2011 Fiscal Year Research-status Report
腸内共生系成立の分子基盤の解明と食品による炎症性疾患の予防への展開
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23580186
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70366574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野川 修一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50011945)
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70328706)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 腸管上皮細胞 / マスト細胞 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
腸管には生体で最大の免疫系が存在するにもかかわらず、非自己、すなわち異物に相当する莫大な数の腸内細菌が共生している。腸内共生系成立の分子基盤を明らかにし、食品による炎症性疾患の予防へと応用することを目的として以下の解析を行った。1. 腸管上皮細胞におけるTLR4及びTollip遺伝子の発現制御機構:TLRは、微生物菌体を認識する主要な受容体ファミリーである。このうちTLR4遺伝子の発現は、腸管上皮の絨毛構造、すなわち腸管上皮細胞の分化段階に依存してエピジェネティックな機構により抑制されることが示された。一方、TLRシグナルの抑制分子Tollipについて、その遺伝子発現を抑制する転写因子として同定したElf-1が腸管上皮細胞では糖鎖修飾効率が低いために核移行が抑制され、転写抑制が起こりにくいことを明らかにした。これらの機構により、特に絨毛先端の分化した腸管上皮細胞で腸内細菌に対する過剰応答が抑制されると考えられる。2. 腸管上皮細胞の共生関連遺伝子の同定:通常、無菌、MyD88欠損マウスから腸管上皮細胞を調製し、mRNA発現の網羅的解析を行った。この結果を基に腸内細菌により発現が抑制される遺伝子群を特定した。3. マスト細胞の最終分化を制御する遺伝子の同定:これまでにマウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)のin vitro分化系を用い、BMMCの成熟期間中にLactobacillus菌体で刺激すると転写因子C/EBPαの発現が上昇することを見出している。そこで、C/EBPαを誘導的にBMMCに過剰発現させる系を構築した。C/EBPαの過剰発現により、BMMCの顆粒形成が抑制される傾向が見られ、逆に微生物刺激に対するケモカインMIP-2の産生は増大した。したがって、腸内細菌がC/EBPαを介してマスト細胞のアレルギー誘導活性と感染防御活性のバランスを調節する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度分として、1.腸管上皮細胞における菌体認識に関与する遺伝子の発現制御機構の解析、2.腸管上皮細胞における共生関連遺伝子の同定、3.マスト細胞の最終分化を制御する遺伝子の同定という研究計画であったが、2の次世代シークエンス解析の一部を次年度に持ちこしたものの、それぞれ研究実績概要に記したとおりおおむね順調に達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管上皮細胞においてエピジェネティックな機構を介して発現が抑制されるとして特定した遺伝子群について、その制御の鍵となる分子を同定する。また、マスト細胞の最終分化に関わる遺伝子のエピジェネティックな修飾と腸内細菌との関係を解析し、その制御に関わる分子を同定する。これらの分子の機能と炎症反応の制御との関係を明らかにし、腸管における炎症反応を制御する食品成分の評価系への応用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、実験用試薬、実験用動物、実験用消耗器具の購入代および次世代シーククエンスの委託解析費として使用する計画である。このうち、次世代シークエンスの委託解析費は、当初計画においては平成23年度での使用を予定していたが、一部の解析が平成23年度中に終了せず平成24年度にかかったため、その分を平成24年度に繰り越して使用予定である。
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Research Products
(23 results)