2011 Fiscal Year Research-status Report
光合成色素組成をマーカーとしたアスナロ属選抜系統の遺伝分析と育種への利用
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23580195
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
橋本 良二 岩手大学, 農学部, 教授 (80109157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 比呂志 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター, 育種第二課長 (10370834)
柴田 勝 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (30300560)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 林木育種 / ヒバ / 複層林 / 光合成色素 |
Research Abstract |
森林総合研究所林木育種センター東北育種場に設定されているヒバ精英樹育種素材保存園(第1保存園)とヒバ遺伝資源保存園(第2保存園)の系統について、植栽個体の成長量調査と葉の光合成色素の分析定量をおこなった。第1保存園では、2007年から3年にわたって系統別植栽がおこなわれており、そのうちの2007年植栽区域における31系統について調査・分析をおこなった。第2保存園では、2006年から3年にわたって系統別植栽がおこなわれており、そのうちの2006年植栽の43系統について調査・分析をおこなった。2011年9月、植栽個体の地際直径、樹高、枝張長(2方向)の測定をおこなった。測定の後、植栽個体梢端部の葉を採取し、大学の実験室の持ち帰り、冷凍庫に一時保管し随時取り出して、高速液体クロマトグラフィにより光合成色素の分析定量をおこなった。 第1保存園および第2保存園の成長量調査では、地際直径、樹高、枝張長ともに、系統間に有意な差が認められた。また、光合成色素含有量についても、クロロフィル類、キサントフィル類、カロテン類のいずれにおいても、系統間で有意に異なっていた。そこで、第1保存園での成長量について地際直径を取り上げ、光合成色素含有量との相関をみたところ、キサントフィル類については有意な相関はみられなかったが、クロロフィル類とカロテン類で有意な相関が認められ、相関係数はクロロフィル類ではクロロフィルaで、カロテン類ではαカロテンで高い値を示した。こうした相関分析の結果は、第2保存園で得られたデーターにおいてもまったく同様であった。成長量との高い相関がクロロフィルaでみられたのは大いに納得のいくところであるが、αカロテンとの高い相関については新知見とみられ、明所で高成長反応を示す系統の育種に、重要な示唆を与えているのではないかと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
林木育種センター東北育種場のヒバ精英樹育種素材保存園植栽個体の調査・分析により、成長量と光合成色素含有量について系統間に有意な差があることがわかり、成長量に大きく関与する光合成色素を特定することができた。これらの結果は、同育種場の遺伝資源保存園植栽個体を対象とした追加の調査・分析でも確認され、十分信頼できると考えている。 明所での成長量に最も大きく関与していると見られたのはαカロテン含有量であり、クロロフィルa含有量に対するカロテン含有量(α+β)の比率は系統間で差異がなかったことから、カロテン含有量(α+β)に対するαカロテン含有量の比率(αカロテン比率)が系統間で異なっていることがわかった。電子伝達系や二酸化炭素固定の効率や能力との関連では、αカロテン比率がそれらにダイレクトに結びついているわけではなく、過剰励起エネルギーの処理とのつながりが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.次年度では、当該年度に続いて、精英樹クローン苗の初期成長に関する調査および資料収集をおこなう。当該年度と次年度の結果を総合し、ラメート(個体)誤差、系統間有意差などの統計解析をおこなう。2.次年度に実施した精英樹クローン苗の初期成長の調査および資料収集において、特徴的な性質を示した系統群について、試料葉を採取し、光合成色素の量的組成に関する分析をおこなう。並行して、同一の試料葉について、電子伝達系や二酸化炭素固定の効率、能力に関する測定をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者橋本の実施計画分担事項における主要なものは、光合成色素の量的組成に関する分析と二酸化炭素固定能力に関する測定であるが、当該年度では、光合成色素の量的組成に関する分析が主であることから、それに集中したことにより、二酸化炭素固定能力については、測定が一部にとどまり、次年度に残りをまわすこととした(一部研究費の繰越理由)。 これ以外については、研究開始年度における交付申請時の研究実施計画に沿って、研究を実施し研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)