2011 Fiscal Year Research-status Report
樹木葉の不均一な気孔開閉メカニズムとガス交換に与える影響の解明
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23580207
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鎌倉 真依 奈良女子大学, 共生科学研究センター, 研究支援推進員 (40523840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 緑子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90293919)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 気孔開閉 / ガス交換 / 森林生態 |
Research Abstract |
本研究は、東南アジア熱帯雨林および日本の冷温帯落葉樹林を対象として、不均一な気孔の開閉が起こるメカニズム(様式・頻度)を把握し、またそれが個葉や森林群落のガス交換過程にどの程度影響を与えているのかを定量的に明らかにすることを目的とした。 個葉における不均一な気孔開閉特性の把握を行うために、ミズナラのポット栽培した苗木と岐阜大学高山試験地に生育する成木を用いて、個葉ガス交換速度の日変化を測定し、気孔開度の不均一性を考慮したガス交換モデルを用いて、シミュレーション結果と実測値との比較を行った。また各時間帯に、SUMP法を用いて葉の表皮のレプリカを取り、顕微鏡観察から気孔開度分布様式の把握(葉の中で均一あるいは不均一な気孔開閉が生じているか)を行った。その結果、強光下で急激な葉温および飽差の上昇が起こると、光合成が日中低下すると同時に不均一な気孔開閉が起こった。光合成日中低下量は、気孔開度分布様式によって説明され、不均一な気孔の閉鎖が起こる要因は、気象条件(特に飽差の上昇)であることが示唆された。同様の結果は、ポット栽培したマレーシア熱帯雨林の林冠構成樹種からも得られた。また、ポット栽培したミズナラ苗を用いて、ガス交換測定とクロロフィル蛍光画像測定を同時並行的に行い、葉スケールでの気孔開度と光合成速度の不均一な分布を明らかにした。 一方、気孔開閉が光合成速度に影響をもたらす生理学的メカニズムを衛星観測ベースの森林キャノピー全体の総光合成量推定に利用できるようにするために、熱赤外カメラを用いて、岐阜大学高山試験地のミズナラと森林総合研究所山城試験地のコナラにおける個葉と樹冠の温度分布測定を行った。個葉の気孔コンダクタンス、葉温、気象条件の関係を示したルックアップテーブルを作成し、このルックアップテーブルから気孔コンダクタンスの推定を行えるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施計画には4つの課題を挙げており、平成23年度は、そのうち課題1「ポット栽培実験による個葉における不均一な気孔開閉特性の把握」を終了し、課題2「野外における不均一な気孔開閉が起こるメカニズムの検討」および課題4「衛星観測ベースの森林の総光合成量(GPP)推定への気孔開閉特性の導入」については必要な予備測定を終えた。但し大型台風接近の影響で、夏に十分な観測期間を取ることができなかった。平成24年度には、野外での測定を集中して行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、樹冠上フラックスデータが蓄積されているパソ森林保護区(半島マレーシア熱帯雨林)と岐阜大学高山試験地(冷温帯落葉樹林)の両サイトにおいて、課題2「野外における不均一な気孔開閉が起こるメカニズムの検討」および課題3「不均一な気孔の開閉が森林群落のガス交換に与える影響の定量的評価」を進める。気孔の開閉特性を葉の水分動態や周辺の微気象環境から推定できるようにし、樹冠上フラックスデータを利用して個葉で生じる気孔開度の不均一性が群落スケールのガス交換過程に与える影響を定量的に明らかにする予定である。課題4「衛星観測ベースの森林の総光合成量推定への気孔開閉特性の導入」については、個葉の挙動を樹冠レベルにスケーリング・アップするために、樹冠を個葉の集合体と考え、葉の傾きや葉数を考慮しながら樹冠全体の葉温の日変化を再現するように光合成―熱収支統合モデルに組み込み、樹冠全体の気孔開度指標と気象条件との関係を示したルックアップテーブルを作成する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に未使用額が生じた理由は、前述のとおり気象条件等の影響で、夏に十分な観測を行うことができなかったためである。当初より、平成24年度はパソ・高山両サイトでの野外観測に重点を置いた研究計画を立てており、繰り越した研究費は、主に野外調査のための旅費に充てたいと考えている。また、平成24年度に請求する研究費については、ほぼ当初の計画調書通りに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)