2012 Fiscal Year Research-status Report
腸内共生系成立の分子基盤の解明と食品による炎症性疾患の予防への展開
Project/Area Number |
23580186
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70366574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野川 修一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50011945)
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70328706)
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Keywords | 腸内細菌 / 腸管上皮細胞 / マスト細胞 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
腸管には生体で最大の免疫系が存在するにもかかわらず、非自己、すなわち異物に相当する莫大な数の腸内細菌が共生している。腸内共生系成立の分子基盤を明らかにし、食品による炎症性疾患の予防へと応用することを目的として以下の解析を行った。 1. 腸管上皮細胞における共生関連遺伝子のエピジェネティックな発現制御の分子基盤の解明 通常マウスと無菌マウスの大腸上皮細胞からゲノムDNAを精製し、断片化およびアダプター付加を行った。その後、メチル化DNA結合タンパク質MBD2結合ビーズを用いて回収したゲノム断片を次世代シークエンス解析に供し、ゲノムDNAのメチル化パターンを通常マウスと無菌マウスで比較した。これにより腸内細菌によりDNAメチル化が誘導される遺伝子群を特定した。さらに、そのうちの1つの機能未知遺伝子Gm7120につき、詳細な解析を行った。まず、腸内細菌によりCpGモチーフのメチル化頻度が上昇し、mRNA発現が減少することが確認された。また、マウス腸管上皮株においてGm7120のRNAiにより共生関連遺伝子RALDH1の発現が低下し、Gm7120がRALDH1の発現誘導に関わることが明らかになった。 2. 腸内共生菌との相互作用によるマスト細胞の共生関連遺伝子の発現制御 昨年度までの研究により、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)の成熟に関わる転写因子C/EBPαの発現がLactobacillus casei菌体の刺激により上昇し、それによりBMMCの顆粒形成が抑制されることを見出している。そこで、C/EBPαの発現に対する複数の腸内細菌の影響を解析した。その結果、Bacteroides vulgatus菌体の添加によりC/EBPαの発現の上昇が認められ、特定の腸内共生菌がC/EBPαの発現上昇を誘導することにより、マスト細胞のアレルギー誘導活性を抑制する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度分として、1.腸管上皮細胞における共生関連遺伝子のエピジェネティックな発現制御の分子基盤の解明、2.腸内共生菌との相互作用によるマスト細胞の共生関連遺伝子の発現制御という研究計画であったが、一昨年度の繰り越し分である次世代シークエンス解析を含め、おおむね順調に達成したと考えている。ただし、マスト細胞の共生関連遺伝子のメチル化解析については一部来年度に持ち越しとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに明らかにした、腸管上皮細胞においてエピジェネティックな機構を介して発現が制御される共生関連分子およびその制御に重要な役割を果たす分子について、炎症反応の制御との関わりを明らかにする。すなわち、腸内共生系の成立・破綻とそれらの分子の発現や機能の相関を解析することにより、腸内共生系の恒常性維持の鍵となる分子を同定する。腸管は部位ごとに腸内細菌の数や構成が異なり、それぞれの部位に特徴的な共生成立機構があると考えられることから、腸管の部位ごとのそれらの分子の発現パターンの特徴を明らかにする。さらに、食物アレルギーや炎症性腸疾患などの炎症状態において、それらの分子の発現や機能がどのように変化するか、in vitroおよびin vivoにて解析を行う。また、マスト細胞の最終分化に関わる遺伝子のエピジェネティックな修飾と腸内細菌との関係を明らかにする。これらの結果をもとに、腸管における炎症反応を制御する食品成分の評価系への応用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、実験用試薬(培地・培地添加物等の細胞培養用試薬、定量PCR試薬・トランスフェクション試薬・抗体・酵素等の分子生物学および生化学実験試薬など)、実験用動物(マウス)、実験用消耗器具(細胞培養用フラスコ・プラスティックディスポーザブルチューブなど)の購入代として使用する計画である。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] IgA production in the large intestine is modulated by a different mechanism than in the small intestine: Bacteroides acidifaciens promotes IgA production in the large intestine by inducing germinal center formation and increasing the number of IgA+ B cells.2013
Author(s)
Yanagibashi T, Hosono A, Oyama A, Tsuda M, Suzuki A, Hachimura S, Takahashi Y, Momose Y, Itoh K, Hirayama K, Takahashi K, Kaminogawa S.
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Journal Title
Immunobiology
Volume: 218
Pages: 645-651
DOI
Peer Reviewed
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