2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580180
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
熊澤 茂則 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10295561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 靖正 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (90347386)
太田 敏郎 静岡県立大学, 食品栄養環境科学研究院, 助教 (40285193)
中村 純 玉川大学, 学術研究所, 教授 (30256002)
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Keywords | プロポリス / 起源植物 / ミツバチ / ソロモン諸島 / プレニルフラボノイド / 血管新生 |
Research Abstract |
ミツバチの生産物であるプロポリスは、現在、健康食品素材として広く利用されている。プロポリスの原料は樹脂などの植物由来物質であるが、実際の成分組成はミツバチが利用する植物種(起源植物)によって異なる。そこで本研究では、プロポリスの起源植物を化学的および生物学的アプローチから解明することを目的とした。さらに、プロポリスや起源植物、またそこから単離、同定した成分についてガン血管新生抑制活性を中心とした生理活性評価を行い、最終的にはプロポリスの機能性に物質レベルでの科学的根拠を与えることを目標とした。前年度は、韓国済州島産のプロポリスについて、その詳細な成分研究と起源植物の探索を実施したが、本年度はソロモン諸島産プロポリスの成分研究とガン血管新生抑制活性を中心に研究を進めた。ソロモン諸島産プロポリスは、前年度までの研究から新たなタイプのプロポリスであることが判明していたが、今年度のさらなる成分研究により、新規化合物を含むいくつかのプレニルフラボノイドを同定することに成功した。さらに、沖縄産プロポリスから見出されていたnymphaeol-AおよびBなどのプレニルフラボノイドがソロモン諸島産プロポリスにも含まれていることが明らかになり、ソロモン諸島と沖縄産プロポリスは同様な起源植物Macaranga tanariusであることが考えられた。nymphaeol-AおよびBは、in vitroおよびin vivoにおいてもガン血管新生抑制活性を示し、ウエスタンブロッティング法による解析から、それぞれの化合物の分子レベルにおける血管新生抑制活性機構を明らかにすることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画としては、韓国済州島産やソロモン諸島産に代表される特異な成分組成を有するプロポリスについて、詳細な構成成分を明らかにすることと生理活性を評価することにあった。韓国済州島産プロポリスについては、前年度までに成分研究を実施し、その成果はPhytochemistry誌に投稿、受理され、印刷中である。また、済州島産プロポリスの起源植物が明日葉であることも解明でき、この成果はBiosci. Biotechnol. Biochem.誌に発表した。なお、これら一連の済州島産プロポリスに関する研究に関しては、2012年度(平成24年度)日本農芸化学会本大会において学会のトピックス賞にも選出された。一方、ソロモン諸島産プロポリスについても、新規なプレニルフラボノイド化合物を見出し、その研究成果は日本農芸化学会をはじめとするいくつかの学会で発表した。第14回静岡ライフサイエンスシンポジウムにおいては、本研究成果は最優秀研究発表賞に選ばれ、成分研究に関しては、Biosci. Biotechnol. Biochem.誌およびJ. Agric. Food Chem.誌にも発表した。ソロモン諸島産プロポリスより見出したプレニルフラボノイドの中には、沖縄産プロポリスから見つけられていたnymphaeolと呼ばれる化合物もあったが、それらについてガン血管新生抑制活性を調べたところ、顕著な抑制活性が見出された。また、ウエスタンブロッティング法を用いた分子レベルにおける解析も行い、この成果も論文発表予定である。 以上のことから、本研究課題については、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では、特異な成分組成を有するプロポリスを中心に研究を実施した。今後においても、プロポリスの成分化学的な研究は引き続き行う。一方で、プロポリスの生理機能研究に関しても注力する。特に前年度に起源植物を解明した韓国済州島産プロポリスについては、他産地のプロポリスには見られない特異的な生理機能を検討する予定である。具体的には、当該年度の予備検討において、済州島産プロポリスに神経成長因子(NGF)産生促進作用を見出していたため、今後培養細胞を利用してプロポリスより単離した成分についても、その機能性を詳細に検討し、構造活性相関的な考察を行う。NGFの脳内注入はアルツハイマー型認知症(AD)モデル動物の健忘を改善するため、脳内のNGF産生を促進する食品にはAD治療効果が期待されている。そのため、本研究成果は済州島産プロポリスに付加価値を付けることができるだけでなく、AD治療につながる新たな生理機能を有するプロポリス開発にも結び付くことが期待される。ソロモン諸島産プロポリスについては、これまでに抗酸化、抗菌、ガン血管新生抑制効果を確認したが、ソロモン諸島産プロポリスと同様な成分組成を有するプロポリスは、他の環太平洋周辺諸国に広く分布していることが予想されたため、入手可能な他の国のプロポリスに関しても、成分研究と生理機能評価研究を実施する。さらに、ミツバチの行動とプロポリス産生との関連性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用計画に関しては、当該年度とほとんど同様である。主な研究経費として必要となるのは、薬品類や実験用器具類などの消耗品が中心である。具体的には、薬品類では、成分分析の際に用いる有機溶媒や検出用試薬、生理活性評価に用いる試薬やキットなどである。器具類としては、ビーカーやフラスコなどの一般的なガラス器具類の他、プレート、チップ、チューブなどのプラスチック器具などが挙げられる。生理活性評価には培養細胞を用いることもあるが、それにかかる経費も必要となる。なお、研究分担者の一人(中村)はミツバチを用いて研究を行うが、そのための経費も必要である。旅費については、研究代表者が研究分担者が所属している玉川大学(中村)および鹿児島大学(杉山)に出向いて研究打合せや共同実験を行う際に必要となる他、日本農芸化学会や日本食品科学工学会などの学会で、年間2~3回程度の成果発表に使用するために必要となる。また、研究成果を発表するための論文掲載料や英文原稿の校正費用などにも経費が必要となってくる。
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Research Products
(18 results)