2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリメトキシフラボノイドの角化誘導作用と表皮機能再生効果の検証
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23580193
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
大口 健司 椙山女学園大学, 生活科学部, 准教授 (80359257)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フラボノイド / ポリメトキシフラボン / ノビレチン / 表皮細胞 / ケラチノサイト / 角化 |
Research Abstract |
柑橘類にはNobiletin(ノビレチン)をはじめとするポリメトキシフラボノイドとよばれる機能性化合物が含まれている。我々は、Nobiletinにヒト表皮ケラチノサイトに対する強力な角化誘導作用があることを見出している。本研究課題は、ポリメトキシフラボノイドの角化誘導作用について、培養細胞系で構造活性相関解析を行うとともに、これら化合物の作用をモデル動物系で検証することを目的とする。 当該年度は、ヒト正常表皮ケラチノサイトを用いた培養細胞系での解析を行った。ポリメトキシフラボノイドの分子構造と角化誘導活性の関係を明らかにするため、Nobiletin、Sinensetin、Tangeretin等メトキシ基の数や位置が異なる化合物を用い、培養細胞系において構造活性相関解析を行った。ポリメトキシフラボノイドは構造上二つのベンゼン環(A環およびB環)を有するが、表皮ケラチノサイトに対する角化誘導作用はA環ではなくB環のメトキシ基の数が大きく影響することを見出し、評価した化合物の中でNobiletinが最も強い作用を示した。その作用について、表皮ケラチノサイトの角化誘導刺激として知られる高カルシウム(CaCl2)添加と比較した。角化マーカーとしてK10(ケラチン10)およびInvolucrinのタンパク質発現誘導パターンを調べたところ、カルシウム刺激はK10よりもInvolucrin発現を強く誘導するのに対し、NobiletinはInvolucrinよりもK10発現を強く誘導した。これらの結果はNobiletinの角化誘導メカニズムはカルシウムとは異なり、ケラチンの発現調節が優位である可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリメトキシフラボノイドの機能性研究はNobiletinを中心に行われているが、天然にはメトキシ基の数や位置の違いのみならず、特定箇所のメトキシ基が水酸基になった化合物など多様なポリメトキシフラボノイドが存在する。初年度は、メトキシ基の数や位置が異なる化合物ならびに水酸基をもったヒドロキシタイプの化合物など、種々のポリメトキシフラボノイド化合物の角化誘導活性についてヒト正常表皮ケラチノサイトを用いて評価した。 構造活性相関解析は、細胞固有の角化マーカー(ケラチンやエンベロープ蛋白質など)を指標に、(1)メトキシ基の数、(2)メトキシ基の結合位置、(3)官能基の違い(メトキシ基と水酸基)による活性の差違について詳細に検討した。ポリメトキシフラボノイドはA環およびB環とよばれる二つのベンゼン環をもっているが、表皮ケラチノサイトに対する角化誘導作用はB環のメトキシ基の数によって大きく影響を受けることが分かった。さらに、構造活性相関解析からポリメトキシフラボノイドの中でも、特にNobiletinが高い角化誘導活性を示した。 本研究は、培養細胞系でポリメトキシフラボノイドの構造活性相関と作用メカニズムの解析を行い、角化誘導活性の高いポリメトキシフラボノイドを選抜した後、実験動物モデルで、表皮機能再生効果の評価を行い、in vitroおよびin vivoの実験系で有用性が検証されたポリメトキシフラボノイドを同定していく。研究は当初の予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
表皮の最外にある角質層は、表皮ケラチノサイトの角化によって次々と新しくつくられ、古くなった角化細胞は垢として角層から脱落していく。これが、皮膚のターンオーバーと言われる現象である。ターンオーバーのサイクルは、正常な皮膚では28日間と言われているが、加齢、乾燥、紫外線などの影響によりターンオーバー速度に異常が生じると、不全角化が誘発され、角質層の構造に異常が生じバリア機能や水分保持機能が低下する。このことが肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状につながると考えられる。また、乾癬やアトピー性皮膚炎の患者では、バリア機能が低下した皮疹部で角化異常が高頻度に観察される。すなわち、表皮においてケラチノサイトの角化を促進し、健全な角層の形成を促すことによって、皮膚のバリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、乾癬などの皮膚症状を予防又は改善することができると考えられる。 今後は、表皮バリア機能障害モデル(アトピックドライスキンモデル)におけるNobiletinの作用機序解析を中心に行っていく。必須脂肪酸やミネラルが欠乏した特殊飼料で飼育したヘアレスマウスではバリア機能が著しく低下し、アトピックドライスキンの動物モデルとして知られている。これらの手法を用いた表皮バリア機能障害モデルにおいて、Nobiletin投与(特に経口投与)の表皮機能再生効果をin vivoで検証する。なお、皮膚バリア機能の客観的指標としては、経表皮水分蒸散量(TEWL)および角質水分量を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特殊飼料(必須脂肪酸およびミネラル欠乏)飼育により表皮バリア機能を低下させたアトピックドライスキンモデル動物系(HR-1ヘアレスマウスを使用)の構築およびNobiletin投与の効果を検証するための実験に必要な消耗品費として使用する。なお、本研究にて使用する経表皮水分蒸散量(TEWL)および角質水分量を測定する機器(インテグラル社)については、本助成により23年度に購入した。
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