分離できるGPCカラムを使用し、紫外可視吸収スペクトルおよび示唆屈折率(RI)測定によってクロマトグラムを記録した。今回の分析では、京都産の最高級タケノコのの水溶性成分を測定対象とした。 ESRクロマトグラムにはスーパーオキシドラジカルの消去活性を有する主要な3つの溶出ピークが観測され、それらはいずれも270nm近傍に顕著な吸収極大を有していた。主要な3つピークの溶出成分を分取して観測したNMRスペクトルから、芳香族アミノ酸(Tyr、Trp、Phe)および核酸成分(グアニン、アデノシン、シトシン)の存在が明らかにされた。カラム溶出時間の比較から、これら主要な3つの溶出ピークにおいてスーパーオキシドラジカルの消去活性に寄与している物質はTyr、グアニン、アデニンであることが判明した。クロマトグラムの積分強度比から、タケノコのスーパーオキシドラジカルの消去活性におけるTyr、グアニン、アデニンの寄与は、それぞれ、30 %、22%および24%であることを見出した。この他に観測された低活の低い性の溶出ピークの寄与が24%と解析されたが溶出成分の特定には至っていない。 HPLC-ESR測定法をNMR法による成分分析を併用することで、混合系試料に含まれる主要なスーパーオキシドラジカル消去物質の同定とそれらの寄与を定量的に評価できた。本法は、食品成分が有するスーパーオキシドラジカル消去活性の精密解析に有用な方法であることが結論できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって、HPLCーESR分析法の装置開発および測定条件の最適化がほぼ完了した。さらに、ESRクロマトグラムの線形解析が終了したことで、ESRクロマトグラムの面積強度に関する定量的な解析法に目処が立った。以上の結果を基にして、昨年度は青果物に由来する水溶性成分を実試料としてタンパク質成分の含有量が低い京都産タケノコの水溶性成分を選択し、HPLCーESR分析を実施した。実際にタケノコ由来の混合系試料のESRクロマトグラム測定を行ったところ、高活性成分の存在は明らかにされたが、紫外・可視吸収スペクトルでは成分の同定に至らなかった。このような問題を解決するために、本研究では混合溶液およびカラム分離した成分のNMRスペクトル解析を並行して実施した。この結果、スーパーオキシドラジカルに対して消去活性を有する成分の同定と抗酸化活性の定量的な解析が可能になった。NMR分光法を併用したことで、当初期待していたHPLC-ESR法の有用性がさらに高められた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、青果物の水溶性成分を測定試料としてHPLC-ESRとNMR分析を併用した測定と解析を実施する。青果物としては、ほうれん草、レタス、キャベツ、タマネギ、ブロッコリなどを測定対象とする予定である。これら異なる青果物の抗酸化活性を序列化する方法として、それらの混合溶液のスーパーオキシドラジカル消去活性をESR法で計測し、それらの抗酸化活性を比較するためにクロロゲン酸濃度に換算する。さらに、HPLC-ESR分析を行い、ESRクロマトグラムの面積強度と溶出時間から、抗酸化活性における遷移金属イオンの関与と低分子量有機分子の寄与を独立に評価する予定である。そして、NMRスペクトル解析からスーパーオキシドラジカルに寄与する低分子量物質を同定し、青果物に含まれるフィトケミカルの抗酸化活性を精密に解析する予定である。本研究によって、これまでは漠然と比較されてきた青果物の抗酸化活性におけるフィトケミカルの寄与を比較することが可能になる。今年度は、このような抗酸化活性の精密解析に必要なデータの蓄積と試料調製法などの改良を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の科学研究費の約50%は、HPLC-ESR測定試薬として最も高価であり、連続的に使用するスピントラッピング試薬(DMPO) の購入費に充当する予定である。測定対象にあわせてHPLC-ESRシステムのカラムなどを適宜更新する必要がる。さらに、青果物抽出液に含まれるタンパクなどの高分子量成分を除去するために限外濾過装置を使用した分離、イオン交換樹脂を使用した有効成分の選択的な抽出などを併用する予定であり、必要な消耗品の購入に科学研究費の約70%を充当する予定である。
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