2011 Fiscal Year Research-status Report
地形と林分構造の複雑性が森林内風環境に及ぼす影響・施業シナリオへのCFDの応用
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23580202
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 孝紀 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90325481)
齊藤 哲 独立行政法人森林総合研究所, その他部局等, 研究員 (30353692)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 林冠構造 / 風況 / CFD / 抗力係数 |
Research Abstract |
風による撹乱は森林の動態にとって重要な役割を持つ。また風による花粉散布・種子散布は森林内の個体群維持に深くかかわっている。しかしながら林冠は凹凸の激しい表面を持ち風況の予測は難しい。くわえて日本の森林は複雑地形である山岳地に分布し風環境はきわめて複雑である。本研究は複雑な地形および林冠構造上を通過する風況を予測するシステムの開発することによって、森林の風害リスク軽減や風による生理ストレスの定量化など、風に関わる森林保全管理計画への応用技術を開発するものである。風が樹冠を通過するときの抗力係数をヒノキ成木の陽樹冠を対象に曳航風洞実験により解析し、3次元着葉密度分布構造をレーザースキャン法で解析し、両者の関係を求めた。抗力係数は樹冠体積あたりの葉密度と正の相関があったが、風通過距離あるいは側面積あたりの葉密度との相関は小さかった。さらに風速に伴う抗力係数の減少率は体積当たりの葉密度と弱い負の相関がみられた。すなわち流線化現象はオリジナルな樹冠構造に左右されることが示唆された。凹凸の激しい林冠表面に対応できるLESモデルを実行したところ、閉鎖林冠表面でも渦を再現することができた。また林冠ギャップに伴う渦の拡大も再現できた。台風による樹木の倒木メカニズムを解明するために、負荷の繰り返しおよび降水条件が根元の回転モーメントに及ぼす影響を解析した。回転モーメントを決定する要因は樹木サイズであり、散水処理や負荷繰り返しが回転モーメントに及ぼす影響は小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
曳航風洞実験による抗力係数、林冠表面用風速モデルの開発等、ほぼ当初の計画通りにすすんでいる。ただし、曳航風洞実験の一部について流線化精密計測を新たに追加するため、次年度に実行することとした。風害リスク評価のための根元回転モーメントに関するデータ蓄積がほぼ完了した。風に対する樹木の水分生理応答の計測に着手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では9個体の曳航風洞実験の結果から流線化がオリジナルの樹冠構造に依存することがわかったが、この定量的関係を把握するためには流線化の現象を三次元構造の時間的変化で解析する必要がある。このため当初計画した3個体分の曳航風洞実験を次年度に行うこととした。 次年度は、流線化評価を目的とした曳航風洞実験、異なる林冠構造データを用いたCFDシミュレーション実験、CFDモデルの改良などを中心に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)強風時の流線化現象と樹冠構造の定量的関係に注目して実験を行う. 曳航風洞実験中の樹冠の三次元形状を画像データおよび多点のヒズミゲージで計測し樹冠の流線化を定量的に計測する。さらにオリジナルの枝分岐構造、葉の三次元分布構造、枝ごとのヤング率を計測し、樹冠構造と流線化の停量的関係を解析する。2)試作した林冠表面風況CFDモデルを用いて、林冠構造の違いが森林の風圧の時空分布に及ぼす影響をシミュレーション実験する。とくにギャップ構造による渦発生パターンの計測を行う。一方でCFDモデルに曳航風洞実験で得られた抗力係数を組み込み、葉分布の粗密を反映したCFDモデルへの改良を目指す。3) 複雑地形上の森林で定点観測している風速時系列パターンと実地形容に開発されたRIAM-COMPACTの出力値を検証することで、各種パラメータを決定する。4) 風に伴う枝内部でのキャビテーションの発生、放出エチレンの計測など、樹木生理に及ぼす影響を調べる。
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Research Products
(4 results)