2012 Fiscal Year Research-status Report
食品キサントフィルの代謝変換と光酸化ストレス制御機能の解析
Project/Area Number |
23580189
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
長尾 昭彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品素材科学研究領域, 上席研究員 (40353958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小竹 英一 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品素材科学研究領域, 主任研究員 (20547236)
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Keywords | キサントフィル / ルテイン / 酸化的代謝 / 抗酸化性 |
Research Abstract |
キサントフィルの酸化的代謝について前年度に引き続き詳細に解析し,反応中間体の安定性及びジオンの生成について新たな知見を得た。また,ルテイン及びその酸化的代謝産物の抗酸化性を比較検討した。 マウス肝臓はルテインのβ環の水酸基を酸化し3’-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneへ変換する活性をもつ。この酸化反応の中間体として考えられる3-hydroxy-β,ε-caroten-3’-oneについて,3’-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneへの異性化反応の収支を検討したところ,この中間体は著しく不安定で,一部のみが異性化し,大部分は消失することを見いだした。ルテインからの反応収支も低く,かなりのルテインが消失した。どのような物質へ変換されるかは明らかではないが,ルテインβ環の水酸基の酸化代謝はルテインの体内蓄積量を低下させる重要な因子となっていることが示唆された。 マウス肝臓はβ環の水酸基の酸化活性に加えて,活性が弱いがε環の水酸基も酸化する活性をもつことを見いだした。ルテインを3’-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneへ酸化し,さらにそのε環の水酸基を酸化しジオンを生成する。この代謝経路は,ヒト血漿に見いだされるε,ε-carotene-3,3’-dioneの生成に関与しているものと考えられた。 酸化的代謝産物の同定やその抗酸化性の評価等を行うため,酸化的代謝産物の効率的酵素合成法を開発した。また,ルテインと3’-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneについて,リノール酸メチルの過酸化反応系における抗酸化性を調べたところ,ラジカル捕捉活性はルテイン酸化産物の方が弱かった。酸化産物の特徴的な構造であるα,β不飽和カルボニルはラジカル捕捉には関与していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス肝臓はキサントフィルのβ環3位の水酸基を酸化しカルボニル基へ酸化する活性をもつが,不安定な中間体が生成することによって,大部分が未知の酸化産物へ分解することが明らかとなった。このことから,この酸化的代謝反応がキサントフィルの体内濃度を低下させる重要な因子であることが示唆された。キサントフィルの生体利用性に関わる極めて貴重な知見が得られた。ルテインのラジカル捕捉活性は,酸化的代謝による構造変化によって増強されないことが明らかとなったため,今後の研究方向が絞られてきた。生体内での活性酸素生成に対する影響や光フィルター能に焦点をあてた研究を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
霊長類の網膜黄斑にはルテインとゼアキサンチンが集積し,光による酸化障害を抑制していると考えられている。青色光のフィルター作用や抗酸化性が抑制に関与していると考えられているが未だに明確にされていない。平成25年度は,ルテイン,ゼアキサンチン及びこれらの代謝産物の光障害抑制作用機構について検討する。網膜細胞内での安定性,青色光フィルター能,酸化障害抑制作用を解析する。これらのキサントフィルが他のカロテン類よりも網膜における光・酸化障害抑制作用が優れていることを検証し、網膜黄斑に存在するルテイン/ゼアキサンチン類の生理的意義を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は交付申請時の計画通りに使用する。なお,次年度使用額369,470円は,キサントフィル代謝産物の酵素合成法の開発を想定より効率的に進めることができたために発生した残額であり,次年度に請求する研究費と合わせて研究推進のため使用する。 特に次年度は網膜色素細胞実験などの実験補助を必要とする課題を予定しているため, 次年度使用額は主として人件費として使用する。
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