2011 Fiscal Year Research-status Report
トコトリエノールによるパーキンソン病モデル細胞の保護作用機構に関する研究
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23580168
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松浦 達也 鳥取大学, 医学部, 教授 (00199746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中曽 一裕 鳥取大学, 医学部, 講師 (30379648)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | トコトリエノール / パーキンソン病 / αシヌクレイン / 非抗酸化作用 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、ビタミンEの非抗酸化作用による抗パーキンソン病(PD)効果の可能性を探るために、ビタミンE同族体のトコトリエノール(T3)を用いて細胞保護効果とその作用機序を検討した。PDモデル細胞として、実際のPD時に見られるようにα-synuclein過剰発現によって内因性カテコールアミン依存性に緩徐に細胞死を誘導することができる臨床病態に即したモデル細胞系(PC12-α-synuclein TetOFF)と従来から用いられているSH-SY5Y細胞におけるMPP+投与モデルを用いた。これら2種類のPDモデル細胞に、α-,β-,γ-,δ-T3を添加し、効果を検討した。PC12-α-synuclein TetOFF細胞において、100 pM - 1μM程度の低濃度T3が有意に細胞保護効果を示した。SH-SY5Y細胞モデルでは10 nM-1μM T3が細胞保護効果を示した。α-,β-,γ-,δ-各T3の保護効果に顕著な差は認められなかったが、γ-,δ-T3の保護効果が相対的に優れていた。また、いずれのT3同族体も使用した濃度においてはPDモデル細胞に認められた過酸化脂質増加を有意には抑制しなかった。DNAアレイ、抗体アレイを行い、その結果からT3によるPI3K/Akt経路の活性化が示唆された。T3投与によりAktのリン酸化が確認され、 T3による細胞保護効果はPI3K阻害剤の前投与により阻害された。またエストロゲン受容体阻害によりT3による細胞保護効果が抑制されることから、PI3K/Akt関連シグナルの上流候補分子としてエストロゲン受容体(ER)の関与が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T3によるPD細胞保護効果がT3の抗酸化作用によらない生理作用によるものか、およびT3のどの同族体が最も効果的に細胞保護効果を示すかを検討した。その結果、γ-,δ-T3の保護効果が優れていることが明らかになった。また、これらの保護効果はT3の抗酸化作用よりもPI3K/Akt関連シグナル伝達を介したものであることが示唆された。さらに予備実験の結果から、PI3K/Aktシグナルの上流分子として、エストロゲン受容体(ER)を候補分子として絞り込んだ。本年度の研究実施は上記の結果より達成されているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、上流シグナル分子候補としてERの関与を検討する。また、ERα, ERβのどちらがT3細胞保護効果に最も関与するかも検討する。ERのRNA干渉によるノックダウンや阻害剤による阻害によりT3の効果がどのように影響されるかを調べ、T3とERの相互作用を間接的に証明する。相互作用の可能性が証明された場合、T3および3H-エストラジオールのER への結合競合実験により、T3のERへの結合を直接証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と同様に培養細胞を用いた検討が中心となるが、細胞保護効果を示すT3同族体が既に明らかになっていること、および上流の受容体としてERを考えているので、網羅的な検討を行う必要がないと思われる。そのため、培養関連費用を中心に減額設定を行う。また、24年度に得られる結果を学会報告(日本ビタミン学会、日本酸化ストレス学会を予定)する予定である。
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Research Products
(6 results)