2013 Fiscal Year Research-status Report
劣化した森林における高木性樹種の繁殖および遺伝的多様性評価に基づく再生方法の検討
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23580204
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木佐貫 博光 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00251421)
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Keywords | トウヒ / 遺伝構造 / 花粉飛散距離 / 大台ケ原 / 衰退林 |
Research Abstract |
花粉飛散による遺伝子流動は,植物集団の遺伝構造に大きく影響する.また,風媒性樹木では,立木密度が受粉効率に影響を及ぼすことが知られる.奈良県大台ケ原の東部高標高域をかつて広く覆っていたトウヒ林では,立木密度が顕著に低下し,森林の衰退が深刻である.本研究では,大台ケ原で立木密度が異なる2つのトウヒ林分において,トウヒ成木の遺伝構造ならびに局所的立木密度がトウヒの自殖率などに及ぼす影響を調査した.各林分のトウヒ成木を対象に8遺伝子座でマイクロサテライト解析を行い,遺伝構造を調べた.また,調査区から選定した23個体の母樹について,トウヒ成木だけの局所的な立木密度と,林冠層に到達している全樹木の局所的な立木密度を測定し,立木密度がトウヒの繁殖に及ぼす影響を評価した.さらに,各母樹30個の種子について,自殖率,2親性近親交配率を算出し,種子の父親推定によって花粉飛散距離を算出した.成木の遺伝構造については,両林分ともに,約40m以内の近隣には近縁な個体が集まっていること,密な林分では約75m以上離れると遠縁な個体が多くなることが示された.いずれの林分においても立木密度と自殖率との間には相関は認められなかった.一方,両林分において,2親性近親交配が確認された.また,花粉飛散距離については,疎な林分の方が密な林分よりも平均値が大きかった.立木密度は花粉飛散に影響を及ぼすものの,繁殖成功のパラメーターには顕著な影響は認められなかった.これらのことから,大台ケ原のトウヒ林では,林分の立木密度に関わらず近隣・近縁個体との交配割合が高く,近親交配が起こっていることが示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目標を論文投稿に設定してあったが,現地でのサンプリングが不足していたことに起因する,実験およびデータ解析の遅延により,達成できなかったため.一方,最終年度の学会大会において,発表を行うに至るだけの研究成果は得られたことから,遅延の程度は微少である.
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Strategy for Future Research Activity |
DNA分析が終わっていない少数個体について,分析およびその結果を含めた解析を再度行い,より精度の高い結果を得る.この結果に基づいて,当該研究課題の総括を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
目標を論文投稿に設定してあったが,現地でのサンプリングが不足していたことに起因する,実験およびデータ解析の遅延により,達成できなかったため. DNA分析が終わっていない少数個体について,分析を行う.この実験に要する費用に充てる.また,新たに加わった結果を含めた解析を行うために必要な費用に充てる.
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Research Products
(1 results)