2012 Fiscal Year Research-status Report
劣化した森林における高木性樹種の繁殖および遺伝的多様性評価に基づく再生方法の検討
Project/Area Number |
23580204
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木佐貫 博光 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00251421)
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Keywords | 森林再生 / トウヒ / 稚樹 / 成熟木 / 個体数密度 / 繁殖成功 |
Research Abstract |
本研究では,森林の劣化が著しい大台ヶ原の亜高山帯を優占する常緑針葉樹トウヒを対象として,成熟木の個体数密度が母樹の繁殖成功度の指標となる自殖率に影響する程度を解明するための研究を行った.風媒花植物トウヒでは,成熟木の個体数密度が低下すると,成熟木間の交配頻度が減少するため,そこで生産される種子による森林再生が行われれば,集団における遺伝的劣化が懸念される.そこで,稚樹の生育立地および成長,成熟木の繁殖成功度およびその集団の遺伝的構造を解析することで,今後の森林再生の可能性を実証的に評価する. 1)トウヒ稚樹の生育状況の解明 とくに森林劣化の著しい正木峠において,2002年に設置された稚樹調査区で,トウヒ稚樹の生残および樹高についての継続測定を行い,トウヒ稚樹の成長経過を明らかにした.天然更新した稚樹は,劣化した森林の再生に直接関与するため,生育適地の解明とその確保が必要である.稚樹の生育適地を評価するために,稚樹の成長と生残について,稚樹を被圧するササの除去の有無や生育立地間で比較した. 2)成熟木の遺伝構造の解明および自殖率の推定 トウヒ母樹の自殖率や花粉親との距離を推定するために,トウヒのマイクロサテライトマーカーを開発した.従来行っていたマイクロサテライトマーカー3座に加え,研究協力者である津田吉晃氏の協力でスクリーニングされたEST-SSRマーカー5座を増やし,母樹23個体から得られた実生について解析を行った.また,同様の解析を成熟木についても行い,遺伝的構造を明らかにした.研究成果を平成24年度開催の日本生態学会大会において口頭発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トウヒ稚樹の生育状況の解明について,予定通り現地での調査を行った.トウヒのマイクロサテライトマーカーを用いた繁殖成功および遺伝構造については,新たなマーカーを加えた解析をある程度行うことで,前年度末に開催された学会において発表することができた.以上の状況から,順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
大台ケ原正木峠に設置された稚樹調査区で,トウヒ稚樹の生残および樹高についての測定を行い,トウヒ稚樹の生育適地を継続して明らかにする.稚樹の生育適地を評価するために,稚樹の成長と生残について,稚樹を被圧するササの除去の有無や生育立地間で比較する. 23母樹から得られた各30個の種子(計690種子)については,マイクロサテライトマーカー8座を対象に,母樹の自殖率を推定した.すなわち,DNAのマイクロサテライト分析によって得られた遺伝子型データから解析ソフトMLTRを用いて自殖率を母樹単位で求めた.同じマイクロサテライトマーカーを対象に,成木集団の遺伝的構造の解析を行った.ただし,球果採集を行ったすべての成熟木周囲からDNAを抽出することができなかったため,残る成熟木50個体からDNA抽出を行い,マイクロサテライトマーカーを用いた遺伝構造の解明を行う.さらに,稚樹集団についても,遺伝的構造の解析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
野外調査に関しては,平成23年度および24年度に行った現地における稚樹の調査を継続する.とくに夏期において,奈良県大台ヶ原での調査出張を学生の協力を得て行う.数人で複数回行う現地調査には旅費が必要であり,また,さまざまな消耗品を必要とする. 室内実験に関しては,本年度は,現地での新たな成木個体や,追加実験を行う種子からDNAを抽出し,マイクロサテライトマーカーを用いた遺伝的多様性の解明と自殖率の推定を行う.このため,DNA抽出キットやPCR反応キットなどの試薬を必要とする. データ解析などのために文房具やデータ記録メディアなどを購入する. 研究成果の発表のため,10月に岐阜大学,来年3月に広島市および東京への出張を計画している.
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Research Products
(1 results)