2011 Fiscal Year Research-status Report
緩慢糊化性デンプンを有する新規サツマイモの食品素材化技術の開発
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23580175
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
北原 兼文 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (30240922)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | サツマイモデンプン / 緩慢糊化性デンプン / レジスタントスターチ / アミロース / アミロペクチン |
Research Abstract |
緩慢糊化性を示すサツマイモデンプン(九州03284-156)の分子構造特性と糊化などの機能特性を明らかにした。アミロース含量は、一般のサツマイモデンプンが17-20%であるのに対して、緩慢糊化性デンプンは31%であり、サツマイモデンプンでは珍しい高アミロース性デンプンであることが分かった。デンプン分子に結合するリン酸基の含量は一般品種の1/7と少なかった。また、粉末X-線回折分析による結晶図形は一般品種のC図形からB図形に変化しており、回折ピーク強度から判断される結晶化度は小さくなっていた。さらに、ゲルろ過および陰イオン交換クロマトグラフによる構成単位鎖解析では、高アミロース性を再確認するとともにアミロペクチンの超長鎖が多いこと、重合度6-10の短い単位鎖が極めて多いことが明らかになった。 一方、緩慢糊化性デンプンの糊化特性においては、ラッピッドビスコアナライザーによる粘度上昇温度は81℃と高かったが、示差走査熱量計により詳細な糊化特性を調べた結果、真の糊化吸熱ピークは49℃にあり、低温糊化性も合わせ持っていることが分かった。また、糊化に要するエネルギーも一般品種に比べて6割小さく、糊化後も糊液が白濁するなど、糊化抵抗性残渣を残した。このような糊化デンプンのレジスタントスターチ含量を測定した結果、一般品種が約2%であるのに対して、緩慢糊化性デンプンは13.5%と高い値を示した。 以上のように、サツマイモデンプンに見出された緩慢糊化性デンプンの物理化学的特性を調べ、ユニークなでん粉特性を有すること、そして新たな機能性として糊化デンプンのレジスタントスターチ含量が高いことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、緩慢糊化性デンプンの基本特性およびレジスタントスターチ機能の評価を行うように研究計画を立てた。連携研究機関からのデンプン試料の確保も問題がなく、研究実績の概要で述べたように、緩慢糊化性デンプンの分子構造特性や糊化特性、およびレジスタントスターチ含量を明らかにすることが出来た。従って、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は緩慢糊化性デンプンの高機能化法の検討とデンプン抽出残渣からのサツマイモペクチンの抽出法を検討する。これらは、当初の研究計画通りである。すなわち、前年度に明らかにした緩慢糊化性デンプンのレジスタントスターチ機能を強化するために、本機能への寄与の小さい短い構成単位鎖をイソアミラーゼでトリミング処理する条件を検討し、糊化抵抗性残渣の濃縮を図る。一方、サツマイモペクチンの抽出に関する検討は少なく、抽出溶媒の選択や高圧抽出法を試み、得られたサツマイモペクチンの糖組成やゲル化能について評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、計画通りオートサンプラを新規納入し、現有の高速液体クロマトグラフ装置の自動注入分析を可能にし、実験を効率的に推進する。また、前年度の繰越額(199,969円)は、同装置の脱気装置が不調となったため、その更新に充てる。その他、消耗品費、旅費等については研究計画通りに使用する。
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