2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒノキ一斉林に対する漸伐作業導入のための更新期モデルの提案
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23580200
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
植木 達人 信州大学, 農学部, 教授 (90221100)
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Keywords | 漸伐作業 / 更新期 / 下種伐 / 後伐 / ヒノキ人工林 / 天然更新 |
Research Abstract |
本研究では、ヒノキ一斉林への漸伐作業法の技術的確立を目指し、特に作業の支柱を成す「下種伐~後伐」について考察を行い、ヒノキの特性に適合した「更新期モデル」を提示することにある。 そこで平成25年度では、①中部森林管理局管内東三河森林計画区段戸国有林に設定した下種伐実施後のプロット3箇所において、ヒノキ、その他樹種の更新調査を実施した。その結果、各プロットに設けた10箇所の調査区(1m×1m)では、平成24年度ではヒノキ当年生実生の密度はプロットA、プロットB、プロットC、それぞれ2.3本/0.25m2、5.3本/0.25m2、14.2本/0.25m2であり、プロット間にヒノキ当年生実生密度は、プロット間で有意に異なることが明らかになった(Tukey法による多重比較で、いずれの組み合わせもp<0.001)が、平成25年度ではこれらの実生の生存率は低く、その多くが土砂とともに流亡したと思われた。また当年度において新たに実生の発生が見られるなど、2年目にしてヒノキ更新木の消失と交代が激しく起こっていることが確認された。②同森林管理局千曲川上流森林計画区奈良本山国有林では、全般に終伐が遅れていることにより、更新木の被圧や場合によっては枯死が見られるなど、終伐適期を逃したことが判明した。樹幹解析の結果では10年ほど前より厳しい被圧下におかれていることが確認されたことから、この林分の終伐は2000年頃(平成12年頃)に実施されるべきであると結論づけられた。③同森林管理局伊那谷森林計画区金沢山国有林での林分調査では、更新木が30~600cmのばらつきが見られ、特に100cm以下の更新木の消失が多く、将来的に残存する更新木がほぼ決定する状況にあることが判明した。場所によっては終伐適期が過ぎている可能性もあり、さらに詳細な分析が必要であると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画では、①設定した林分の毎木調査、更新調査の実施とその分析、②更新期モデルの総合的考察・検討が主要な課題であった。「研究実績の概要」でも示したが、3箇所の林分(段戸国有林、奈良本山国有林、金沢山国有林)において、継続的に調査を実施し、その結果、更新期のモデルについて分析・検討をおこなうだけのデータが集まりつつあり、ヒノキ一斉林における次世代への橋渡しとなる更新~最終伐採(終伐)までの技術的確立に向け、その施業体系が明らかになりつつある。ただし、当初予定していた中部森林管理局木曽川森林計画区内の調査林分の検証において、下種伐段階、後伐段階の林分の確認が遅れ、それによる調査地設定も時期がずれ込んでしまった。そのため当初予定していた毎木調査および更新調査が完全に終了することができなかった。平成26年度年度においては毎木調査および更新調査等の現地調査を継続し、施業体系化のためのより詳細なデータ収集による分析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本課題の最終年である。したがってこれまでの研究成果を踏まえ、ヒノキ一斉林における更新期のモデル案の作成および提示をおこなう。そのためには、これまでの設定プロット(前述3箇所)の継続調査を実施し、最終データを収集する。特に下種伐後の林分・更新推移および後伐林分の上木および更新木の実態解明を中心に行う。これらの一連の成果として秋までを目標に学会誌に論文を投稿する。なお上述の「現在までの達成度」の中でも触れているが、中部森林管理局木曽川森林計画区内の漸伐林分の調査については、調査が中途となっているため、東濃森林管理署と連絡を取り合い、早急に調査の継続を実施する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた中部森林管理局木曽川森林計画区内の調査林分の検証において、下種伐段階、後伐段階の林分の調査プロットの設定が遅れたため、毎木調査および更新調査が完全に終了できなかった。その未消化分として次年度使用額が生じた。 平成25年度に中途で終了している木曽川森林計画区内の調査プロットは、漸伐作業の後伐段階として位置付け、昨年度に引き続き7~8月にかけて上木の毎木調査および更新調査等を実施する。またこの他にも、これまで設定した3箇所の調査プロットの毎木調査、更新調査等を継続的に実施する。この際、愛知森林管理所段戸国有林の調査プロットでは下種伐段階から後伐への移行段階として、また、東信森林管理署奈良本山国有林および南信森林管理署金沢山国有林では、後伐の最終伐採段階(終伐)として位置付け、4箇所の林分調査データから総合的分析をおこなう。 なお使用額は、この4箇所の現地調査(謝金、アルバイト費用も含む)と分析費用として7割程度を見込んでいる。また残り3割は、学会誌への投稿費用、報告書の作成、図書購入費等に当てる予定である。
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