2011 Fiscal Year Research-status Report
食品キサントフィルの代謝変換と光酸化ストレス制御機能の解析
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23580189
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
長尾 昭彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品素材科学研究領域, 上席研究員 (40353958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小竹 英一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品素材科学研究領域, 主任研究員 (20547236)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | キサントフィル / ルテイン / 酸化的代謝 / 立体配置 / 哺乳類 |
Research Abstract |
哺乳類におけるキサントフィルの代謝活性を調べるため、マウス肝臓ホモジネートを用いたin vitro代謝反応系を用い、種々のキサントフィルに対する反応特性を解析した。その結果,ルテイン,β-クリプトキサンチン,ゼアキサンチン,ラクチュカキサンチンから種々の反応産物が生成することを見いだした。そこで,ルテインの反応産物について詳細に調べたところ,反応の進行に伴い集積する反応産物Aと反応途上で極大濃度に達した後減少に転じる反応産物Bを見いだした。 反応産物Aを単離し,NMRと高分解質量分析から3’-hydroxy-εε-caroten-3-oneと同定した。さらにキラルカラムによって二成分に分離され,それらのCDスペクトルから,3’位と6’位の絶対配置がR,6位はRとSのジアステレオマー混合物であることが分かった。すなわち,ルテインのε環の立体配置は保持されていたが,新たな不斉点である6位には立体選択性はなかった。反応中間体と考えられる反応産物Bは3’-hydroxy-β,ε-caroten-3-oneと同定され,キラルカラムによって単一ピークを与え光学的に単一で,3’位と6’位の絶対配置はRであり,ルテインのε環の立体配置を保持していた。 ルテインを給餌したマウス肝臓に見いだされる3’-hydroxy-εε-caroten-3-oneを単離し,上記と同様に絶対配置を解析した結果,上記反応産物Aと一致したことから,in vitroの反応産物とマウス肝臓に蓄積した代謝産物は同一であることが明らかとなった。 これらの結果から,マウス肝臓はルテインのβ環の3位の水酸基を酸化し,さらに5位の二重結合の移動を引き起こす代謝活性をもつことが明らかとなった。また,ヒト肝がん由来HepG2細胞にも同様な代謝活性を示したことから,ヒトでもマウスと同じ代謝活性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス肝臓のルテインに対する代謝活性を解析し,反応産物の構造を決定することに成功し, 研究は順調に進展している。また,反応中間体と推定されるものを分離し構造を決定するなど想定外の成果を得ることができた。さらに,反応産物の立体配置を決めることによって,ルテインの二つの水酸基に対する反応特異性を明らかにした。これらの成果は,ルテインに限らず,他のキサントフィルの代謝解明の鍵となる重要な知見であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からβ-環の3位に水酸基をもつ多様なキサントフィルが哺乳類で酸化的に代謝されることが示唆された。代謝産物の生物活性への関与やこの酸化的代謝がキサントフィルの消失動態の主要な因子である可能性が考えられる。たとえば,キサントフィル代謝産物にはα,β-不飽和カルボニル構造が新たに導入されこと,また,極大吸収波長が短波長側にシフトすることから,活性酸素との反応性及び光障害抑制活性等のキサントフィルの生物活性が代謝によって変化することが想定される。そこで,今後は,当初の計画に従い,代謝による構造変化が抗酸化性や光障害抑制作用に与える影響を解析し,キサントフィルの生物活性発現機構の解明を図る。また,詳細に解析したルテインの酸化的代謝反応が広範囲の食品キサントフィルにも適応できることが示唆されたので,当初計画を変更し24年度以降においてもルテイン以外のキサントフィルに重点を移しキサントフィルの代謝反応の解析を行い,より広範囲の食品キサントフィルの代謝変換機構の解明を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は交付申請時の計画通りに使用する。なお,次年度使用額346,520円は,反応産物の分離と構造解析が想定より効率的に進めることができたために発生した残額であり,次年度に請求する研究費と合わせて研究推進のため使用する。 特に次年度は培養細胞実験などの実験補助を必要とする実験を予定しているため, 次年度使用額は主として人件費として使用する。
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